2009年05月 アーカイブ

銀座らしい街並みのために 全編

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銀座らしい街並みのために 竹沢えり子氏インタビュー(1)

 今年度の東京生活ジャーナルでは、「まちづくりフィールドレポート」と題し、まちづくりの一線に立っている人々へのインタビューを通して、現代の都市が抱える問題点や今後のあるべき姿についてレポートしていきます。
 今月と来月は、銀座にふさわしい景観や建物デザインの指針となる考え方をまとめた「銀座デザインルール」を取り上げます。現在、銀座地区に新築される建物や屋外広告などの工作物については、そのデザインや色が銀座らしさを損ねないか、このルールに基づいて事前に地元協議会と協議されることになっています。今月は、デザインルールの策定に深く関わられた「銀座街づくり会議」の竹沢えり子氏にルール策定に至るまでの経緯や街の状況についてお話を伺いました。街にふさわしい景観を作っていくためには、どのように考え、街の人々が何をしなければならないのか、その知見が語られています。

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銀座らしい街並みのために 竹沢えり子氏インタビュー(2)

― 銀座デザインルール(以下、デザインルール)作成までの経緯を教えてください。

◇「銀座デザイン協議会」というしくみづくり
 銀座街づくり会議をつくって、地区計画を改正しようという協議をしている間に、高さや容積率は問題ないけれど、このデザインはちょっと銀座にはふさわしくないんじゃないか...という案件がいくつか出てきてしまったんです。ですが、法律的には問題ないので、何の規制も出来ないわけです。仕方がないので、事業者や建築家の方をお呼びして、何度か議論したんですね。こういった経験があって、地区計画だけでは銀座らしい建物は建たないという結論に達したんです。思いを共有してくださった中央区も、何とか地区計画だけでない仕組みを作らなければいけない、ということで、デザイン協議会のしくみを中央区の方から提案されました。そして、地区計画改正とともにデザイン協議会制度を要綱に規定したんです。

◇行政との連動、信頼関係
 区の要綱では中央区の制度としてデザイン協議会を位置づけ、区がある団体を認定するという形をとっています。第一号として銀座が、中央区長から認定を受けてやっている、ということです。
このような協議会ができたというのは、98年の地区計画策定時にさんざん話し合って、行政と銀座の間で信頼関係ができていたからと思います。


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銀座デザインルールに見る誇りと新陳代謝

編集局 川上正倫


■「らしさ」は次世代へのはじまりである/デザインの新陳代謝
 銀座デザインルールで述べられている「銀座らしい」街とはどういうことなのかを考えながら、銀座を歩いてみた。その中で実感したことは、「らしさ」を柔軟に捉えることの重要性である。竹沢氏がおっしゃる「ビルを建設するということは、銀座の街に入っていくきっかけ」という当たり前ながら忘れがちなことが、建築デザインにとって非常に重要なテーマであるように思われた。

 建築デザインは、既存の街に対してそのあるべき姿を示すという意味があるが、それ故に、どうしても建物の竣工時がゴールであると錯覚してしまう。しかし、その建物はその後も何十年と残っていくわけであり、その間に周囲が建て変わっていく可能性もある。変化する周囲の中では、竣工した時点からそのデザインは老化していくことになる。下手をすると長い工期の内に、完成を待たずに賞味期限が切れる可能性だってある。無秩序な状況下では建築デザインは儚いものであり、一体何を世に発信しているのか担保できない。その状況を調停するのが「らしさ」をめぐる議論ではないかと感じた。

 建築主にとっては「らしさ」を表現した建物の提案こそが、これから銀座の街に参加していくための所信表明なるものであり、建築デザインはその表現として継続的に街に貢献する重要な役割を与えられる。通常の街において「らしさ」を追求しようとすると、クライアントの趣向や経済的な事情から実現されないことも多い。そういう意味で、銀座デザインルールにおいて「らしさ」を要求されるということは、建築と街並みが結びつく非常に重要な接点となる。「らしさ」としてデザインの意味を説明する必要があるのならば、その議論の中でデザインに対する思考は活性化されるはずなのである。

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銀座ルールから高さ制限のあり方を考える

編集局 大澤昭彦


■街路幅員に応じた高さ規制
 銀座ルール(地区計画)のポイントは、街路幅員に応じて建物高さを規定していることにある(表1参照)。

表1 銀座ルールによる高さ制限
osawatable1.jpg

 「広い道には高い建物を、狭い道には低い建物を」と言えるこの考え方は、ヒューマンスケールな街路景観を形成するという観点から、非常に理にかなったものと思われる。銀座では、明治5年の銀座大火の後に策定された「銀座煉瓦街計画」において既に、そのような考えに基づいた規定が設けられ、高さの揃った統一的な街並みの形成が意図されていた(表2参照)。いわば、明治期に「銀座ルール」は存在していたのである。

表2 銀座煉瓦街計画における高さ制限
osawa-table2.jpg

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銀座4丁目交差点の広告ビジョン

竹沢えり子氏のインタビューでも触れられている銀座の広告ビジョンについて、編集局の添田と川上が動画でレポートします。

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銀座デザインルールとは?

編集局作成

 銀座デザイン協議会において、主に新築建物と工作物のデザインのチェックを行う上での判断基準を取りまとめたもの。銀座の人たちがめざそうとする「銀座らしさ」を、事業者と共有するためのツールである。

◇行政との連動、地元主導のまちづくり
 銀座街づくり会議では、2005年より、中央区とともに、地区計画「銀座ルール」(1998年制定)の見直しを開始し、数値で決められないデザインや色については、事業者と地元が事前協議する仕組みをつくった。2006年11月以降、銀座では中央区市街地開発事業要綱に基づき、区が事業者と開発案について協議する前に、新築または改築される建築物、および、屋上工作物等(敷地面積100㎡以上、および確認申請を行う工作物)については銀座デザイン協議会に届出が必要となった。

◇あえて定量化しない基準
銀座デザイン協議会では、届出された建築物または工作物が「銀座らしさ」を損うと判断した場合には、事業者に意見を述べ、デザインの変更を求めることもあったが、その判断基準となる「銀座らしさ」とは何かが問題となっていた。高さや容積率など、数値で決められているものもあるが、色や形、デザインの質を予め文章や数値で決めてしまうことは難しく、銀座らしさを定義することは容易ではない。また、安易に文章化や数値化すると、銀座らしさの大切な要素である先進性を自ら規制することにもなりかねない。
そこで、銀座街づくり会議では、これまでのまちづくりの経緯や銀座を考えるためのキーコンセプトや通りや地区の特徴と課題を明らかにし、銀座らしさについては、事業者の方が銀座らしい建物をつくるためのヒント、あるいは協議する上での判断基準を提案した「銀座デザインルール」という冊子を作った。その目的は、年月をかけて徐々に築かれてきた銀座のまち並みを尊重し、まち全体の空間の質の向上をめざそうとすることにある。

◇新陳代謝するルール
 このルールは、銀座のまちの姿がなだらかに継承されることに主眼を置くと同時に、創造的なデザインによってまちが変容していくことも大切であると考えてつくられている。したがって、決めごとは最小限に留め、いわゆるデザインガイドラインとして期待されるような禁止事項や、色の規定、看板の大きさ規定などは記載されていない。つまり、ルールそのものは完成形ではなく、様々な意見、具体的な協議の経験を踏まえて更新し、成熟させていくものと考えられているものである。

design_rule.jpg


<参考文献>
銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会「銀座デザインルール ver.1」、全銀座会・銀座通連合会、2008年2月
銀座都市計画会議(銀座通連合会・文化科学高等研究院)「銀座まちづくりヴィジョン」、銀座通連合会、1999年11月
銀座街づくり会議「NEWS LETER」No.50、2008年3月
竹沢えり子「決めないことを決めた銀座デザインルール」、『季刊まちづくり』19号、2008年6月
竹沢えり子「「銀座らしさ」の継承と創造:銀座デザイン協議会が提起するもの」、『日本不動産学会誌』第22巻第3号、2008年12月