226 ハウザープラッド(デンマーク王国)

226 ハウザープラッド

226 ハウザープラッド
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226 ハウザープラッド

226 ハウザープラッド
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226 ハウザープラッド

ストーリー:

 ハウザープラッドはコペンハーゲンの中心市街地、歩行者専用道路ネットワークであるストロイエの近くにある広場公園である。面積は2.2ヘクタールと決して大きくはないが、コペンハーゲンの都心部の喧騒の中、ハウザー・プラッドはあたかもオアシスのように落ち着いた空間を提供している。その丁寧な設計により子供も大人も街の喧騒から離れて時間を過ごせることができる。都心部においては貴重な緑地を提供するだけでなく、ゴム舗装などが施されているため、幼児や児童が遊ぶうえでも安心である。
 そもそも、この場所がつくられたきっかけは、1807年のイギリス軍の砲撃による。その結果、都心部に出現した荒廃地をハウザー氏が購入した。その後、ここを広場にする計画がいろいろとつくられたが実際、具体化されたのは1939年であった。そして、2011年にここをリノベーションすることにした。
 伝統的にコペンハーゲン市には遊び場や子供のための場所はつくられていなかった。しかし2008年からコペンハーゲン市は市内の子供の遊び場を改善することで、それが家族の助けになるようにしたのである。ハウザープラッドにも子供のための遊び場がつくられることが計画された。コンペが行われ、デンマークの建築会社であるPolyformが選ばれる。
 2011年のリノベーションで、地上は公園、地下はコペンハーゲン市のクリーニングセンターになった。地上の公園は小さい空間ながら高低がつくられ、それによって遠目からは丘のようにも映る。それによって古い区画とは全く違う見え方がする場所となっている。公園は針葉樹と白いフェンスで囲まれており子供が外に飛び出す心配もない。園内には円形の砂場といくつかの遊び具が設置されている。これらに加えて園内に植えられた針葉樹、草花、模造の草花、そして設置されたコンクリートの彫像などが、子供達の想像力を刺激する仕掛けとして機能している。ただ、それによって空間が冗長にならないように、デザイン的にはシンプルさを追求している。これは、子供をわくわくさせる空間であると同時に、大人も落ち着いて休憩させられる、という矛盾した目的を両立させるための空間デザイン上の工夫である。
 公園の地下は元地下駐車場であったが今はクリーニングセンターである。クリーニングセンターには街の公共スペースを日々清掃している労働者のための事務所と場所がある。クリーニングセンターの事務所は公園から見下ろすことができる。
 ハウザープラッドはコペンハーゲンのど真ん中に、ちょっとした憩いの空間と先端的な子供の遊び場を提供する、まさにオアシスのような場所である。

キーワード:

公園,広場,ランドスケープ,子供

ハウザープラッドの基本情報:

  • 国/地域:デンマーク王国
  • 州/県:デンマーク首都圏地域
  • 市町村:コペンハーゲン市
  • 事業主体:コペンハーゲン市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Polyform設計
  • 開業年:1838
  • 再開業年:2013

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 都心という極めて経済価値が高いところにおいて、直接的な経済価値をもたらさないものを整備することには勇気がいる。市場経済下において、空間開発を民間企業に任せていたら絶対につくられない空間である。しかし、この経済価値をもたらさない空間をつくることで、周辺に多大なる価値を長期的にもたらすことになるのは多くの事例が我々に教えてくれる。ニューヨークのセントラル・パークがその代表的な事例かと思われるが、比較的最近でもサンフランシスコのユルバ・ブエナ・ガーデンス(都市の鍼治療 事例No.45)などの事例がある。しかし、そのようなことが理解されていても、どうしても目先の利益に目が行ってしまう。特に日本の都市はそのような傾向が顕著である。
 最近の渋谷の、まるで高層ビルが雑居ビルの間隔でひしめき合って林立している都市風景をみるにつけ、個人的には民間企業による都市開発の限界のようなものを感じてしまう。一方で、日本の都市でも地方においては豊田市の豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)(都市の鍼治療 事例No.223)のような事例も見られ始めている。地方都市ではあるし、暫定利用ではあるが、都心の一等地を思い切って広場として整備したことは、短期的にはともかくとして長期的には大きなリターンを豊田市にもたらすことが期待される。東京のような開発志向とは真逆をいくことで、むしろ豊かさをつくりだしている。そして、世界に目を向けると、都市間競争の激しいヨーロッパではむしろ常套手段となっている。特に、都市デザインに長けているコペンハーゲンはそのような空間をつくりだすのが上手い。

類似事例:

037 スーパーキーレン
042 バターシー・スクエア
045 ユルバ・ブエナ・ガーデンス・エスプラナーデ
102 観塘工業文化公園
129 サン・ホップ公園
176 ブライアント・パークの再生事業
177 ペイリー・パーク
185 グリーンエイカー・パーク
223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)
・ パイオニア・スクエア、シアトル(ワシントン州、アメリカ合衆国)
・ ケラー・ファウンテン公園、ポートランド(オレゴン州、アメリカ合衆国)
・ バルフォア・ストリート・パーク、シドニー(ニューサウスウェールズ州、アメリカ合衆国)
・ クラウド・ガーデンス、トロント(オンタリオ州、カナダ)