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085 マグデブルクの「緑の砦」

(ドイツ連邦共和国)

ジャイメ・レルネル氏は天才を巧みに都市づくりに活用すべきだと指摘する。あまり天才に恵まれていないマグデブルクもフンデルトワッサーが足跡を残してくれたおかげで、新たな都市のイコンが創造され、都市の貴重な宝物が付け加えられたのである。

117 街中がせせらぎ事業

(静岡県 )

歩きやすい環境を活かして、湧き水を再生させ、管理し、それらをめぐる散策路を整備すれば街の活性化に繋がるのではないかという考えのもと、三島市では1996年から「街中がせせらぎ事業」を展開することにした。

094 マデロ・ストリート Madero Street

(メキシコ合衆国)

歴史家のイラン・セモは、この数ブロックに国の歴史が凝縮されている、と述べたが、マデロ・ストリートから自動車を排除し、人間に開放することで、メキシコ・シティだけではなくメキシコをも代表する都市公共空間を人々は獲得することができたのである。

050 マドリッド・リオ

(スペイン)

この大プロジェクトによって、マドリッドは河川という新たな都市景観を獲得し、また数少ない貴重なウォーターフロントを憩いの場に変容させた。週末には6万人が訪れるレクリエーション空間にもなっている。それまで自動車が占用していたウォーターフロント沿いのプロムナードを歩くと、ルイス・ガジャルドンはマドリッド市民にとって、とてつもなく素晴らしいプレゼントをあげたのだな、ということに気づかされる。世紀の大鍼治療である。

307 真鶴町『美の条例』

(神奈川県)

神奈川県の南西部に位置する真鶴町。相模湾に向かって傾斜する土地の起伏が生み出す景観が美しい。30年ほど前に制定された、一定規模以上の開発を抑制する「美の条例」によって、建築物と周囲の地形とが織りなす風景が守られ、近年も移住する人が増えている。

335 マルセイユ旧港広場の天蓋(オンブリエール)

(フランス共和国)

2013年、マルセイユ旧港の広場に広大なる天蓋(オンブリエール)が架けられた。広場において建築が存在することのマイナス的要素をできる限り打ち消しながら、そのプラス的要素をしっかりと満たしたこの天蓋。これによって広場の魅力は大きく向上した。見事にツボをついた「都市の鍼治療」事例であると考えられる。

029 マレーニの地域通貨「レッツ」

(オーストラリア)

マレーニは、オーストラリアのクイーンズランド州のサンシャイン・コースとのそばにある人口1500人の小さな町である。このマレーニは1987年10月、地域通貨のレッツを導入する。このレッツを導入したのが、マレーニに信用組合や生協を設立したジル・ジョーダンである。

173 マンチェスター・カーブ(ピカデリー・カーブ)

(イングランド)

この橋がつくられたことで、新しくつくられたピカデリー・プレイスはもちろんのこと、マンチェスターの中心でもあるピカデリー・ガーデンスと中央駅との歩行者のアクセスも格段に改善された。

252 マーガレーテンヘーエのアイデンティティ維持

(ドイツ連邦共和国)

ドイツ、ノルトライン・ヴェストファーレン州のエッセン市に位置するマーガレーテンヘーエは、20世紀初頭、ドイツを代表する重工業企業であるクルップ社に勤める労働者のための社宅として開発された。ドイツの田園都市の中でもドレスデン郊外のヘレラウと並ぶ事例として紹介されている。歴史的コンテクストを重視し、建物をしっかりと保全することに成功している。

324 マールブルクの旧市街地保全

(ドイツ連邦共和国)

マールブルク市はヘッセン州にある人口が76,000人ほどの都市。第二次世界大戦の戦災を受けなかったこともあり、丘陵地につくられた旧市街地に、細い路地が毛細血管のように広がっている。そこに入ると、あたかも中世の時代にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。

257 三津浜まちづくり

(愛媛県)

松山市の西部に位置する三津浜地区では、人口減少や高齢化によって空き家が増え始め、商店街でシャッターを閉じている店舗が6割と半数を越えるような状況になってしまった。このような中、住民が主体となった「三津浜地区まちづくり協議会」が発足。空き家・空き店舗を改装し、新規出店・移住による新たなにぎわい創出を図っている。

112 みつや交流亭

(大阪府)

そこは昼には子育て支援、子供達のたまり場、夕方には落語会や音楽会、映画界、講演会、勉強会、バザーなどに使われる。そして、清潔なトイレと冷たい水とベンチが提供されていて、いつも賑わっているちょっと不思議な空間である。

107 御堂筋イルミネーション

(大阪府 )

構想時の理念は、これをイベントで終わらせないで、都市を魅力化させるトリガーとして位置づけるというものであった。単に道路空間だけでなく沿道の建物や寺社、またはランドマーク等もライトアップすることで、御堂筋という回廊全体の夜間景観を見事に演出している。

028 緑との交換プログラム

(ブラジル連邦共和国)

ブラジルの環境都市として知られるクリチバは、1989年にジャイメ・レルネル氏が三期目の市長として当選してから、「環境都市」を施策目標として掲げる。そして、低所得者層が多く住んでいたフェベラ地区のごみ問題の解決策として「ゴミ買いプログラム」を導入し、見事、大きな成果をあげる。

068 ミュア・ウッズ国定公園の保全

(アメリカ合衆国)

サンフランシスコのゴールデンゲート橋を渡るとマリン郡になる。このマリン郡に224ヘクタールの規模のレッドウッドの森が保全されているミュア・ウッズ国定公園がある。サンフランシスコという大都市からわずか19キロメートルしか離れていないとは思えない、静寂なる大木の森である。

232 ミュンスターの自転車プロムナード

(ドイツ連邦共和国)

人口30万人のうち10万人以上の市民が自転車を利用するドイツの古都ミュンスター。多くのヨーロッパの都市が城壁跡を環状の自動車道路にしたなかで、ミュンスターは自転車と歩行者のためのプロムナードを整備した。コンサートを始めとした多くのイベントが開催されるなど、ただの交通通路ではなく、より広義の公共空間として位置づけられている。

115 ミラノ・ガレリア

(イタリア共和国)

レルネル氏はその著書『都市の鍼治療』で、ミラノ・ガレリア(正式名称はビットリオ・エマヌエーレ2世のガレリア)は「ミラノで最も美しい出会いの場所である」と述べている。それは、ここが単なるショッピング・アーケードだけではなく、ミラノの人々が出会う場所としても重要であるからだ。

026 みんなでつくるん台

(岩手県)

「みんなでつくるん台」とは、岩手県は平泉町にある平泉中学校の新校舎に計画された交流ホールという大空間の使い方及びその空間にふさわしい家具のデザイン・製作に関する一連の取り組みの総称である。

288 名山町の「バカンス」

(鹿児島県)

鹿児島市名山町の「バカンス」。周りに近代的で大きな建物が林立している中、この周囲だけはまるで時間が止まったかのように昭和レトロな雰囲気が漂っている。1階はキッチンスペース、2階は4畳半の小さな空間であるが、そこは狭い路地ゆえに「再建築不可」の空き家がつくりだした、奇跡的なパブリックな場所である。

083 明治学院大学の歴史建築物の保全

(東京都 )

景観を公共財として捉えれば、これら創立時以来の歴史建築物を明治学院大学が保全したことによって、この周辺の街並みも良質な景観を確保することができた。

215 眼鏡橋の保全運動

(長崎県)

長崎市の中島川に架けられた、日本最古といわれるアーチ式の石橋。長崎市のランドマークとして強烈な存在感を放っている。1982年の長崎大水害で一部損壊し、復興事業によって撤去される計画が進められたが、地域文化の保全をめざす市民らの奮闘を受け、撤去計画が見直された経緯を持つ。

095 メキシコ・シティ・メトロバス(BRT)

(メキシコ合衆国)

メキシコ・シティ・メトロバスは、バス・ラピッド・トランジット、通称BRTとよばれる交通システムである。2005年に開業し、2013年までには5本の路線が完成し、それまでは非常に使い勝手の悪かったメキシコ・シティのバス・システムを大きく改善させることに成功した。

104 メトロポール・パラソル

(スペイン)

完成してから5年、この建物は近代的で極めてユニークな意匠が為されているにも関わらず、世界遺産にも指定されている地区を擁するセビージャの旧市街地に見事に融和している。

322 メドラー・パサージュ

(ドイツ連邦共和国)

ライプツィヒはパサージュの都市である。市内には25のパサージュがある。商業的賑わいのある歩行者屋内空間がつくるネットワークはライプツィヒ市に大きな魅力をもたらしている。その中でも最も知名度が高く、また空間的にも瀟洒で存在感があるのはメドラー・パサージュであろう。

211 モエレ沼公園

(北海道)

モエレ沼公園は、札幌市の北東に位置する公園。マスタープランを策定したのは、世界的彫刻家であるイサム・ノグチである。ノグチ氏の急逝など、様々なハードルを乗り越えて2005年に開園した。多くの人に楽しんでもらいつつ、芸術作品をしっかりと次代に継承していくという、両立が難しい二つのバランスを取りながら市民に親しまれている。

181 門司港駅の改修と広場の再生

(福岡県 )

門司港駅の復元事業は素晴らしいものであるが、それと同時に、建物だけではなく、その駅前広場を再生させることで、その都市空間的機能をも再編成させてしまった。この二つを同時に行えたことで、この駅の建物としての魅力はもちろんのこと、その駅の公共性も大きく向上させることに成功した、見事な「都市の鍼治療」事例であると考えられる。

180 門司港レトロ

(福岡県 )

門司港レトロとは、JR門司港駅周辺地域にある歴史的建造物を中心に、大正レトロを意識して修繕、空間演出をした事業である。門司港レトロを訪れた人は、「良くこれだけ歴史建築物が残っていた」と感心するそうだが、これらのほとんどが取壊の瀬戸際に立たされていた。

152 森の墓地(スコーグシュルコゴーデン)

(スウェーデン王国)

建築の流行などというものを超越した、人は生まれれば死ぬ、という不変的事実を受け入れる場所としての墓地を具体化させたこと、特に北欧人にとって精神的な拠り所でもある「森」へ再び戻るという深層意識を空間的に表現した、まさに聖なるランドスケープである。

インタビュー

ジャイメ・レルネル氏インタビュー

(建築家・元クリチバ市長)

「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)

鈴木伸治氏インタビュー

(横浜市立大学国際教養学部教授)

ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。

柴田久 福岡大学教授インタビュー

(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)

都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。

高尾忠志(地域計画家)インタビュー

(地域計画家)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。

鳴海邦碩氏インタビュー

(大阪大学名誉教授)

1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。

中村ひとし氏インタビュー

(クリチバ市元環境局長)

シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。

対談 福田知弘 × 服部圭郎

(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)

お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。

対談 阿部大輔 × 服部圭郎

(龍谷大学政策学部にて収録)

「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。

岡部明子氏インタビュー

(建築家・東京大学教授)

「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)

今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。

土肥真人氏インタビュー

(東京工業大学准教授)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。

饗庭伸教授インタビュー

(東京都立大学都市環境学部教授)

人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。

お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授