036 バナンナ・パーク(デンマーク王国)

ブラウンフィールド 市民参加 都市公園 児童公園

バナンナ・パークは5000㎡の運動公園で、運動場、巨大なバナナの形状をした盛り土、芝生、ちょっとした森、クライビング用の壁などが設置されている。都心から西部にあるノアブロ地区の土壌汚染された工場跡地につくられた。バナンナ・パークの地主は、そこを住宅として開発しようと考えていた開発業者に売り渡そうとしていたのを、市役所が干渉して、代わりに市が購入して、この地区周辺に不足していた緑地、そして公共空間を提供するようにした。

バナンナ・パークの基本情報

国/地域
デンマーク王国
州/県
デンマーク首都地域
市町村
コペンハーゲン市ノアブロ地区
事業主体
コペンハーゲン市
事業主体の分類
自治体 
デザイナー、プランナー
Nord Arkitekter, Schønherr Landskab
開業年
2010

ストーリー

 バナンナ・パークは5000㎡の運動公園で、運動場、巨大なバナナの形状をした盛り土、芝生、ちょっとした森、クライビング用の壁などが設置されている。コペンハーゲン市は、都心から西部にあるノアブロ地区の土壌汚染された工場跡地につくられた。ノアブロ地区はコペンハーゲンで最も人口密度が高く、緑地が少ないところである。バナンナ・パークの地主は、そこを住宅として開発しようと考えていた開発業者に売り渡そうとしていたのを、市役所が干渉して、代わりに市が購入して、この地区周辺に不足していた緑地、そして公共空間を提供するようにした。
 この公園はコペンハーゲンを拠点とするノード・アーキテクチャーが手がけ、ノード・アーキテクチャーが得意とする隣接した小学校の児童や近所のティーネイジャーをも含めた市民参加によって、そのデザインが決められていった。そして、小学生が市長に開発計画のアイデアをプレゼンした。
 その結果、この工場跡地は、魅力的な公園・運動場へと変貌することに成功したのである。
 公園は大きく3つのゾーンからなる。ジャングル、芝生、そして広場である。ジャングルはそこに既にあった木々に、ちょっとジャングルらしさを演出するために植えた竹からなる森のような空間である。
 芝生は主に、遊び場・運動場として使われる。大きなバナナの盛り土が西側に位置しており、そこでは芝生でのサッカーの試合などを座って観察することができる。
 そして、広場の入り口に当たる場所には14メートルの高さもある巨大な壁と門がある。この壁と門はクライビングができるようになっており、週末や週日でも午後になると多くのクライマーが集まってくる。
 ノアブロ地区は、以前は暴動などが起き、荒廃したような地区であった。バナンナ公園は、この地区に緑と遊び場を有する貴重な公共空間を提供すると同時に、この地区への人々の愛着をもたらすような効果をうみだすことも期待されている。

地図

都市の鍼治療としてのポイント

 バナンナ・パークは長い間、土壌が汚染されていたにも関わらず、50センチほど土を乗っけた応急措置を施し、近くの小学校が運動場や校庭の代わりとして使用していた。したがって、ここが住宅地として開発されることが判明した際、学校や児童の親などを中心し、この開発に反対する2300の署名を集めた。それを受けて、コペンハーゲン市はその土地を購入し、そこを住民が必要とするコミュニティ公園にすることにしたのである。
 2010年からこの公園は開園したが、開園初日からそこには「都市らしさ」に溢れていたとノード・アーキテクチャーの建築家は言う。住民が欲していたものが、形になったので、ほとんどの人がこの公園に満足しているそうだ。.
 バナンナ・パークという名称は、その前の道路がナンナス通りであることに由来している。子供達はその道をナンナバナンナと言っていたので、そこからバナンナという名前を取った。しかし、バナンナと言ってもバナナがないので、公園に巨大なバナナの形をした盛り土をこしらえた。ここらへんが、設計したノード・アーキテクチャーの愉快なところであり、住民が愛着を持つような公共空間をつくることに成功している鍵なのではないだろうか。
 ここには石油精製所が立地していたので、人々は、以前はここを「汚染された場所」と呼んでいた。公園にするにあたっては、汚染された土壌は撤去され、それが、今では楽しい響きを持つ「バナンナ公園」となったのである。ちょっといい話である。
 この公園は、そのつくられたストーリーが広く人々の関心を惹いたこともあり、デンマーク・サッカー協会からの寄付や、ローカル・アーティストが無料で絵や壁画を描いたりしてくれたり、地元のクライマー・クラブが巨大な壁を寄付したりしてくれている。
 1ヘクタールにも満たない小さな公園ではあるが、この公園が周辺へもたらす効果は大きなものがある。緑や遊び場を提供し、ノアブロ地区に住む人々の愛着を高めただけでなく、広く周辺の人々にまでノアブロ地区に関心をもたらせ、さらには応援させようという気持ちを持たせたことの効果は絶大だ。素晴らしいコペンハーゲンの鍼治療事例であると思われる。
(取材協力:ヨハネス・ペダーセン、ノード・アーキテクチャー)

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