ポンピドー・センター

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キーワード:

フランス, 公共空間, 公園, 博物館, 図書館, 広場, 教育施設, 文化施設, 映画館, 美術館, 都市観光

鍼レベル:

ストーリー:

 ポンピドーセンターは、ジョルジュ・ポンピドー国立芸術文化センターの通称である。それはホーブール地区の市場跡地に、ポンピドー大統領の指示によって1977年につくられたモダン・アート(現代美術)のための大展示場だ。当センターの構想はポンピドー大統領がまだロスチャイルド銀行に勤務していた1962年からあった。彼が大統領に就任した後、美術研究・現代美術の展示・入場無料の施設とするために各方面に働きかけて実現したものである。
 ポンピドー・センターは10階建てであるが、2階から3階は公共情報図書館、5階から7階までが国立近代美術館・産業創造センターが入っており、それ以外は映画館、多目的ホール、会議室、国立音響音楽研究所、カンディンスキー図書館、さらには10階にはレストランなども入っている。
 ポンピドーセンターの特色の1つは、館長に大きな権限が与えられていることである。他の美術館と異なり、ポンピドーセンターの館長は展示内容を決めるための大きな権限をもち、同時に資金調達などの責務も負う。ただ、そこでは常に先端のものを展示していこうと試みている。
 展示内容はそれぞれ独自の場合もあれば、1つのテーマに沿って関連している場合もあり、さらにそれぞれの部門で関連書物の出版も行なっている。今日ポンピドーセンターは当初の予想を上回り、フランス国内でも最も集客の多い施設となったが、来館目的が1つの展示やサービスのみに集中しないように務めている。
 ちょっと古いデータではあるが、ポンピドー・センターへの筆者の取材調査では、統計的に最も多い入場者像とは、21から30才でフランス人の学生であり、図書館にくる男性である。入場者の社会的地位は中流階級で高校を卒業した人で、67%のひとは大学を卒業しているそうだ。年間の利用者は800万人ぐらいで、そのうちの4割ぐらいが、美術館と図書館の利用者である。国立近代美術館は10万点以上の作品を所蔵しており、欧州最大の近現代美術のコレクションを所蔵している。 
 ポンピドー・センターがパリにとって重要なのは、このような文化的な機能だけでなく、その建物が現代建築史においてもメルクマール的なものであり、さらにパリという都市に極めて肯定的な影響を及ぼすことに成功したからである。ポンピドー・センターの設計者は国際建築設計コンペティションによって決められた。1971年に応募作品数681点からレンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャース、ジャンフランコ・フランキーニのプロジェクトが選出された。ピアノとロジャースは当時、まだ33歳、37歳であった。
 建築的な面での特徴は、内部の空間を自由に変更できるようにしたことである。つまり、各階の7,500平米のスペースが展示内容に応じて柔軟に対応できるよう、外部に建物の重さを支持する柱などの構造や、建物の共用部分である配管群、階段・エスカレーターを設置し、内部からはそれらの柱やパイプスペースを排除したのである。外壁に押し出された配管群は四色に彩られた。青色が空気管、緑色が水道管、黄色が電気管、そして赤色は人が移動するエレベーターなどを示している。設備系を外に配備したのは、維持管理を容易にすることを意図したからであるが、それは結果的に、特異なファサードをこの建物にもたらすことになった。
 また、彼らの提案は681作品のうち、唯一、敷地の半分を広場として整備して公開するようにした。現在、この広場は建物と同じかそれ以上の価値をパリという都市にもたらしている。
 本施設であるが、財務面では大蔵省と文部省(文化省)に100%依存している。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 レンゾ・ピアノの名を世界に轟かすことになる傑作。ピアノもロジャースもコンペで選ばれた当時は、それほど有名ではなかったが、その後、建築のノーベル賞といわれるプリッツァー賞を受賞する大家となる。
ポンピドー・センターを「都市の鍼治療」で紹介したいと考えたのは、それが単に展示場として優れているだけでなく、公共施設としての公共性を十二分に発現しており、それがパリという都市の魅力を向上することに繋がっているからである。特に、その公共性の素晴らしさが体現されているのは、同センター前に設置された広場である。
 この広場は建物の西側に位置しており、建物に向かって緩やかな下りのスロープになっている。スロープから入る玄関は周辺の道路面より3.5メートルも低くなっている。この絶妙な傾斜のスロープは、座りやすく、またシエナのカンポ広場のように空間にベクトルをもたらし、ほぼ全員がポンピドー・センターの東側のファサードを楽しむ方向に座って寛いでいる。周囲の建物の高さがほどよい案配で、日陰とそうでない部分を広場につくりだすと同時に、その囲い込み感が安心感と心地よさを提供してくれる。また、広場という、人々が自由に使える空間を提供したことで、ここではアート・インストレーションが展示されたり、イベントが開催されたりするなどの多様な活動が展開している。このスロープはイベント時にはアンフィシアター的な空間に、ここを変容させることを可能としている。
 広場には巨大な白い潜望鏡の形をしたチューブが立っているのだが、これは広場の地下駐車場の換気口の役割を果たしている。このチューブが周辺の街路と広場との空間を定義づけるような役割を果たしている。
この広場に次いで公共性が感じられるのは、「パリの眺め(Vue De Paris)」と呼ばれるエスカレーターの踊り場からの展望スペースである。ポンピドー・センターの高さは42メートルなのだが、これは周辺の高さ規制よりちょっと高くなっている。その結果、ここからは、モンマルトルの丘とセーヌ川、エッフェル塔を一枚の絵におさめたような見事なパリの都市景観が展望できる。ポンピドー・センターはこの眺めを獲得しただけでなく、それをしっかりと展望できるスペースをつくった。現在でも、多くの観光客がここで写真を撮影するが、展示場としては本質的ではないそのような公共空間をつくったことは、まさにレルネル氏が指摘する「都市への贈り物」なのではないかと考える。
 ポンピドー・センターのデザインは、当時、随分と突飛な印象を人々に与えた。その意図を設計者のレンゾ・ピアノは「いかめしい文化施設のイメージを破壊したかった」(Figaro, 2017年2月)と述べたが、「お堅い」文化施設のイメージを壊し、パリに新しい風を呼び、また、都市の広場としても機能する装置を付加することに見事に成功した。
 このようにポンピドー・センターは、「芸術の都パリ」において新たな現代芸術の拠点としての役割を果たしただけでなく、衰退していたボーブール地区を活性化するうえでの起爆剤となった。そして、パリの重要なアイコンとしての観光資源とまでなっている。
 それは、まさに多方面にわたって大きなポジティブな効果をもたらした「都市の鍼治療」事例である。

【取材協力】ポンピドーセンター広報局
【参考資料】建築家ヘレナ・アリザのホームページ
(http://architecturalvisits.com/en/2014/02/05/centre-pompidou-paris/)

事業主体:

フランス政府

事業主体の分類:

デザイナー、プランナー:

リチャード・ロジャース、レンゾ・ピアノ、チャンフランコ・フランキーニ

開業年:

1977年

類似事例:

045ユルバ・ブエナ・ガーデンス・エスプラナーデ、サンフランシスコ(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
ロブソン・スクエア、ヴァンクーバー(ブリティッシュ・コロンビア州、カナダ)
055 ビルバオ・グッゲンハイム美術館、ビルバオ(スペイン)
009 ツォルフェライン、エッセン(ドイツ)
・ グッゲンハイム美術館、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国) ・ 科学博物館、ヴォルフスブルク(ドイツ)
158 ベルリン市立ユダヤ博物館、ベルリン(ドイツ)
・ デンバー美術館、デンバー(コロラド州、アメリカ合衆国)
・ オンタリオ美術館、オンタリオ(カナダ)
・ カンポ広場、シエナ(イタリア)
183 ドルトムンダーUタワー、ドルトムント(ドイツ)
109 オスカー・ニーマイヤー博物館、クリチバ(ブラジル)
・ ニューヨーク近代美術館、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)

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国:フランス
州・県:イル・ド・フランス地域圏
市町村:パリ市