141 グランヴィル・トランジット・モール (カナダ)

141 グランヴィル・トランジット・モール

141 グランヴィル・トランジット・モール
141 グランヴィル・トランジット・モール
141 グランヴィル・トランジット・モール

141 グランヴィル・トランジット・モール
141 グランヴィル・トランジット・モール
141 グランヴィル・トランジット・モール

ストーリー:

 グランヴィル・モールはヴァンクーバーの都心に位置するトランジット・モールである。それはグランヴィル・ストリートのヘイスティング・ストリートとスミス・ストリートに挟まれた750メートルの区間を指す。この区間は、週日はトロリーバスとバスのみが通り、自家用車はその通行が禁止されている。多くの人々がここを通るバスを利用し、広い幅の歩道には人が行き交う。街路樹が目に優しく、ここで時間を過ごすためのベンチなども設置されている。まさに、ヴァンクーバーという都市を象徴するような空間である。
 グランヴィル・ストリートから自動車を排除するという案は、1968年に都心部を通る高速道路の計画が住民の反対によって反故になったことを契機として出された。市役所は高速道路の計画を放棄すると同時に、都心部は自動車の利用が抑制されるべきであるとの指針を発表した。都心部が衰退していたので、市役所はその活性化策として人々を都心に再び呼び込むためには、自動車主体の都市づくりはリスクが大きいとい、危惧を有していたことが背景として指摘できる(Rubenstein, “Pedestrian Malls, Streetscapes, and Urban Spaces”, p.215)。そしてグランヴィル・ストリートのヘイスティング・ストリートからネルソン・ストリートの950メートルから自動車を排除し、歩行者道路兼トランジット・モールにした。それまでは、グランヴィル・ストリートは6車線の道路で、一時間当たり1,200台の自動車が行き来していたのだが、それを二車線にし、一時間当たり100台のバスしか通れないようにしたのである。そして、歩道を12メートル弱にまで拡幅し、街路樹などを植え、街路灯、ベンチ、バス停留所の屋根などが設置された。工事は二段階で進められ、第一フェーズは1974年8月に完成し、第二フェーズは1976年9月に完成した。この事業にかかった費用は300万ドルで、市役所以外にブリティッシュ・コロンビア州、カナダ政府、沿道の地主なども資金を提供した。
 一方、ダウンタウン・ヴァンクーバー協会は、グランヴィル・ストリートに再び自動車が通れるように戻すために行動した。そして、ヴァンクーバー市も1987年にはネルソン・ストリートからジョージア・ストリートまでの500メートル区間は自動車を再び通せるようにした。だが、これは評判が悪く、1988年に再び道路から自動車を排除することになった。とはいえ、ネルソン・ストリートからスミス・ストリートの一ブロックに関しては自動車に開放し、片側2車線の車道を確保した。
 グランヴィル・トランジット・モールは一日当たり1,900台のバスが行き来しており、そのうちの9割がトロリーバスである。2006年から2010年には地下鉄工事のため、一時、道路を閉鎖したが、地下鉄開業後はここにグランヴィルの地下鉄駅ができ、公共交通のハブとして位置づけられることになった。
 賑わいを確保するために、グランヴィル・ストリートでは銀行などの金融機関は店舗の間口を25フィート以下(約8メートル)にするよう規制している。これは、これらの金融機関は小売業の店舗に比べて、人の出入りが少なく、道の賑わいをなくすという考えからである。一方で、オープン・カフェは多く立地するよう、それを促進するようなガイドラインもつくられた。

キーワード:

都市デザイン,街路,トランジット・モール,ペデストリアン・モール

グランヴィル・トランジット・モール の基本情報:

  • 国/地域:カナダ
  • 州/県:ブリティッシュ・コロンビア州
  • 市町村:ヴァンクーバー市
  • 事業主体:ヴァンクーバー市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Bain, Brroughs, Hanson, and Raimet
  • 開業年:1974年(第一期)、1976年(第二期), 2010年(改修事業)

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ヴァンクーバーの都心の東西の幹線軸であるグランヴィル・ストリート。ヴァンクーバーという都市の中核ともいえるロブソン・スクエアが近くにあり、また地下鉄の中央駅ともいえるグランヴィル駅もこのトランジット・モール上にあるなど、まさにヴァンクーバーの交通のハブとなっている。そして、バスや地下鉄など公共交通によってこのトランジット・モールに来た人々は、ここから歩いて、都心の目的地にまで向かう。歩行者と相性のよい公共交通が見事に共振するようなシステムをこのトランジット・モールは創り出しており、これがヴァンクーバーという大都市の魅力を向上させるのに貢献していることが分かる。
 歩行者専用道路ではなく、トランジット・モールという選択肢を選んだ大きな理由は、グランヴィル・ストリートをどのように再整備するかを検討していた市役所のスタッフ達が1973年8月にミネアポリスのニコレット・モールを視察したことが大きかったようである。
 グランヴィル・ストリートをトランジット・モールにしてから、600番地の沿道の地価は1974年から1975年で30万ドルから45万ドルへと上昇した。いかに、人々そしてマーケットがこのグランヴィル・ストリートのトランジット・モール化を評価していたかが理解できる。

類似事例:

022 パール・ストリート
058 チャーチストリート・マーケットプレイス
059 サード・ストリート・プロムナード
069 花通り
094 マデロ・ストリート Madero Street
131 スティーフン・アヴェニュー
204 16番ストリート・モール
264 四条通りの歩道拡張
306 シフィエンティ・マルチン(Sw. Marcin)通りの改造事業
・ ニコレット・モール、ミネアポリス市(ミネソタ州、アメリカ合衆国)
・ ポートランド・トランジット・モール、ポートランド市(オレゴン州、アメリカ合衆国)
・ リバー・シティ・モール、ルイビル市(ケンタッキー州、アメリカ合衆国)
・ ルア・ダス・フロレス、ブエノス・アイレス(アルゼンチン)
・ ストロイエ、コペンハーゲン(デンマーク)