047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保(日本)

047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保

047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保
047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保
047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保

047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保
047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保
047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保

ストーリー:

 神戸市は、1980年後半頃から、旧居留地の街並み保全活動を展開し、現在では「もっとも神戸らしいお洒落で洗練された街」へと変容されることに成功した。しかし、この区画は港と隣接しているにも関わらず、海岸線と平行して走っている国道2号線沿いに建っている建物によって、港への景観がほとんど遮断されてしまっていた。
 そのような中、国道2号線沿いにあり、旧居留地の明石町筋からみなとへの展望を遮断していた神戸水上警察署庁舎の建物の耐震化が必要と分かり、2009年9月に神戸市と兵庫県でポートアイランド北公園に移転することで基本合意をした。庁舎は2013年1月に移転し、旧庁舎が撤去されて、2014年に緑地がつくられることになった。
 この緑地は「みなと公園」という小公園に隣接しており、これらが一体化されることによって面積的にはちょっとしたオープンスペースが神戸の街並みと海との間に出現することになった。また、この緑地ができたことによって明石町筋からみなとへの景観回廊が確保できた。すぐそこに港があることを、このスペースが気づかせることを可能としたのである。

キーワード:

アイデンティティ,街並み保全,景観保全

波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:兵庫県
  • 市町村:神戸市
  • 事業主体:神戸市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:神戸市
  • 開業年:2014

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 波止場町・メリケンパーク都市景観形成地域にふさわしい街並み景観の形成を図るため神戸市は7つの整備方針を策定したが、そのうちの一つに「海への誘いの形成」というものを掲げている。それは、「眺望路には,海へ至る主要なエントランス空間として,海への誘いを感じさせる街角景観を形成する」というものだが、それが具体化されているのは、水上警察署が移転することで展望が開けた明石町筋のみである。しかし、この空間ができたことの意味は大きい。
 水上警察署の跡地を空地としないで、また景観を遮ることになる建物をつくるという選択肢もあった筈である。それをしなかったことで、神戸市は港町である、海のそばにあるということを、市街地から海を展望できる景観を確保することで気づけるようになった。それまで、大きな壁のように国道二号線に沿って並び、海への展望を阻害していた建物の中に穴を開けることに、この事業は成功したのである。
 さらに、水上警察署の隣にある海保が入っている合同庁舎も移転が検討されているとのことで、この穴が徐々に広がり、港町にふさわしい神戸市らしい景観が将来、形成されるかもしれない。それは、既にアーバン・デザイン的な試みによって、質の高い都市空間を具体化させた居留地の魅力をさらに向上させることになるであろう。
 居留地から海への視界は、この「穴」によって、随分と改善されたが、それでも阪神高速神戸線の高架道路が気にはなる。さらには、高潮対策としてつくられた防潮壁も景観的にはマイナスだ。このように、海への景観という観点からは、まだまだ多くの課題を有している神戸のウォーターフロントではあるが、この穿孔は大きな前進であると考えられる。素晴らしい「都市の鍼治療」であると思われる。

類似事例:

063 チャールストンの歴史保全
234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全
267 京都市の眺望空間保全
・ウォーターフロント沿いの土地利用規制、チャールストン(サウス・カロライナ州、アメリカ合衆国)
・ボルダー市の都心部高さ規制、ボルダー市(コロラド州、アメリカ合衆国)