095 メキシコ・シティ・メトロバス(BRT) (メキシコ合衆国)

095 メキシコ・シティ・メトロバス(BRT)

095 メキシコ・シティ・メトロバス(BRT)
095 メキシコ・シティ・メトロバス(BRT)
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095 メキシコ・シティ・メトロバス(BRT)

ストーリー:

 メキシコ・シティ・メトロバスは、バス・ラピッド・トランジット、通称BRTとよばれる交通システムである。2005年に開業し、2013年までには5本の路線が完成し、それまでは非常に使い勝手の悪かったメキシコ・シティのバス・システムを大きく改善させることに成功した。
 北アメリカ最大の人口を擁するメキシコ・シティの都市としての最大のネックは交通にあった。平均通勤時間は2時間30分。2015年の国民生活時間調査(NHK)によると、東京圏は1時間42分であるから、通勤地獄と揶揄される東京よりもさらに酷い状況にある。
 メキシコ・シティには地下鉄が走っているが、ラッシュアワー時は東京ほどではないが、相当その混雑は酷い。そして、多くの人が自動車で移動しているために道路渋滞は凄まじいものがあった。バスはあるが、それらは体系化されておらず、また車両も古いために環境面、そして安全面から多くの問題を抱えていた。その結果、大気汚染も劣悪な状態にあった。
 このような事態を改善させるためにメキシコ・シティは公共交通システムを大幅に改善することを政策目的とした。そして、二つの事業を展開することにした。一つは地下鉄をさらに延長させること、もう一つは体系化されていないバス・システムを改善し、専用レーンを走るバス・ラピッド・トランジット・システムを導入することにした。そして、運賃の支払いはスマートカードで、さらにバスのプラットフォームに入る際に料金を引き落とす工夫などをすることで利便性、速度性を向上させるようにした。バス車両も連節バスに置き換え、大量に乗車(160人)できるようにしただけでなく、快適性も随分と改善された。
 バス・ラピッド・トランジットの路線は2016年で6本。2017年にも新たな路線が開通予定である。バスの停留所は208。2013年の利用者数は90万人に及ぶ。バスの専用道路を整備したことと、車両の改善によって走行速度が向上したことで、所要時間は平均して50%も短縮された。また一酸化炭素の排出などは、従来のバスに比べて50%ほど削減でき、二酸化炭素は年間で35000トンほど削減されたと推測されている。
 基本的には市役所が建設をして維持管理をしているが、プラットフォームやスマートカードの運営・管理に関しては民間企業が請け負っている。

キーワード:

公共交通,バス,BRT

メキシコ・シティ・メトロバス(BRT) の基本情報:

  • 国/地域:メキシコ合衆国
  • 州/県:ディストリト・フェデラル
  • 市町村:メキシコ・シティ市
  • 事業主体:メキシコ・シティ市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Carlos Monge他
  • 開業年:2005年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 バスのいいところは、街中をみながら移動できることである。そのため、街がどうなっているかが分かる。それまでのメキシコ・シティの公共交通の主役は地下鉄であった。だが、地下鉄で移動していても街の様子は分からない。よそ者にとってバスでの移動は、街をよく知る貴重な機会を提供してくれる。しかも、メキシコ・シティのバス・ラピッド・トランジットは、運行頻度が高い。ピーク・アワーでは1時間で56本も運行されている路線もある。
 ラッシュアワー時のバスは相当、混んでいて、日本の地下鉄のラッシュアワーに慣れている私でも乗るのに躊躇するぐらいの混み具合である。ただ、頻繁に来るので、2本ぐらい待つと比較的、空いたバスがやってくる。
 感心したのは料金の安さである。空港行きだけが30ペソ(160円)だが、それ以外は6ペソ(32円ぐらい)。メキシコ・シティは物価が安いのだが、それに比べても低く料金設定されている。
 バス路線をつくるうえでは、沿道の都市デザインも随分と改善された。まず、プラットフォームが格好がよい。さらに、バス路線の整備で一本の木を切った場合は、新たに3本を植えなくてはいけない、というルールをつくったので、例えば3号線沿いの街路樹などは大変立派になっており、ちょっとしたブルバードのようになっている。
 メキシコ・シティのバス・ラピッド・トランジットは、基本的にはブラジルのクリチバ・タイプであり、コロンビアのボゴタ、インドネシアのジャカルタなど類似事例も多く、メキシコ・シティのそれが特別である訳ではない。ただし、個人的には、そのビフォアー・アフターを知っていることもあり、その整備効果がたいへん大きなものであることを理解できる。以前のメキシコ・シティのバスは乗る気さえ起きなかったが、バス・ラピッド・トランジットは行き先が明瞭であるし、運行頻度も高いので大変使い勝手がよくなっている。このシステムによって、メキシコ・シティのアクセスが物理的にも心理的にも格段と向上されたと思われる。その「ツボ」としての効果は、絶大なものがあると考え、ここで紹介させてもらう。

類似事例:

060 ストラスブールのトラム
077 富山ライトレール
166 クリチバのバス・システム
318 カールスルーエのデュアル・システム
・ 都電荒川線、北区(東京都)
・ フライブルグのライトレール、フライブルグ(ドイツ)
・ ヴッパータルのモノレール、ヴッパータル(ドイツ)
・ サンノゼのライトレール、サンノゼ(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
・ ポートランドのライトレール、ポートランド(オレゴン州、アメリカ合衆国)
・ マンチェスターのライトレール、マンチェスター(イングランド)