122 サンタ・ジュスタのエレベーター(ポルトガル)

122 サンタ・ジュスタのエレベーター

122 サンタ・ジュスタのエレベーター
122 サンタ・ジュスタのエレベーター
122 サンタ・ジュスタのエレベーター

122 サンタ・ジュスタのエレベーター
122 サンタ・ジュスタのエレベーター
122 サンタ・ジュスタのエレベーター

ストーリー:

 サンタジュスタ・リフトはリスボンの歴史地区、サンタジュスタ地区にあるエレベーターである。リスボンは坂だらけの都市であり、特にその高低差が大きい歴史地区において、川沿いの低地とそれを囲む丘陵とをいかに繋ぐか、というのはこの都市の大きな課題であった。
 19世紀後半、この低地と丘とを結ぶために、当時、二つの解決法が提案された。一つは、坂に敷いた鉄軌道の上を走る車両を動物によって引っ張るというものであり、もう一つはラウル・メスニエル・デ・ポンサルドによって提案された、筒の中を機械の力によって上下する箱による移動であった。リスボン市は1882年にメスニエルに、このエレベーターを施行する認可を与える。
 そして、1902年、メスニエルはサンタジュスタにエレベーターを設置した。営業認可はリスボン・エレクトリック・トラムウェイが受け、その後、紆余曲折を経て、1973年にはリスボン市が営業管理することになる。
 このリフトは鉄製のタワーと、その上部に設置された展望台、そして、エレベーターにアクセスするための歩道橋から構成される。その高さは45メートルであり、エレベーターの箱は相当、大きく、24名(その後、補強されて29名)まで乗ることができる。箱のインテリアは木製であり、鏡などもついており、レトロ感に溢れる。
 全般のエレベーターの意匠はネオ・ゴシック・スタイルである。当時は鉄製の建物は新しかったので、このリフトはエレベーターという新しい建築物だけでなく、新しい建築素材を披露するという役割も担っていた。
 このリフトはリスボンの観光スポットとなっており、多くの観光客が訪れ、それに乗るのには週末などは並ばなくてはならない。他にもリスボンには、サンジュリアオなどの垂直型のエレベーターがつくられたが現存しておらず、サンジュスタのものが唯一、今日まで残っているエレベーターである。

キーワード:

エレベーター, 歴史建造物, ランドマーク

サンタ・ジュスタのエレベーターの基本情報:

  • 国/地域:ポルトガル
  • 州/県:リスボン県
  • 市町村:リスボン市
  • 事業主体:カリス社(リスボン市)
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:ラウル・メスニエル・デ・ポンサルド(Raoul Mesnier du Ponsard)
  • 開業年:1902

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 リスボンのサンタジュスタのエレベーターは、おそらく世界で最も有名なエレベーターなのではないだろうか。都会で生活している人にとってエレベーターというのは日常的なもので、何の変哲もない。しかし、リスボンの低地バイシャ地区と丘のシアード地区とを結ぶサンタジュスタのエレベーターは観光資源にまでなってしまっているほど有名で、しかもランドマークとしても強烈な存在感を放つ建築物である。
 つくられた当時は45メートルの高さで、できた当時は驚きの技術の結晶であったのだろう。観光名所として多くの人を惹きつけることになる。
 今でこそ、エレベーターなどあまりにも日常的で、ちょっと高い建物ならほとんどついているような代物であるが、よく考えると、それが登場した時には驚きの交通施設であるということに気づかされる。この設計者のメスニエルはエッフェル塔の設計メンバーの一人でもあったのだが、当時、著しい発展をみた土木工学的技術を用いた建築構造物をつくることに大きな夢を抱いていた人だったのかもしれない、とサンジュスタのエレベーターをバイシャ地区から仰ぎ見ると思ったりさせられる。
 平日、ここを訪れたのだが、このエレベーターに乗るのに15分間ぐらい待たされた。15分も待たされて乗るというのは、もうほとんど観光客しか利用しなくなってしまった、ということであろう。しかも、これは有料で5ユーロちょっと取られた。48メートルの高度を得るために日常生活で5ユーロ払う人はほとんどいないから、これはもう100%観光客向けなのかもしれない。
 さて、しかし、このエレベーター、ランドマークとしてはなかなかのものである。エレベーターの丘側の乗り場の上は螺旋状の階段で展望台に上ることができ、そこからはバイシャ地区の町並みだけでなく、そのスカイラインを縁取る城、それからテージョ川、そしてその対岸のアルマーダまでをも展望することができる。東京のように高いタワーや高層ビルがないので、ここからの展望はリスボンにとっては特別な意味があるのだろう。
 ジャイメ・レルネル氏は、その著『都市の鍼治療』において20世紀後半に展開したリスボンの都市開発事業を批判的に記しているが、その中で、サンジュスタのエレベーターの価値を再評価するような文章をさらっと書いている。
 7つの坂の都市と言われるリスボンだが、そのリスボンにふさわしいユニークなランドマークである。

参考図書:ジャイメ・レルネル『都市の鍼治療』

類似事例:

092 知識の灯台
106 国立映画博物館(トリノ)
146 ブリッゲンの街並み保全
298 バンカー・ヒル・ステップス(Bunker Hill Steps)
・ ハットルグリムス教会、レイキャビク(アイスランド)
・ メナラ・タワー、クアラルンプール(マレーシア)
・ 通天閣、大阪市(大阪府)
・ 東洋真珠塔、上海(中国)
・ タシケント・タワー、タシケント(ウズベキスタン)
・ ゲートウェイ・アーチ、セントルイス(ミズーリ州、アメリカ合衆国)
・ コイト・タワー、サンフランシスコ(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
・ スペース・ニードル、シアトル(ワシントン州、アメリカ合衆国)
・ バーリントン・アーケード、ロンドン(イギリス)
・ 太陽の塔、大阪市(大阪府)
・ エッフェル塔、パリ(フランス)