026 みんなでつくるん台(日本)

026 みんなでつくるん台

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ストーリー:

 「みんなでつくるん台」とは、岩手県は平泉町にある平泉中学校の新校舎に計画された交流ホールという大空間の使い方及びその空間にふさわしい家具のデザイン・製作に関する一連の取り組みの総称である。
 2010年に平泉中学校は改築することになった。それにあたり、あたらしい校舎に交流ホールという大空間が計画された。この空間を使いこなすためにどうしたらいいのか、在校生を対象としたワークショップが開催された。そして、この空間をうまく活用するために、使途の限定された椅子やテーブルではなく「台」をデザイン・製作することにした。18ヶ月で8回のワークショップを行い、生徒達が議論をしてデザインを練り、講師や地元職人の技を借りながら県産材を使って三種類の台を製作したのである。
 この子供達が交流ホールの活用するための家具のアイデアを考え、それを具体化しようというアイデアの発案者は東北大学の平野勝也先生であった。平野先生は平泉町で委員の仕事をしていたこともあり、平泉中学の校舎を改築することを知ると、このアイデアを出す。そして、町と教育委員会もスクラムを組んで、このアイデアを具体化するために動き出す。
 子供のワークショップのコーディネーターではその上手さに定評のある宮城大学(当時)の田代久美先生、そして平泉町の街づくりに関わってきた東京大学の尾崎信先生、デザイナーの南雲勝志氏、さらには地元の大工の千葉哲也氏が協働して、この事業を支援する。
 第一回目のワークショップでは、戸惑いややる気のなさが見られた中学生が、ワークショップを重ねるとともに、徐々に情熱をもってこの家具づくりをしていったプロセスは、これまで受け手であった中学生が、作り手として周囲の環境に主体的に取り組むようになった変化として捉えることができるであろう。それは、また個々のアイデアをうまく相手に伝え、そして議論することを通じて、集団として一番、優れたものを選んでいくという民主主義的な体験でもあった。そして、何より、アイデアが、実際に家具として実現されたことによる生徒達の達成感は大きく、その達成感は自分への自信、仲間への信頼だけでなく、学校への愛着、郷土への帰属意識の高まりをもたらしたとも考えられる。 
 この取り組みは、2012年度のグッドデザイン賞、そして同年のこども環境学会賞を受賞している。

キーワード:

コミュニティ・デザイン,市民参加,子供の参画

みんなでつくるん台の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:岩手県
  • 市町村:平泉町
  • 事業主体:平泉町、平泉町立平泉中学校、平泉町教育委員会
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:平泉中学校平成23年度第2学年生、平野勝也、田代久美、南雲勝志、尾崎信、千葉哲也
  • 開業年:2012

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 「みんなでつくるん台」の試みは大変、興味深い。そのアプローチは「住民主体のまちづくり」と同じである。ただ、この場合は「行政=大人」、「住民=子供」として置き換えられている。「行政=大人」が与えてくれた交流ホールという「公共施設」を、その利用者である「住民=子供」が協働してデザインをしていく。子供達は、望ましい公共的な空間をつくりあげるために、多くの議論をし、ものごとを決めていく難しさや面白さ、そして自分達が決めたことが具体的に実現されることの充実感を覚えたであろう。
 また、この試みが興味深いのは、子供が中心となっていることである。日本のまちづくり、都市政策では子供は蔑ろにされる。特に中学生、高校生はあたかも存在しないかのように取り扱われる(というか、扱われない)。しかし、この事例は学校という、まさに子供達が主人公として使う空間であるので、その子供が主体的にデザインに取り組むのは本筋である。むしろ、それまで学校という環境も大人から「与えられている」ことが間違いであったのだ。「みんなでつくるん台」のワークショップは、「与えられると思っていた物を、創造的に考える」機会を中学生に提供した。この姿勢の転換、消費者から生産者への発想の転換、これこそがまちづくりにとっても求められることである。
 都市の鍼治療としての事例としては、ちょっと異質に思われるかもしれないが、根源的なところで都市をよくする、町をよくしていく哲学が、このプロジェクトには通底している。
 このプロジェクトのリーダーであった東北大学の平野勝也氏の次の言葉が印象的である。「私がほんとうに楽しみにしているのは、いつか大人になった彼らと、平泉の街をどうしていくのか、熱く語り合い、ともにまちづくりを行える日が来ることなのである。」
 まちづくりを実践するのは人である。その人づくり、という点で、「みんなでつくるん台」の成果はとてつもなく大きなものがあると考えるし、また、その成果は将来、平泉に還元されていくと思われる。ちょっと、効果が発現するのに時間がかかるかもしれないが、素晴らしき都市の鍼治療の事例であると考えられる。

類似事例:

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