201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID(アメリカ合衆国)

201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID

201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID
201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID
201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID

201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID
201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID
201 ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBID

ストーリー:

 ニューヨークのマンハッタンにあるユニオン・スクエアはブロードウェイとフォース・アヴェニューの交差点に19世紀前半につくられた公共空間である。西にチェルシー、南西にグリニッチ・ヴィレッジ、南東にイーストビレッジがあり、ニューヨーク州立大学も隣接しているなど、まさにニューヨークのクリエイティブな地区の核のような場所に位置している。また、地下鉄のユニオン・スクエア-14番街駅のホームがこの下にあり、昼夜を問わず、多くの人がそこを行き交う。つくられて以来、人々が集う場所としての役割を担っており、最初のレイバー・デイを開催した場所として1997年に国の歴史的ランドマークとして指定されている。
 このスクエアはニューヨーク市の公園・レクリエーション局の管轄下にあるが、実際の管理・運営はユニオン・スクエア・パートナーシップという、同地区のコミュニティの非営利団体であるBID(ビジネス・インプルーブ・ディストリクト)によって遂行されている。
 同パートナーシップは、このユニオン・スクエア周辺で生活、仕事をしていた人達が、1970年代頃に個人ベースで組織を結成したことから始まる。当時のユニオン・スクエアは非常に悲惨な状況にあった。犯罪率は史上最悪の数字を示していたし、衛生状況も悪かった。そのような中、住民、ビジネス・オーナーが、自発的に公園の清掃を始め、また警備もし始めた。そのうち、正式な組織を設立した方がいいと考えることになり、1984年にニューヨーク市初のBID組織をつくった。それが、ユニオン・スクエア・パートナーシップである。
 同パートナーシップは公園を管理するスタッフを雇用し、また、警備員も雇用し、治安の維持を図ることにした。さらにイベントや広報活動などを展開し、加えて、周辺の中小店舗を対象としたビジネス・サービスを提供することにした。ユニオン・スクエアでの無料Wi-Fiサービスなども提供している。同パートナーシップが開催する最大のイベントはファーマーズ・マーケットで、週日に3回と土曜日にユニオン・スクエアで開催されている。このマーケットに出店するには、扱う商品がニューヨーク市の周辺で生産されていることが条件となっている。これは、地元の農家を支援したいと考えているからである。ユニオン・スクエア・パートナーシップの推計では、土曜日には12万ほどの人が同マーケットを訪れている。上記の活動以外にも、子供達のためのプレイグランドを整備したり、テーブルや椅子を設置して、ここで食事をしたり休憩できる機会を提供している。
 このような積み重ねが功を奏し、今では多くの人がこの広場を訪れ、利用するようになっている。40年前は、ニューヨークでも誰も足を踏み入れたくないような場所が、それを管理運営する組織を設立したことで大きく様変わりしたのである。

キーワード:

BID, エリア・マネジメント, ファーマーズ・マーケット

ユニオン・スクエア(ニューヨーク)とBIDの基本情報:

  • 国/地域:アメリカ合衆国
  • 州/県:ニューヨーク州
  • 市町村:ニューヨーク市
  • 事業主体:ユニオン・スクエア・パートナーシップ
  • 事業主体の分類:準公共団体 NGO
  • デザイナー、プランナー:Frederick Law Olmsted, Calvert Vaux, その他
  • 開業年:1831
  • 再開業年:1984

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ニューヨーク市は、1970年代に財政破綻の間際まで追い詰められる。財政破綻は連邦政府からの支援によってどうにか免れるが、それによって公共サービス事業は大いに削減される。その結果、公共空間の維持管理なども放棄に近いような状況になり、このユニオン・スクエアやブライアント・パーク(ファイルNo.176)などでは麻薬の取引が行われ、夜は市民がほとんど訪れないような状況に陥った。
 このような悲惨な状況を改善するために、住民達が立ち上がって自分達で管理をする組織を設立する。それが、ここで紹介したユニオン・スクエア・パートナーシップで、そのような組織形態はBIDと命名された。BIDとはビジネス・インプルーブメント・ディストリクト(Business Improvement District)の略で、ある一定の地区を指定して、その地区内の不動産所有者(地主)等から課徴金を徴収し、その資金をもとにエリア・マネジメントの活動を展開する制度である。同パートナーシップはニューヨーク市だけでなく、ニューヨーク州で最初のBIDであり、その後に多くつくられる数多のBIDの先駆けとなる。参考までにBIDは勝手には設立できず、ニューヨーク市の承認が必要となる(条例が新たに設けられることが必要である)。現在、ニューヨーク市内には70ぐらいのBIDが存在する。ユニオン・スクエア・パートナーシップは三分の二を課徴金、残りは寄附やイベントでの収入などで活動資金を得て、年間およそ200万ドルの予算規模で活動している。
 公共空間の管理を行政がするか、民間がするか、というのは極めて難しいテーマである。ニューヨークは、その極めて競争力のある経済力のため、そして一方では行政の財政が崩壊ということもあり、民間で公共空間を管理することで高い効果が得られた。それは、周辺の不動産所有者にとっても、課徴金を上回る便益であった。
 ただし、BIDというアプローチは、都市の魅力を向上するという観点からは大きな成果が得られる一方で、不動産価格を上昇させ、富裕層を呼び込み、そうではない層を追い出すジェントリフィケーションを促進させるという批判もある。これらの問題点を鋭く浮き彫りにしたのが、巨匠フレデリック・ワイズマン監督が製作したドキュメンタリー映画『ジャクソンハイツへようこそ』(2015年製作)である。ジャクソンハイツはニューヨーク市のネイバーフッドであり、映画ではBIDの設立計画をめぐる市民・行政・開発業者・地主等のせめぎ合いが描写されている。行政が重要視する「公平性」という観点がどうしても民間だと抜け落ちやすくなるからだ。
 ユニオン・スクエア・パートナーシップができるユニオン・スクエアのビフォア・アフターを比較すれば、ビフォアの方がよかったというニューヨーク市民は皆無に近いであろう。その功績は、議論を俟たない。特にファーマーズ・マーケットをしっかりと人気イベントとして継続させたことは高く評価できる。しかし、その成功ゆえに副作用も生じている。その点を意識しながら鍼を射定める必要のある「都市の鍼治療」ではないかと考えられる。
 
【参考資料】
ユニオン・スクエア・パートナーシップのHP
https://www.unionsquarenyc.org

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