216 いわき震災伝承みらい館(日本)

216 いわき震災伝承みらい館

216 いわき震災伝承みらい館
216 いわき震災伝承みらい館
216 いわき震災伝承みらい館

216 いわき震災伝承みらい館
216 いわき震災伝承みらい館
216 いわき震災伝承みらい館

ストーリー:

 2020年5月30日にいわき市豊間にいわき震災伝承未来館が開館した。それは、地震、津波に加えて、原発事故が重なるという未曾有の複合災害に襲われたいわき市の震災経験を、しっかりと次代に継承することで、震災の記憶や教訓を風化させず、危機意識や防災意識の醸成等を図ることを目的とした「いわき市震災メモリアル事業」の中核拠点施設である。そして、そのために「記憶の記録化」、「記録の記憶化」という役割を担っている。
 その事業は「収集・保存」、「学習・継承」、「交流・連携」、「情報発信」、「追悼・鎮魂」の5つに分類される。これらの事業を通じて、震災関連資料の収集と保存、そして展示を通じて可視化し、震災の記憶や教訓を後世に伝承させ、さらに市内各地の復興まちづくりを支援し、復興のあゆみを広く市内外と共有することを推進している。施設内では、いわき市の被災状況のパネル展示、津波映像の放映、さらに「震災語り部」による定期講話などが行われている。
 「震災語り部」は、語り部が震災で体験した内容やそれへの思いを講話するというもので、これによって我々の記憶が新たにされ、災害への風化を防ぐ役割を担っている。震災の被害者の当事者と直に接触できるこの試みは、災害をより深く理解するためにも極めて効果的であると捉えられる。
 伝承未来館は、また地震・津波だけでなく福島第一原子力発電所の事故の実態と、それによってどのような被害が生じたかもしっかりと展示をしており、その被害が未だ現在進行形であることを伝えることで、当地が現在も抱えている課題にどのように取り組むかを考える場になっている。
 本施設は津波で被災した豊間中学校の敷地跡地につくられている。この中学校は震災遺構として保存するかどうかが議論されたが、地域コミュニティでの話し合いを踏まえて、それを取り壊し、ここに本施設をつくることにした。展示品として、豊間中学校にあった「奇跡のピアノ」や、教室に残された黒板などがあり、同中学校の記憶も継承する役割をここは果たしている。
 いわき市は今後、ここを核とした被災各地の震災関連施設と連携した事業展開を予定している。

キーワード:

記憶装置,博物館,資料室

いわき震災伝承みらい館の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:福島県
  • 市町村:いわき市
  • 事業主体:いわき市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:本間建築設計事務所
  • 開業年:2020

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 天災にしろ人災にしろ、災害の記憶を次代に継承するための装置・システムは、その都市・地域が災害をもたらした傷痕を乗り越え、未来を見据え、それを切り拓くことを後押しするうえで貴重な役割を担う。
 そして、そのためには、そのような施設は正確に過去の災害の事実を記録し、分かりやすく展示することが何より重要である。何より慎まなくてはならないのは、事実をねじ曲げて、ある特定の組織が利するような展示をしてしまうことである。そのような事実の歪曲は、その都市・地域の人達は惑わすことができるかもしれないが、早晩、地元の人達の支持を失う。
 逆にしっかりとした事実を記録し、展示することは、その地域の人達に辛い過去をそこに置いて、将来を見据える勇気を与えてくれる。それは、地域の辛い過去を浄化するような効果をもたらすと同時に、コミュニティが共有することを強いられた悲劇を地域再生のためのネットワークを強化させる体験へと昇華させることも可能とする。
 そして、そのための施設は立派なものである必要はない。いや、等身大ではないような立派なものにしてしまうことは、むしろ逆効果である。重要なことは、地元住民に寄り添うような施設であることと、親しみを持ってもらい、何より信頼されることである。
 そのような点で、この「いわき震災伝承みらい館」は素晴らしい施設であると思う。「震災語り部」の語りを聞く機会があったが、しっかりと自分が体験したことを、ストレートに語るその話は説得力に溢れていた。類似施設では、同様の語り部にしゃべってはいけないテーマなどの指示が出されているところもあることを考えると、本施設の震災に向き合う姿勢の誠実さを伺うことができる。

【参考資料】いわき市震災伝承みらい館のホームページ
https://memorial-iwaki.com

類似事例:

033 ジェノサイド・メモリアル
114 ホロコースト記念碑
152 森の墓地(スコーグシュルコゴーデン)
・せんだい3.11メモリアル交流館、仙台市(宮城県)
・東京電力廃炉資料館、富岡町(福島県)
・人と未来防災センター、神戸市(兵庫県)
・ベトナム・ワー・メモリアル、ワシントンDC(アメリカ合衆国)
・殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑、ベルリン市(ドイツ)
・アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所、(オシフィエンチム市、ポーランド)