082 警固公園のリニューアル・デザイン (日本)

082 警固公園のリニューアル・デザイン

082 警固公園のリニューアル・デザイン
082 警固公園のリニューアル・デザイン
082 警固公園のリニューアル・デザイン

082 警固公園のリニューアル・デザイン
082 警固公園のリニューアル・デザイン
082 警固公園のリニューアル・デザイン

ストーリー:

 西鉄福岡駅ビルと警固神社に囲まれた空間に警固公園がつくられたのは1951年である。和風庭園風の築山や池などが配置されていたのだが、死角があって入りづらく、痴漢などの犯罪も多く、せっかく都心の一等地にあっても公共空間としてはあまり人々に親しみをもたれていなかった。
 そのような状況を改変するために、高島市長がリニューアルをすることを計画し、福岡大学の柴田久氏がリニューアル・デザインを担当した。そのデザインを検討するにあたっては、福岡県警、市役所、住民等が参加する「警固公園対策会議」を定期的に開催し、その方向性の合意形成が図られた。
 リニューアル・デザインをするうえで、解決すべきとされた課題は次の5つである。
① 見通しの確保
② 公園と公園周辺の双方向に開放された動線の確保
③ スケボーなど不適正な利用の仕方の抑制
④ 公園をセットバックし前面歩道を拡幅
⑤ 目につきやすい場所へトイレを移設
 そして、デザイン・コンセプトとしては「防犯と景観の両立」を掲げた。そのために、公園内の見通しと動線を確保する防犯効果を向上させるとともに、周囲に広がる街の景観と賑わいを公園の魅力として取り込むことを意図した。
 具体的なデザインの目的としては次の4つのテーマを掲げた。
① 中央円路、中央広場設置による新たな動線と賑わいの創出
② 見通し改善による周辺との視覚的つながりの創出
③ 緑地空間の拡充
④ 旧警固公園の記憶・愛着を継承
 特に視覚によるアクセスの改善、動線促進を図ることによって、公園の治安の向上と親しみやすさを増すことにした。具体的には視角の障害となっていた築山やウォーターデッキ、公衆トイレなどの構造物を撤去もしくは移築し、公園内の自由な動線を確保するうえで障害となっていた池をなくした。そして、新たに中央遠路を設置し、公園内外の見通しをよくすることで園内への動線促進を企図した。加えて、周辺商業施設の魅力的なファサードや、人通りや賑わいの様子を公園の風景として取り込めるようにした。
 リニューアル・デザインの成果としては、動線が大きく広がったことや、深夜帯での人通りが増えたこと、利用者でのアンケート調査では225人中全員が「治安がよくなった」と回答したこと、少年補導件数が35%減少したことなどが挙げられる。また、隣接していたソラリアプラザが勝手に外壁をリニューアルしたことや、同プラザの3階にあるカフェの売上げが1.5倍増えたりもした。
 面積は1.1ヘクタール。地下は駐車場として使われている。

キーワード:

公園,治安改善,防犯

警固公園のリニューアル・デザイン の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:福岡県
  • 市町村:福岡市
  • 事業主体:福岡市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:柴田久
  • 開業年:2012年(リニューアル)

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 一年前、天神を訪れ、西鉄ソラリアの前のこの公園を発見して驚いた。日本にもまともな広場が存在することを知ったからである。それは、ポートランドのパイオニア・コートハウス・スクエアやゴスラーのマーケット・スクエアをも彷彿させる、ほぼ完璧な広場であった。中央から円状に広がる広場空間は、多くの人が石やベンチに座って冬の柔らかな日ざしを楽しんでいた。それは、日本にはないと揶揄されるような公共性に溢れた広場空間であった。
 この公園に感銘を受けた筆者は、この空間をデザインしたデザイナーを調べ、「都市の鍼治療」の事例として紹介すべく取材を依頼した。デザイナーは福岡大学の柴田久教授で、カリフォルニア大学バークレイ校の大学院でランドスケープを勉強された経歴の持ち主であった。道理で利用者の実態調査と市民参加をしっかりと踏まえ、西海岸的な広場性に富んだ公共空間を設計している訳だ、と話を聞いて納得をした。
 警固公園は、日本においても素場らしい広場をつくれば、人々は利用して、また治安の向上なども図られ、そしておそらく人々の公共性をも醸成させることになるということを知らしめる。日本人が広場に対しての意識が低いと言われるのは、そのような欧米的な広場がないから分からないだけに過ぎない。実際、提供されれば、それをしっかりと有益に利用することができるのである。そういうことを警固公園は教えてくれるし、これを契機に、このような広場的な公共性の高い公園が日本の都市に多くつくられることを願う。

取材協力:柴田久

類似事例:

042 バターシー・スクエア
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9007 柴田久 福岡大学教授インタビュー
・ パイオニア・コートハウス・スクエア、ポートランド(オレゴン州、アメリカ合衆国)
・ マーケット・スクエア、ゴスラー(ドイツ)
・ ハウザー・プラッド、コペンハーゲン(デンマーク)
・ ユニオン・スクエア、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)