163 サントスの珈琲博物館 (ブラジル連邦共和国)

163 サントスの珈琲博物館

163 サントスの珈琲博物館
163 サントスの珈琲博物館
163 サントスの珈琲博物館

163 サントスの珈琲博物館
163 サントスの珈琲博物館
163 サントスの珈琲博物館

ストーリー:

サンパウロから70キロメートルほど離れている港町サントスは、珈琲の出荷港として20世紀前半には大変栄えていた。1922年にそこにつくられた珈琲取引所の建物はサントス市内でも、最も華美な建物として捉えられていた。

1986年、サンパウロ州政府は1960年代にはその活動が終了していたサントスの珈琲取引所の建物を引き取ることを決定する。ただし、その後、州政府がしっかりと維持管理をしていないこともあり、建物は老朽化し、建物を維持させるために何らかの措置を採ることが求められた。そして、1996年5月、この建物を維持するための研究が始まり、建物を維持させるためには州政府が改修事業に取り組み、そして民間企業にも関与させるために、この建物を珈琲博物館とすることが提案された。この提案は認められ、改修事業は1997年に開始される。そして、1998年には「ブラジル珈琲博物館友達組織」(the Associa?ao dos Amigos do Museu do Caf? Brasileiro)がつくられ、1999年にはオークション広場が開館された。翌年は、ブラジル珈琲に関して広く来館者に知ってもらうために、館内にカフェが開設した。2005年にはブラジルの珈琲の歴史を展示する館が完成し、2008年には「ブラジル珈琲博物館友達組織」が正式に社会文化組織として認知され、サンパウロ州の文化大臣からその運営を任されることになった。これによって、珈琲博物館は官僚的な組織運営ではなく、より自立的な運営が可能となっている。

その床面積は6000?あり、珈琲がどのように栽培され、珈琲豆がどのようにして珈琲になるのかなどが理解できるような展示が成されている。また、ミュージアム・ショップやカフェも充実している。現在はサントスの重要な歴史的建築物の保全に成功し、さらにはその都市の歴史をしっかりと発信する博物館としても集客に成功している、貴重な観光資源として位置づけられる。

キーワード:

歴史保全,都市観光,博物館

サントスの珈琲博物館 の基本情報:

  • 国/地域:ブラジル連邦共和国
  • 州/県:サンパウロ州
  • 市町村:サントス市
  • 事業主体:ブラジル珈琲博物館友達組織(the Associaçao dos Amigos do Museu do Café Brasileiro)
  • 事業主体の分類:市民団体
  • デザイナー、プランナー:Samuel Kruschin(建築家)、José Moreira da Silva, Eduardo Carvalhaes Filho(コンセプト)
  • 開業年:1999年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

2017年におけるブラジルの珈琲生産量は268万トンで、これは国別では世界一であり、二位のベトナムのほぼ2倍弱を誇る。日本は世界有数の珈琲消費国であるが、その多くをブラジルから輸入している。

ブラジルの輸出品という観点からは、最近では大豆、鉄鉱石、砂糖などの陰に隠れてしまっている珈琲であるが、19世紀後半においては珈琲が最大の輸出品であった。珈琲の物語は、ブラジルの文化と歴史の物語でもある。珈琲はブラジルでは貧富の差と関係なく飲まれ、一昔前まで、それはブラジルに豊かさをもたらし、人々の暮らし方にまで大きな影響を与えた。

そして、その影響が最も大きかったのがサントスである。港町であるサントスは、珈琲の出荷港として極めて優れていただけでなく、港の後背地の丘陵は珈琲栽培にも適していた。そのような背景を有していたサントスに豪奢な珈琲取引所がつくられたのは必然であった。1957年までここで珈琲豆の価格が決められていたのである。

この珈琲取引所を珈琲博物館にしたことで、サントス市は由緒ある歴史的建築物を有効に活用することに成功し、サントスという都市のアイデンティティでもあった珈琲の博物館というアーカイブ施設をつくることに成功し、さらには貴重な都市観光資源をつくることにも成功した。それは、観光客だけでなく、サントス市民にとっても自分達の都市の歴史、アイデンティティを再確認する貴重な場所として位置づけられ、また、それはグルメ珈琲を楽しむ場としての役割も果たしている。

非常に優れた都市の鍼治療事例であるが、逆に最近までこのような施設が出来なかったことが不思議である。

【参考資料】
Santos Coffee Museum ウェブサイト(https://turismosantos.com.br/?q=en/node/1677)

類似事例:

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046 ギネス・ストアハウス(ギネスビール博物館)
302 奄美群島の黒糖焼酎
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