013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク(アメリカ合衆国)

013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク

013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク
013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク
013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク

013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク
013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク
013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク

ストーリー:

 ローウェルはマサチューセッツ州の北西部にある人口10万人ほどの都市である。
 この都市は、アメリカの産業革命の発祥地と言われる。イギリスで18世紀後半に興った産業革命は、アメリカに渡り、ボストンを中心に活躍していた起業家達の一部は、水力を使った機織り機を発明し、この機械を使う生産工場を建設していった。マリマック川が流れるローウェルにもそのような工場が多く、建設され、19世紀中盤にはアメリカ最大の機織り生産地となった。しかし、その後は新しい技術の導入や安い労働力のために、ローウェルは徐々に衰退していき、1960年代にはほとんどの繊維工場が閉鎖されてしまい、多くの若者も町から出て行ってしまった。
 このような状況に対処するために、1970年頃から、政治家や企業家等が、ローウェルを活性化するための方策を考え始めた。そのきっかけは、当時、国会議員であったブラッドフォード・モース氏が、ローウェルを「モデル・シティ」プロジェクトに選定させるよう働きかけたことである。そして、そのような流れを受けて、ローウェル市議会議員のブレンダン・フレミングが1972年に「工場と運河地区」を同市最初の歴史地区として提案し、それが1972年に認定される。さらに、都市計画家であったゴードン・マーカーが歴史保全と経済再生をコンセプトとした都市公園の計画を策定し、教育者であったパトリック・モーガンは都市公園に博物館的な教育的機能を付加させることを主張する。これらの動きは、ローウェル出身の上院議員であるポール・ツォンガス氏のもとに統一された運動となり、1978年にはローウェル国立歴史公園の設立と、ローウェル歴史保全委員会の設置へと繋がる。
 ローウェル・ナショナル・ヒストリカル・パークの設立目的は、アメリカの産業革命の中でローウェルの町が果たした功績の歴史を伝えることである。アメリカの産業革命最盛期に活用されていた水路、機織り工場、工場労働者の宿舎などが、19世紀の状態に復元されて市内の幾つかの箇所において保全、展示されている。
 特にまちづくりにおいて重要な役割を担っているのは、ビジター・センターを中心として、市内に点在しているヒストリカル・パークの施設をネットワーク化するマリマック運河沿いの歩道である。これは、単に施設を移動するための歩道ではなく、ローウェルの町中を体験させる役割を担う。ローウェルはビートニクを代表する小説家のジャック・ケルアックの出生地でもあり、彼の記念館といった市内の他の観光施設との連携をこの歩道は図るようにしている。これによって、この博物館的施設が、施設内を観光するだけでなく、施設外にも観光客を回遊させ、町の活性化に繋がっている。
 ローウェル・ナショナル・ヒストリカル・パークは、歴史保全をし、なおかつそれを博物館として展示し、解説するという機能を持つ都市公園としては全米初のものである。それは、産業遺産という工業都市の歴史遺産を価値へと転換させる新しい制度として、多くの知見と示唆に溢れた試みであると捉えられる。

キーワード:

産業遺産,ウォーターフロント,アクセス,アイデンティティ,歴史保全,都市観光

ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パークの基本情報:

  • 国/地域:アメリカ合衆国
  • 州/県:マサチューセッツ州
  • 市町村:ローウェル市
  • 事業主体:国立公園サービス
  • 事業主体の分類:
  • デザイナー、プランナー:Gordon Marker
  • 開業年:1978

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 アメリカの制度として参考にすべきものは多々あると思われるが、個人的に最も感心しているものの一つとして、国立公園制度がある。この国立公園制度はアメリカの素晴らしいランドスケープを保全すること、特に自然景観が特筆すべきところにおいて適用されてきたが、ここローウェルにおいては、都市部しかも工場跡地において同制度を適用した。アメリカという国の制度を応用する柔軟性と創造性を理解させてくれる、素晴らしい「都市の鍼治療」事例であると思われる。
 また、この事例で感銘を覚えるのは、国立公園制度という仕組みを使おうと考えたこともそうだが、違う組織でそれぞれが考えていたアイデアを協働することで、一つの大きな事業へと昇華させた点である。それぞれが違う目的を持っていたが、大きな目的であるローウェルを活性化させるという点で一致していたことで、お互いが大同団結したことで、ローウェル・ナショナル・ヒストリカル・パークは実現された。総論賛成各論反対といった足の引っ張り合いで、多くのプロジェクトが日の目を見られない場合が多いが、本事例は小異には目をつぶり、大きな目的のもと、関係者が一致団結した。都市の展示といった仕掛けとして、極めて優れているだけでなく、それを具体化させるうえでのプロセスにおいて、多くの知見を与えてくれる傑出した事例である。

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