140 ロブソン・スクエア (カナダ)

140 ロブソン・スクエア

140 ロブソン・スクエア
140 ロブソン・スクエア
140 ロブソン・スクエア

140 ロブソン・スクエア
140 ロブソン・スクエア
140 ロブソン・スクエア

ストーリー:

カナダ第三の都市ヴァンクーバーのダウンタウンのまさに中核に位置するロブソン・スクエアは、総敷地面積が12ヘクタール、約3ブロックに及ぶ裁判所兼パブリック・スペースである。「メトロポリタンの森」というコンセプトのもとで計画され、ヴァンクーバーという都市のシンボル的空間になっている。
 さて、しかし、ここが1970年代に再開発を検討された時はこの地区はまったく現在とは異なるような場所となる筈であった。ここに1975年に建てられることとなったブリティッシュ・コロンビア・センターの建物の高さは208メートルもあり、もし実現されたら当時ヴァンクーバー市で最も高い建物になる予定であった。しかし、1972年に政権交代がおき、工事が始まる直前にこの計画は白紙に戻った。新民主党のデーブ・バレットはこの建物が都市の中心部に影をつくるという人々の不安を取り除いたのである。そこで、カナダを代表する建築家アーサー・エリクソンに依頼して、これをリデザインすることにした。
 そこでエリクソンが打ち出したアイデアは、この建物を倒して横にしてしまい、人々がその建物の上を歩けるようにする、というものであった。そして、裁判所と美術館という都市社会の礎となる建物を両端に置き、地下空間には行政機関を設置することにした。空間デザイン的には「メトロポリタンの森」というコンセプトを打ち出した。
 このプロジェクトはまず地方政府の建物が1978年に完成し、翌年、裁判所がつくられ、古い州の裁判所の建物がヴァンクーバー芸術ギャラリーに修繕されたのは1983年であった。それらは3つのブロックにまたがり、12ヘクタールの床面積を供給した。南のブロックに設置された裁判所は高さが42メートルの環境共生型の建物であり、その30%が植物で覆われており、コンピューターによって散水などの緑の管理が為されている。エリクソンは、従来の閉鎖的な裁判所の設計の在り方に疑問を持ち、より開かれた空間づくりをするように工夫した。この斬新な裁判所が実現できるよう、設計の段階から保守的な裁判所を欲していた判事達が参加するように工夫をした。中央のブロックには地方政府のオフィスや、ブリティッシュ・コロンビア大学のサテライト・キャンパスが入っている。そして、流れ落ちる滝がランドスケーピングされていたり、アウトドアのスケート・リンクが設置されていたりする。そして、北のブロックにはヴァンクーバー芸術ギャラリーがつくられた。
 建設費用は1.39億ドル。ヴァンクーバーが冬季オリンピックを開催する2010年の前年に再開発事業が為された。そして、ここでは冬季には無料の公開のスケート・リンクが設置される。
 このプロジェクトは多くの賞を受賞しており、1979年にはアメリカ・ランドスケープ家協会が、1982年にはカナダ王室建築協会が金メダルを、さらに2011年にも同協会は、このプロジェクトが都市に緑をもたらしたこと、そして大胆でありつつ細部にも配慮が行き届いたアーバン・デザインが為されていることを評価して、賞を与えている。

キーワード:

都市デザイン, 広場

ロブソン・スクエア の基本情報:

  • 国/地域:カナダ
  • 州/県:ブリティッシュ・コロンビア州
  • 市町村:ヴァンクーバー市
  • 事業主体:ヴァンクーバー市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Arthur Erickson (architect), Cornelia Oberlander (landscape)
  • 開業年:1983年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ロブソン・スクエアはまさにヴァンクーバーの中心にあたる。東京でいえば東京駅、パリでいえばルーブル美術館、ロンドンでいえばトラファルガー広場、ニューヨークでいえばタイムズ・スクエアのような場所である。もちろん、このような大都市ではないので、その存在感はそれほど大きくはない。しかし、ヴァンクーバーらしい素晴らしい都心の象徴的な空間であると思う。
 ロブソン・スクエアはヴァンクーバーの目抜き通りであるロブソン通りを遮断する。そして、自動車はロブソン・スクエアを横切ることができなく、迂回することを余儀なくされる。また、駐車場空間もロブソン・スクエアの地下に収容している。また、高層の建物を横に倒すということでヒューマン・スケールの空間を実現している。その結果、ヴァンクーバーは都心部の空間を「人」が集う広場として機能することを可能にしているのである。ちょっとした工夫を施すことで、この都市空間が誰に所属するのかを見事に表現しているのである。
 加えて、環境共生的な試みをすることや、広場に滝を流すといったランドスケーピングをすることで、大都市のど真ん中に緑のオアシスを創り出すことにも成功している。晴れた日に階段で緩やかな時間を過ごしている市民を見ると、このような空間がある都市で生活できる豊かさを痛感する。
 ヴァンクーバーという都市の格を高めることに大きく寄与するような素晴らしい「都市の鍼治療」の事例であると考えられる。

類似事例:

084 ランブラス
105 エスプラナーデ公園
139 パイオニア・コートハウス・スクエア
176 ブライアント・パークの再生事業
184 ザンド広場の再生
189 ポンピドー・センター
212 トラファルガー広場の歩行者空間化事業
・ロックフェラー・センター、ニューヨーク市(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
・トラファルガー広場、ロンドン(イギリス)