ユニオン・ステーションの再生事業

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キーワード:

鉄道駅, アメリカ合衆国, 再開発, 歴史保全, 歴史建築

鍼レベル:

ストーリー:

 デンバーで最初に鉄道駅がつくられたのは日本で明治維新が起きた1868年である。デンバーは幾つかの鉄道路線が走っており、それぞれが違う駅を発着に使っており不便だったので、これらの路線が結節した中央駅をつくることになった。そして、1881年につくられたのがユニオン・ステーションである。この駅は1894年に焼失するが、1914年にボザール・スタイルで新しく駅舎がつくられ直す。これが現存する駅舎となる。それからユニオン・ステーションは増える鉄道利用者によって大いに栄えたが、第二次世界大戦後からはモータリゼーションの進展、航空機利用者の増加などから、利用者の減少を見始める。
 衰退の憂き目にあっていたユニオン・ステーション、そして鉄道事業であったが、1990年頃から自動車へ過度に依存した都市づくりへの反省が見られ始める。1992年にISTEAという連邦政府の公共交通施設整備の補助事業が制定されるなどして、公共交通整備への機運が高まり始めると、デンバー市でもLRTなどを新たにつくる動きが見られ始める。そして、2001年にデンバー広域圏の交通を管理するデンバー広域圏交通局(Regional Transportation District)がユニオン・ステーションと周辺の土地を購入する。そして、デンバー市、コロラド州交通局、デンバー広域圏自治体連合と協働して、2002年に駅および周辺の7.9ヘクタールの土地を公共交通の拠点として再開発するマスタープランを策定する。このプランは2004年に市議会を通る。
 2006年には実際の再開発を遂行するデベロッパーを選定し、ハーグリーブス・アソシエイツとスキッドモア・オーイングス・エンド・メリルが公共空間、鉄道駅、バス・ターミナル、ライトレール駅を設計することになった。
 この大規模な改修事業で最初に完成したのはライトレールの駅で2011年に開業した。2014年には地下のバスターミナル、2016年には通勤鉄道のプラットフォームが完成し、デンバー国際空港と都心は鉄道で結ばれることになった。通勤鉄道のプラットフォームはデンバーの国際空港と同じように、吊構造のメンブレムの屋根となっている。この屋根がつくりだす天蓋の最高点は23メートルに及び、中心部では7メートルにまで下がる。このような形状にしたために、人々は屋根によって守られているという感覚を持つと同時に、歴史的な駅舎のファサードをプラットフォームからも見られるようになっているのである。
 再開発事業とともに、歴史的な駅舎の改修事業も進められた。その改修事業案は、2012年にユニオン・ステーション連合(Union Station Alliance)のものがRTDによって選定され、駅舎にはホテル、商業施設、交通施設と公共施設が整備されることになった。歴史的な駅舎は2012年から改修工事に入り、2014年には再開した。駅舎の上階は112室のクローフォード・ホテルとして使われることになり、地上階の1,100平米の大空間はホテルのロビー、公共空間、鉄道の待合室として使われ、それに隣接する2,000平米の土地は計10店舗の商業施設とレストランとして使われることになった。
 デンバーのユニオン・ステーションの再生事業は、歴史的な価値、デンバーという都市のアイデンティティをしっかりと維持しつつ、新しい技術を応用した先駆的な都市再生事業であり、ポスト自動車時代における多モード型の交通ハブの先駆的事例として評価されている。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ユニオン駅の改修事業をするうえでのコンセプトは、「デンバーの居間」としてより多様な機能を担うということが挙げられた。その考えによってホテル、レストランや小売店、そして鉄道待ちの人以外でも使われるような公共空間という機能がここに導入されたのである。
 アムトラックという長距離鉄道、そして空港や周辺都市とを結ぶ通勤鉄道、そしてバスターミナル、さらにちょっと距離はあるがライトレールといった公共交通のハブとして人々が集まるユニオン・ステーション。ここの再生事業は、これまで自動車優先の都市づくりをしてきたデンバー市が大きく公共交通を軸とした都市づくりへと方向性を転換するうえでの象徴的なプロジェクトである。それは市役所が構想する、将来の望ましい都市づくりへ向けての強い意志をも表象する優れた都市の鍼治療的事例であるとも考えられる。
 ただ、一方でリーマン危機からの回復という勢いのある経済状況も受けて、中央駅の改修事業は、周辺地区の急ピッチな開発を促している。オフィス、ホテル、商業店舗、住宅といった全方位の開発が進み、駅周辺地区での民間の不動産の投資額はここ数年で10億ドルほどにも及んでしまっている。その旺盛な開発需要により、都心部は見違えるように新しくなっていると同時に、それまでここに居住していた人を追い出すというジェントリフィケーションの問題も深刻化している。治療が効きすぎて、逆に副作用が生じてしまったような状況にあることも付け加えなくてはならない。さじ加減がなかなか、うまくいかないのが都市政策の難しいところである。

【参考資料】SOMのホームページ
https://www.som.com/projects/denver_union_station

事業主体:

(開発時)The Union Pacific Railroad, (再開発)Regional Transportation District、デンバー市、コロラド州交通局、デンバー広域圏自治体連合

事業主体の分類:

自治体, 準公共団体

デザイナー、プランナー:

(開発時)Gove & Walsh、(再開発時)Hargreaves Associates、Skidmore, Owings & Merrill、Union Station Alliance

開業年:

1914年(2011年以降、再開業)

類似事例:

181 門司港駅の改修と広場の再生、北九州市(福岡県)
099 旭川駅、旭川市(北海道)
088 ジズコフ駅の再生プロジェクト、プラハ市(チェコ)
・ キングス・クロス駅、ロンドン(イギリス)
・ ユニオン・ステーション、セントルイス(ミズーリ州、アメリカ合衆国)
・ ライプツィヒ中央駅、ライプツィヒ(ドイツ)
・ セント・パンクラス駅、ロンドン(イギリス)
・ 新・岩見沢複合駅舎、岩見沢市(北海道)
・ 東京駅、千代田区(東京都)

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国:アメリカ合衆国
州・県:コロラド州
市町村:デンバー市