デンマーク王国の事例

035 オーフス川開渠化事業とプロムナード整備

(デンマーク王国)

オーフスはデンマーク第二の都市である。とはいえ、人口はわずか29万人。このオーフスの都心にオーフス川が流れている。このオーフス川、1930年代に増加し始めた自動車交通に対応するために暗渠化をして、その上にオー通りという幹線道路を整備した。その後、月日が経つ。1962年には首都コペンハーゲンの都心部から自動車を排除して、歩行者空間ストロイエをつくったことの成功などを経験し、デンマークの都市は全国的に、都心部は自動車ではなくて歩行者を主人公とした都市づくりをしようというトレンド、というか理念が形成されていく。

036 バナンナ・パーク

(デンマーク王国)

バナンナ・パークは5000㎡の運動公園で、運動場、巨大なバナナの形状をした盛り土、芝生、ちょっとした森、クライビング用の壁などが設置されている。都心から西部にあるノアブロ地区の土壌汚染された工場跡地につくられた。バナンナ・パークの地主は、そこを住宅として開発しようと考えていた開発業者に売り渡そうとしていたのを、市役所が干渉して、代わりに市が購入して、この地区周辺に不足していた緑地、そして公共空間を提供するようにした。

037 スーパーキーレン

(デンマーク王国)

スーパーキーレンは、コペンハーゲン市の西部にあるノーブロ地区につくられた公園。その面積は3ヘクタールに及び、3つのエリアから構成される。赤の広場、黒の市場、緑の公園である。赤の広場は近代的な公園の機能を持たせており、カフェや音楽、スポーツ活動が行える施設・空間が配置されている。黒の市場は、伝統的な広場であり、噴水やベンチが置かれている。そして、緑の公園はピクニック、スポーツ、犬の散歩などに使われている。

038 サイクルスランゲン

(デンマーク王国)

サイクルスランゲンは235メートルの長さの歩行者そして自転車専用の橋である。それは、同じく歩行者そして自転車専用のブリエーブロ橋と国道2号線とを結ぶことになる。この橋は190メートルの長さで4メートルの幅を有している。
 コペンハーゲン港の東西を結ぶ200メートルのブリエーブロ橋が完成したのが2006年。これは、自転車移動時間を大幅に短縮させ、また自転車利用を増加させたことで3300万デンマーク・クローネの社会的便益をもたらした事業として評価された。しかし、コペンハーゲンの都心部側(西側)へと橋を渡った後には、目の前にある国道2号線とは高低差があり、せっかく橋を渡っても遠回りをしなくてはならなかった。そのボトルネックを、このサイクルスランゲンは解消することになった。これによって、ブリエーブロ橋の使い勝手が大きく改善され、都心部へのアクセスも向上することになったのである。

039 サイクル・スーパーハイウェイ

(デンマーク王国)

サイクル・スーパーハイウェイは、コペンハーゲンを中心とした20の自治体の協働作業によって整備されることになった。その目的は、コペンハーゲンを中心とする首都地域が、国内でも最も自転車に乗りやすい地域にすることと同時に、環境に優しく、サステイナブルな交通手段である自転車をより普及させていくことにあった。

040 グルドベーグ小学校のプレイグランド

(デンマーク王国)

コペンハーゲンの都心からすぐ近くにあるノアブロ地区は緑も少なく、また公共空間も不足していた。そのような状況に対処するために、グルドベーグ小学校の校庭を広く開放させることで、児童はもちろんのこと、若者や大人もここでスポーツをしたり、休息をしたりする工夫をした。
 グルドベーグ小学校の建物周りのオープンスペースは、公共広場であったり、住民のための遊び場だったり、グルドベーグ小学校の児童の校庭だったりと、その時々の利用者の用途に分けて、多様な積極的な使われ方ができるようにした。 

072 イスラエル広場(南)

(デンマーク王国)

イスラエル広場(南)はコペンハーゲンの中心部にある公共広場。その設計コンセプトは「地面に浮かぶ空飛ぶ絨毯」である。市民の利益を最優先に考えた、コペンハーゲン流の都市デザインがそこにある。

226 ハウザープラッド

(デンマーク王国)

コペンハーゲンのど真ん中に、ちょっとした憩いの空間と先端的な子供の遊び場を提供するオアシスのような場所である。都心という極めて経済価値が高いところにおいて、直接的な経済価値をもたらさないものを整備することには勇気がいる。しかし、この空間をつくることで、周辺に多大なる価値を長期的にもたらすことになるのは多くの事例が我々に教えてくれる。

250 ノイハウン(Nyhavn)の歩行者道路化

(デンマーク王国)

運河とカラフルな色彩の歴史建築物の景観が楽しめるコペンハーゲンの観光名所。オープン・カフェで飲食を楽しむ人々で賑わっている。しかし、ここは一昔前までは治安も決してよくなく、みすぼらしい雰囲気が漂い、運河沿いには自動車が違法駐車をするという、アメニティからはかけ離れた空間であった。どのようにして変貌したのか。

276 インナーハーバー橋

(デンマーク王国)

コペンハーゲンの主要部を結ぶインナーハーバー橋は2016年に開通した、180メートルの自転車・歩行者専用の橋である。この橋が架けられたことによって、人々の移動パターンは大きく変化しており、都心部における自転車ネットワーク、歩行者ネットワークはより強化されることになった。

309 BLOX

(デンマーク王国)

コペンハーゲンの運河沿いに新たに出現した、レム・クールハウスが設計したBLOXの建物は、都市の文脈を上手く掴んで、その課題を建築によって解決しようとする大胆で見事な試みである。BLOXはウォーターフロント・エリアに新たな目的地性を与え、それまでアクセスが難しかった運河は新たなる公共的な活動の場へと変化しつつある。

310 ヴェスター・ヴォルゲー(Vester Voldgade)のプロムナード化

(デンマーク王国)

ヴェスター・ヴォルゲーのプロムナード化は、一つのプロジェクトが他のプロジェクトと連携し合い、シナジー効果を発揮させ、単独では発現できなかった都市の魅力を創造するというプラスのドミノ効果が具体化されている。コペンハーゲン・マジックとでも言うべき見事なプロジェクトである。

315 人々の家アブサロン

(デンマーク王国)

コペンハーゲンのアブサロン教会は、閉鎖されたのち実業家の夫婦に買い上げられ「大規模なリビングルーム」として生まれかわった。毎夕18時から開催される、廉価で質のよい食事が提供される夕食会には老若男女が集い、見知らぬ同士が関係性を構築させる機会を生んでいる。そこはすべての人が受け入れられる空間である。

320 コペンヒル

(デンマーク王国)

コペンハーゲン南東部にあるゴミ処理施設、アマー・リソース・センターは老朽化が進んでおり、それを建て替える必要があった。そこで、その建て替えのための設計コンペを2011年に行った。提案されたアイデアは、高さ85メートルの丘のようなごみ焼却発電所を建て、その屋上をスキー場にするという奇抜なものであった。完成したコペンヒルには環境教育を学ぶ施設も併設されている。ゴミ処理施設の概念を大きく変える施設である。

インタビュー

ジャイメ・レルネル氏インタビュー

(建築家・元クリチバ市長)

「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)

鈴木伸治氏インタビュー

(横浜市立大学国際教養学部教授)

ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。

柴田久 福岡大学教授インタビュー

(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)

都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。

高尾忠志(地域計画家)インタビュー

(地域計画家)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。

鳴海邦碩氏インタビュー

(大阪大学名誉教授)

1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。

中村ひとし氏インタビュー

(クリチバ市元環境局長)

シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。

対談 福田知弘 × 服部圭郎

(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)

お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。

対談 阿部大輔 × 服部圭郎

(龍谷大学政策学部にて収録)

「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。

岡部明子氏インタビュー

(建築家・東京大学教授)

「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)

今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。

土肥真人氏インタビュー

(東京工業大学准教授)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。

饗庭伸教授インタビュー

(東京都立大学都市環境学部教授)

人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。

お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授