064 ライネフェルデのお花畑(ドイツ連邦共和国)

064 ライネフェルデのお花畑

064 ライネフェルデのお花畑
064 ライネフェルデのお花畑
064 ライネフェルデのお花畑

064 ライネフェルデのお花畑
064 ライネフェルデのお花畑
064 ライネフェルデのお花畑

ストーリー:

 ライネフェルデは旧東ドイツのチューリンゲン州にある人口1万6千人ぐらいの市である。ここは、小さな村であったが、1959年に旧東ドイツ政府が策定した計画によって大規模な繊維工業が設置される。それと同時に、村の南部にライネフェルデ団地が建設され、住宅が供給され、新たに13000人の人口が加わった。この団地には町の住居の90%に相当する5600戸が立地した。
 しかし、ドイツ再統一後、ライネフェルデの状況は激変する。再統一後、ライネフェルデの工場は市場経済の中での競争に打ち勝つことはできず、閉鎖されそれに伴い多くの住民が流出した。4000人ほどあった繊維産業関連の雇用は250人まで激減する。ほとんど一夜にして繊維産業関連の仕事はなくなったのである。1994年には失業率は25%にまで上昇し、仕事を求めて多くの人々が町を去っていった。1990年からの5年間では25%以上人口が減少している。
 このような人口減少に対応するために、ライネフェルデは団地を撤去・減築するという大胆な政策に出る。結果、1764戸数を撤去し、2579戸数を改修した。その結果、空き家率は10%から3.5%へと減少することになり、これら団地を所有する住宅公社の経営状況は随分と改善されたのだが、問題は住民達である。
 自分達が住んでいた建物、もしくは自分達の知り合い住んでいた建物が撤去され、そこが空き地へと変容してしまうのは記憶が消去されていくような空虚感を覚える。そこで、ラインハルト市長は2013年から建物があった場所に花を植えるようにした。団地が撤去された後に広がる芝生の中、長方形の形の広大なお花畑はそこに人々が暮らしていた団地が存在した記憶を朧気ながらも次代へと継承する役割を担っている。その管理は、市役所が行っている。
 このお花畑をある住民は、チューリンゲン州の蜂保全協会に教えたら、「蜂の保全に貢献するプロジェクト」として表彰を受けたそうである。これは、市長も表彰直前まで知らず、思いがけない受賞となったそうだ。

キーワード:

住宅撤去,記憶装置,ランドスケープ,縮小都市

ライネフェルデのお花畑の基本情報:

  • 国/地域:ドイツ連邦共和国
  • 州/県:チューリンゲン州
  • 市町村:ライネフェルデ市
  • 事業主体:ライネフェルデ市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Gerd Reinhardt
  • 開業年:2013年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 旧東ドイツの都市の多くは、ドイツ再統一後、相当規模の人口を失った。そして、旧東ドイツ時代につくられたパネル工法の住宅団地の空き家率は非常に高いものとなった。これは、ライネフェルデにおいても同様である。その空き家率は50%になると予測された。
 そのような予測に基づき、ライネフェルデは旧東ドイツ時代でも先陣を切って、パネル工法の住宅団地の撤去・減築を実施することになった。これは、赤字経営に悩まされていた住宅会社を支援するという側面が強かったが、一方で、空き家率が高くなった団地の荒廃、社会インフラの維持管理費(一定以上の空き家率になると下水道管理費は急に高騰する)が高コストになることを避ける側面もあった。
 ライネフェルデは「選択と集中」を徹底し、撤去・減築のアイデアを2000年のハノーヴァー万博で募るなど、その方面でのパイオニアとして世界的にも注目された。そして、結果として空き家率は減少し、中規模の企業が幾つか、立地し始め、人口減少も留まっている。最後の団地撤去は2008年で、それ以降は減築・撤去は行っていない。ライネフェルデの市役所の広報担当のヴィンクラー氏は「今では普通の町です」と言う。
 しかし、団地撤去によって生じた空き地は、どこか寂しさが伴う。何より、旧東ドイツ時代の産業都市としての繁栄の象徴であったパネル工法の団地の記憶が喪失されるのは悲しい。そういう考えから、ラインハルト市長自らが指示をして、団地の敷地を花畑にすることにしたのである。なかなか、雑草が生えたりして、イメージ通りの花畑にならないところもあるが、「お金がなくても情がある」施策であり、このトップの優しさが、無慈悲的な側面の強い撤去・減築という施策を遂行させ、成功させた要因の一つであるのかなと考えさせられる。こういうちょっとした優しさ、情の厚さが、都市をよくしていくのであろう。ライネフェルデ市民は、ライネフェルデに誇りを抱いている人が多いとヴィンクラー氏は取材にて述べていた。

類似事例:

018 ダイアナ・メモリアル・ファウンテン
033 ジェノサイド・メモリアル
086 セオドア・シュトローム通りの減築プロジェクト
213 シラー・パーク
・ 原爆ドーム、広島市(広島県)
・ ベトナム・ワー・メモリアル、ワシントンDC(アメリカ合衆国)
・ ホロコースト記念碑、ベルリン市(ドイツ)
・ 平和の鐘公園、クルチバーノ(サンタカタリナ州、ブラジル)