241 シティズンシップ・ストリート(ブラジル連邦共和国)

241 シティズンシップ・ストリート

241 シティズンシップ・ストリート
241 シティズンシップ・ストリート
241 シティズンシップ・ストリート

241 シティズンシップ・ストリート
241 シティズンシップ・ストリート
241 シティズンシップ・ストリート

ストーリー:

 シティズンシップ・ストリートは、バス・ターミナルに設けられたもので、交通結節点であると同時に、行政サービス、商店、スポーツ施設、レジャー施設などが立地している複合公共施設である。ここはクリチバ市役所の派出所的役割を有しており、各種申請、税金の支払い、診療所、学校その他の情報提供といった手続きをここで行うことができる。それに加えて店舗、喫茶店、理髪店、美容院、薬局、本屋、ビデオ屋、銀行、郵便局、スポーツ施設や運動場などが立地しているのだ。シティズンシップ・ストリートがあるために、クリチバ市民は都心にある市役所に出向かなくても、ここで多くの行政手続きを済ませたり、行政サービスを受けたりすることができる。
 最初のシティズンシップ・ストリートが設置されたのはグレカ市長時代の1995年で、ボケイロン地区においてであった。その面積は2ヘクタールという広大のものである。2019年時点で、シティズンシップ・ストリートは10ほど整備されている。
 シティズンシップ・ストリートをバス・ターミナルに設置したのは、土地を市が所有していたのと、市民にとってアクセスが非常にいいということが理由である。シティズンシップ・ストリートができる前は役所へ届出などをする場合、都心にある市役所にまで来なくてはいけなかったのだが、現在はバス・ターミナルに立地しているシティズンシップ・ストリートに来るだけでいいので、バスを一本乗れば多くの用件を済ますことができる。シティズンシップ・ストリートから外に出なければ、片道の料金だけで往復することができる。
 その結果、人々は都心に行く必要性が減り、お金も節約することができると同時に、都心への流入交通をも削減できる。また、このシティズンシップ・ストリートは、鮮やかな色とシンプルな構造の建築物であり、その地区のシンボルにもなっている。

キーワード:

交通施設,ターミナル

シティズンシップ・ストリートの基本情報:

  • 国/地域:ブラジル連邦共和国
  • 州/県:パラナ州
  • 市町村:クリチバ市
  • 事業主体:クリチバ市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:ラファエル・グレカ
  • 開業年:1995

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 クリチバ市には興味深い都市事例が多い。特に「都市の鍼治療」という観点からだと、それを提唱したジャイメ・レルネル氏が都市政策に長期間、関与してきたこともあり、当然ながら、その好事例に溢れている。さて、しかし、クリチバ市にある「都市の鍼治療」の好事例がすべてジャイメ・レルネル氏発案という訳ではない。これは、レルネル氏の薫陶を受けた、その理念の継承者達がレルネル氏が市長を辞めた後、その志を引き継いできたからである。特に、それが顕著であったのは、レルネル氏の後にクリチバ市長となったラファエル・グレカ氏、そして、その後に市長となったカシオ・タニグチ氏であろう。
 グレカ氏は若干37歳という若さで市長となる。彼は「クリチバのレッスン」というクリチバを題材とした小学生用の教科書をつくり、子供達に自分達の住む都市のことを教えたり、「知識の灯台」(「都市の鍼治療」ファイル番号092)という小さな図書館を小学校に隣接して設置したりと主に教育面に力を入れてきた。この「知識の灯台」は、その機能だけでなく、クリチバの新しいランドマークとして市民に受け入れられるが、もう一つ、彼がつくりだしたランドマークがこのシティズンシップ・ストリートである。両方とも、市内に散らばって存在しているというのが特徴であり、ネイバーフッド単位でのランドマークとなった。
 世界的に知られることとなったクリチバのバス・ラピッド・トランジットのシステム(「都市の鍼治療」ファイル番号166)は、運賃をバス停で支払うというのが大きな特徴の一つである。この制度を使うことで、バスを乗り換える停留所を日本の鉄道の乗換駅のように拡張化させることで、バスを乗り換えても初乗り料金を支払わなくて済む制度を導入することができるようになった。これが、クリチバのRID(Rede Integrada de Transporte: Integrated Transportation Network 統合型交通ネットワーク)とよばれるシステムであるが、この制度を導入したことで、バスの乗り換え停留所という交通結節点は人が多く集まる場所として大きな可能性があることにクリチバ市は気づいたのである。そこで、この交通結節点であるバス・ターミナルの改札内に市役所の派出所、店舗、スポーツ施設などを設けることで、多くの人がバスでこれらのサービスにアクセスできるだけでなく、そのための交通費も半額で済む(片道代だけで済む)ことを可能としたのである。
 それは一方でバスという公共交通の利便性を高めることになった。21世紀になってから日本の鉄道事業者も「駅ナカ」というコンセプトで駅に商業施設を中心とした店舗を設けることになったが、クリチバはそのような動きに先んじて、バス・ターミナルにおいて、収益事業だけではなく、公共的な事業・サービスを提供したという点に、この都市の創造性、問題解決能力の高さを感じる。まさに、ジャイメ・レルネル的な都市施策であり、彼のDNAが見事、後輩達にも引き継がれていることを実証するような一石三鳥的な「都市の鍼治療」事例であると考えられる。

【参考資料】
服部圭郎著『人間都市クリチバ』(学芸出版社)

類似事例:

199 ユニオン・ステーションの再生事業
カールスルーエの交通システム、カールスルーエ(ドイツ)
グランド・セントラル・ステーション、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
キングス・クロス駅、ロンドン(イギリス)
サン・パンクラス駅、ロンドン(イギリス)
東京駅、千代田区(東京都)