077 富山ライトレール (日本)

077 富山ライトレール

077 富山ライトレール
077 富山ライトレール
077 富山ライトレール

077 富山ライトレール
077 富山ライトレール
077 富山ライトレール

ストーリー:

 2006年4月、富山市にライトレールが開通した。日本初の本格的なライトレールである。路線のほとんどは廃線となったJR富山港線の路線であり、富山駅と日本海にある岩瀬浜の7.6kmを13駅(新設は5駅)で結ぶ。運行本数は平日132本、休日124本であり、運行間隔は朝ラッシュ時では10分間隔、日中は15分間隔であり、これはJR富山港線の時(平日では一時間に約1本)と比べると大幅に向上されている。その結果、廃線直前の2005年の富山港線の利用者は2266人であったが、富山ライトレールが開業すると、平日では1日当たり約4800人が利用し、土休日だと約6600人が利用した。開業前の約4200人という予想を大きく上回る結果となった。
 2014年においても利用者は平均5276人と、ほぼ安定的に推移している。その内訳は、平日だと男性39%、女性61%、休日だと男性49%、女性51%である。また、利用者は平日だと19歳以下が27%、休日だと65歳以上が29%であり、平日は通学利用者が多く利用し、休日は高齢者の人達が都心に出るために利用していることが推察される。
 保有車両は7両であり、各車両は立山の新雪をモチーフとした白を基調色として、赤、橙、黄、黄緑、緑、青、紫の異なる7色がアクセントカラーとして乗降口まわりを彩っている。車両、ユニフォーム、電停、シンボルマーク、ICカードなどは共通イメージで捉えられており、トータル・デザインで統一されている。
 城川原にある車両基地では、ライトレール車両の最上部や車体裏の見学や運転体験などもすることができたり、鉄道むすめのラッピング車両を走らせたり、チョロQを始めとした関連グッズを販売したり、鉄道ファンを意識したサービスも積極的に行っている。さらに、施設のバリアフリー化も進んでおり、段差の無い平らな床面、バス・路面電車の一体型ホームなど、高齢者や身障者にも使い勝手のよい工夫がされている。
 このような努力が実って、沿線の高齢者の引きこもりが減り、都心部へ行く人達も増えている。また2020年を目標年次として、富山ライトレールは北陸新幹線などの鉄道と立体交差し、市内電車と接続する計画である。これによって、さらに利便性は向上し、利用者も増えると期待されている。

キーワード:

公共交通,ライトレール,コンパクト・シティ

富山ライトレール の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:富山県
  • 市町村:富山市
  • 事業主体:富山ライトレール株式会社
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:GK設計
  • 開業年:2006年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 富山ライトレール事業のポイントは発注者がトータル・デザインの価値を認めた点である。駅やサイン計画、車輌の設計までGK設計が担当した。これによって、富山ライトレールは単なる公共交通施設ではなく、富山市の都市デザイン要素として位置づけられ、富山市の「顔」となっている。
 富山ライトレールは単なる交通サービスを提供しているだけでなく、富山市が抱える都市課題の解決手段としても位置づけられている。富山市は「コンパクトなまちづくり」を指向している。鉄軌道などの公共交通を活性化させ、その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市機能を集積させ、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを目指しているのである。そして、その空間構造は「お団子と串」と解説されている。その目標は公共交通の沿線人口を市全体の現状の3割から4割へと増やすことである。その串として、極めて重要な役割を担っているのが、富山ライトレールなのである。
 富山ライトレールが走る前もJRの富山港線が走っていたが、沿線の人口は減っていないにも関わらず、輸送人員は減少の一途をたどっていた。しかし、富山ライトレールになり、利用者目線でダイヤを作成し、車両のバリアフリー化、駅舎の新設など利便性を増したことで、大幅に利用者は増加。補助金を受けてはいるが財務状況は黒字である。富山ライトレールの成功は、市内電車環状線化事業に繋がることになる。岐阜市のように路面電車を廃止する自治体が多い中、富山市は積極的に路面電車のネットワークを拡張しているのである。
 富山ライトレールは二年間という短い期間で事業を遂行することができた。その背景には、市長はもちろんのこと助役をはじめとした市の担当者が、しっかりと考えを共有し、実現するための姿勢を維持できたことがあげられる。「都市の鍼治療」というのが、何よりもタイミングを重要視するという観点からすると、日本では珍しいほどツボを押さえ、タイミングよく短期間で実践できたプロジェクトであると考えられる。

類似事例:

060 ストラスブールのトラム
095 メキシコ・シティ・メトロバス(BRT)
121 姫路駅前トランジット・モール
166 クリチバのバス・システム
318 カールスルーエのデュアル・システム
・ 都電荒川線、北区(東京都)
・ フライブルグのライトレール、フライブルグ(ドイツ)
・ ヴッパータルのモノレール、ヴッパータル(ドイツ)
・ サンノゼのライトレール、サンノゼ(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
・ ポートランドのライトレール、ポートランド(オレゴン州、アメリカ合衆国)
・ マンチェスターのライトレール、マンチェスター(イングランド)