058 チャーチストリート・マーケットプレイス(アメリカ合衆国)

058 チャーチストリート・マーケットプレイス

058 チャーチストリート・マーケットプレイス
058 チャーチストリート・マーケットプレイス
058 チャーチストリート・マーケットプレイス

058 チャーチストリート・マーケットプレイス
058 チャーチストリート・マーケットプレイス
058 チャーチストリート・マーケットプレイス

ストーリー:

 バーリントン市は、秋の紅葉が美しいことで知られるニューイングランド地域のヴァーモント州最大の都市、といっても人口はわずか約3万9千人にしか過ぎない長閑な街である。チャーチストリート・マーケットプレイスは、この都心にある中心道路である南北にのびるバーリントンの中心道路であるチャーチ・ストリートを軸に、パール・ストリートとメイン・ストリートに挟まれた4つのブロックから構成される歩行者専用道路である。その長さは500メートル。北の端はユニタリアン教会が建ち、そして南の端は市役所が建っている。チャーチ・ストリートは3階から4階建ての建物がファサードを形づくっているのだが、その1階はほとんどが小売業もしくはレストラン等で使われている。
 ここには、104の店が営業しているが、空き店舗はほとんど見られず、またナショナル・チェーンの店舗もあるが、地元の店舗も混在するなど、バーリントンという都市のアイデンティティを発現するような魅力的な都市空間となっている。
 チャーチストリート・マーケットプレイスの歩行者専用化は、バーリントン市街地開発協会のパトリック・ロビンス会長と、地元の建築家でバーリントン市の都市計画委員会のビル・トルーエックス会長が強力に推し進めたことで実現された。1976年後半にバーリントンの中心市街地から10キロメートルほど離れたウィリストンの町にショッピング・モールが開発される計画が発表されると、ダウンタウンから顧客が奪われるであろうという危機意識が高まり、この歩行者専用化を具体化させるべく、多額の寄付金が集まるようになった。
 そして、1983年にチャーチ・ストリート・マーケットプレイスは完成する。これまで車両の通行していた路面は20メートル幅のレンガで覆われ、樹木や花、ストリート・ファーニチャが配置される。店舗としては、飲食店やサービス施設など130店が並んでいる。中にはストリート・ベンダーが店舗に昇格したものもある。
 この事業は開業と同時に、広く市民に受け入れられた。完成から30年以上経った今、チャーチ・ストリート・マーケットプレイスは年間300万人の集客を誇っている。そして、バーリントン市の商業に活力をもたらし、郊外の商業開発に負けずに踏ん張っている。

キーワード:

中心市街地再生,アイデンティティ,集客施設,商店街

チャーチストリート・マーケットプレイスの基本情報:

  • 国/地域:アメリカ合衆国
  • 州/県:ヴァーモント州
  • 市町村:バーリントン市
  • 事業主体:チャーチ・ストリート・マーケットプレイス地区委員会
  • 事業主体の分類:準公共団体 
  • デザイナー、プランナー:カー・リンチ都市デザイン事務所
  • 開業年:1983年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 チャーチストリート・マーケットプレイスからは学ぶべき点が多い。まず、地元の経営者が多く、地元の経済に活力をもたらしていることが挙げられる。26ある飲食店のうち23が地元経営者であり、75ある小売店のうち6割が地元経営の店である。この地元テナントが多いということは、郊外のショッピング・センターと大いに差別化できる点となっている。
 そして、この場所を維持管理する組織(BID=Business Improvement District)であるチャーチ・ストリート・マーケットプレイス地区委員会をつくりあげた点である。これは、公共主体が維持管理をするといった公共空間の制約に縛られている限り、新しく郊外に出来るかもしれないショッピング・モールに顧客を奪われないような魅力ある商店街を維持することは不可能だという理解があった。同委員会は商店主、地主、市民から構成され、チャーチストリート・マーケットプレイスの活性化策を決定し、公共空間使用料を決定する。
 これらに加えて、チャーチ・ストリート・マーケットプレイスの大きな魅力は、その都市デザインが優れていることが挙げられる。そのデザインに関わったのが『都市のイメージ』の著書で世界的に知られるケビン・リンチが設立したカー・リンチ・デザイン事務所。ヴァーモントの風土を強く意識した空間デザインは、バーリントンのアイデンティティを発露しており、多くの人々に親しまれている。

類似事例:

022 パール・ストリート
059 サード・ストリート・プロムナード
069 花通り
074 ブロードウェイの歩行者専用化
078 インナー・ハーバー
080 富山グランドプラザ
084 ランブラス
091 平和通買物公園
094 マデロ・ストリート Madero Street
100 先斗町の景観形成
128 おかげ横丁
131 スティーフン・アヴェニュー
141 グランヴィル・トランジット・モール
170 ヴィア・スパラーノ(Via Sparano)の改修事業
175 デュッケ・ダヴィラ・アヴェニーダの歩道拡幅事業
201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID
204 16番ストリート・モール
242 ノイハウザー・ストラッセとカウフィンガー・ストラッセ
250 ノイハウン(Nyhavn)の歩行者道路化
253 ロープウェイ通りの空間再構築
264 四条通りの歩道拡張
278 日本大通りの再整備
299 オールド・パサデナ
306 シフィエンティ・マルチン(Sw. Marcin)通りの改造事業
310 ヴェスター・ヴォルゲー(Vester Voldgade)のプロムナード化
・ ストロイエ(コペンハーゲン、デンマーク)