041 エクスヒビション・ロード(イングランド)

041 エクスヒビション・ロード

041 エクスヒビション・ロード
041 エクスヒビション・ロード
041 エクスヒビション・ロード

041 エクスヒビション・ロード
041 エクスヒビション・ロード
041 エクスヒビション・ロード

ストーリー:

 エクスヒビション・ロード。それは、日本語に訳せば「展示道」とでもなろうか。ロンドンはハイド・パークの南から、サウス・ケンジントンにある800メートルに及ぶ道路は、沿道に18の文化施設を擁する。ヴィクトリア&アルバート博物館、科学博物館、自然博物館、ロイヤル・アルバート・ホール、王立公園、インペリアル・カレッジなどである。
 道路の名前は、1851年のロンドン万博(グレート・エクスヒビション)に由来している。このロンドン万博は、エクスヒビション・ロードの北にあるハイド・パークにて開催され、この時、この道路も整備されたのである。万博という大規模なイベント開催時に整備されたということもあり、この道路は広幅員で、またひたすら真っ直ぐな直線で敷かれた。それはイベント時という「ハレ」においては、それほど違和感を覚えないが、「ケ」の状態では、何か浮いているような、しっくりしない印象をロンドン市民に与えていた。
 この状態を改善させようとする動きは1994年頃から起き始めるのだが、なかなか具体化することはなかった。しかし、2003年に、ケンジントン・チェルシー区が主催するエクスヒビション・ロードのデザイン・コンペが当時の区長であるダニエル・モイラン市(その後、ロンドン市の交通局長)によって実施される。このコンペを実施するうえでは、ロンドン市長の顧問であったイギリスを代表する建築家であるリチャード・ロジャースの支持もあった。このコンペにはザハ・ハディッド、デービッド・チッパーフィールドといった錚々たるメンツも参加するが、優勝したのは、ディクソン・ジョーンズの建築事務所であった。彼らはそれまでの車道部分を大幅に削減し、歩道を拡張し、また自動車の走行速度を低下させるための工夫を施し、そのうえで歩行者、自転車利用者、自動車が縁石やバリアなくして、同じ空間を共有するという、すなわち「シェアド・スペース(Shared Space)」の案を提示した。
 このデザインは2012年、ロンドン・オリンピックが開催される直前に完成した。

キーワード:

ブラウンフィールド,市民参加,都市公園,パブリック・アート

エクスヒビション・ロードの基本情報:

  • 国/地域:イングランド
  • 州/県:ロンドン
  • 市町村:ケンジントン・チェルシー区
  • 事業主体:ロンドン市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Dixon and Jones
  • 開業年:2010

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 エクスヒビション・ロードをリデザインする際の意図は、その沿道にある博物館等を訪れる年間1100万人にもおよぶ観光客が快適に歩行できるようにすることである。このリデザインのコンセプトが提示されてから18年間、そして2920万ポンドの費用がかかった。そういう観点からすると、「都市の鍼治療」というには、大規模過ぎるかもしれない。
 しかし、「シェアド・スペース」という頓知の効いたアイデアを実施したという点で、「都市の鍼治療」的であると考えられる。特に、歩行者と自動車に同じ空間を共有させるというのは、なかなか英断を要するアイデアだ。しかし、それは自動車の運転手は、ガードレールや縁石がなければ、より人を轢かないように注意して運転するだろうという、人への信頼をもとに実施され、そして成功した。そして、道路は菱形のデザインの舗装がされ、お洒落な電灯に置き換えられた。それは、道路という単調な平面を分割させ、より親密性を増すような効果をもたらしていると同時に、道路の個性を演出させることに成功している。
 このリデザインが実施されてから、沿道のカフェやビアガーデンは従来にも増して客が増え、もちろん、歩行者数も増えている。エクスヒビション・ロードは、昔のように沿道の目的地に行くために通行する場所ではなく、その空間自体を楽しむ場所へと大きく変容したのである。
 このアイデアを提案した建築家のディクソン・ジョーンズは王立オペラ・ハウスやナショナル・ギャラリーなど威風堂々とした建築を手がけたことがあり、そういう意味では、このエクスヒビション・ロードをしっかりと周辺の記念碑的な建築に負けないような存在感を演出させることに長けていた。そのアイデアは、イギリスの都市デザイナーであるゴードン・クレンの影響を強く受けていると指摘されている。イギリスの都市デザインのいい面が結集してつくられた素晴らしい公共空間であると思われる。

類似事例:

011 ライン・プロムナード
022 パール・ストリート
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