234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全(日本)

234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全

234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全
234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全
234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全

234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全
234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全
234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全

ストーリー:

 神奈川県の中央部に位置する座間市。八王子街道の宿場町として昔から栄えてきた集落である。小田急線が新宿とを結び、1960年代後半からベッドタウンとして人口が増加し、その土地利用は大きく変遷した。相模川が市の西側を南北に流れ、鈴鹿・長宿地区は座間駅から北西に約1.5キロほどいったところにある相模川の河岸段丘沿いの斜面に位置する。
 これは座間市の初期集落の一つであり、河岸段丘の斜面地下から湧き出る水を利用するというメリットを活かして発展してきた。これらの湧水は農地用水であり、生活用水でもあった。そして、集落の背後にある斜面地は地下水の保水維持のために、樹林地として保全され、集落の共有地として管理された。
 座間市は神奈川県では数少ない上水道に地下水を用いる自治体である。市内には8つもの水源井が存在する。鈴鹿・長宿の斜面下からは、現在でも清水が湧き、ちょっとした公園のような空間が整備されており、子供達が水遊びをしている。そして、そこから道沿いの用水路に流れ出ている。ドブ川とはまったく違った清い水が、新しくつくられた郊外住宅地内を流れているのだ。その人工的な郊外住宅地と自然との共存は、ちょっとありそうでない郊外住宅地の景観である。
 このような景観がなぜあるのか。それは、1996年から水の流れる集落風景をしっかりと活かした街並み環境整備事業を行ってきたからである。「自分たちの先祖がつくりあげてきた風景を自分達が維持するのはあたりまえだ」と地元の人達が気づき、自分達で出来ることに取り組み始め、それによってブロック塀が生け垣へ、寺院の万年塀も周囲の景観と調和するようなものへと置き換わった(岡本哲志氏の著書)。そして、そのような住民主体の景観づくりを20年以上も積み上げてきたことによって、この集落の地形がもたらす豊かな景観要素が再び、郊外住宅化が進んだこの土地に甦り、魅力ある風景が取り戻されたのである。

キーワード:

景観整備,生活風景,斜面緑地,市民参加

鈴鹿・長宿の景観整備と保全の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:神奈川県
  • 市町村:座間市
  • 事業主体:座間市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:鈴鹿・長宿の住民
  • 開業年:1996

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 この街並み環境整備事業を行う理念は「鈴鹿・長宿区域まちづくり協定書」に反映されている。その第6条には次のように書かれている。
「住宅を整備するときは、周辺環境との調和を図るとともに、「湧水と歴史の里 鈴鹿・長宿」としてのたたずまいを考慮して、次の各号に定めるところに沿って努めるものとする。 (1)区域内の主要道路及び隣地境界から、建物を可能な限りセットバックし、歩行者の安全と景観の向上を図る。 (2)看板又はこれに類するものは、過大なものや、派手なものは避ける。 (3)座間市景観計画の鈴鹿長宿特定景観計画地区における行為の制限を遵守し整備を図る。」
 そして、市役所はこれら住民の活動をバックアップをしていった。あくまで主人公は住民であり、市役所は裏方、という体制である。
 国によって景観法が公布されたのは2004年。その後、いわゆるお上主導の景観整備が進められてきたが、「仏像作って魂入れず」というような、外観だけが整備され、その地域風土、歴史の積み重ねなどへの配慮を怠ったのっぺりとした景観がつくられるような事例が少なくない。それは、中身を磨かず、うわべの格好だけを取り繕ったかのような薄っぺらい印象を逆にもたらしたりする。この座間市の鈴鹿・長宿の景観には、そのような表層的なものは感じられない。それは、この土地の地形、風土を尊重し、それを大切に思う住民の人達の気持ちが景観に表れているからではないだろうか。そして、その気持ちを我々は無意識に景観から読み取り、それを美しく感じる。その景観自体は特別なものでは決してないし、むしろ地味である。しかし、そこには等身大の座間の斜面緑地の風景がある。それはオーセンティシティという言葉さえ浮かんでくる風景である。さらに役所は決して出しゃばらず、あくまで介添え的な役割を担った。特殊解ではなく、一般解としての景観まちづくりの一つの模範例であると思われる。

【参考資料】
岡本哲志著 『地形で読みとく都市デザイン』 学芸出版社

類似事例:

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