まちの価値を維持していくこと 幕張ベイタウンの概要

 幕張メッセや千葉マリンスタジアムなどで広く知られる幕張新都心は、千葉県企業庁によって千葉市西部の臨海埋立地に開発された都市です。東京都心と成田空港のほぼ中間に位置し、各々へ30分という優れた立地条件を有しています。

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幕張ベイタウンの位置(編集局作成)

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幕張ベイタウン最寄駅のJR海浜幕張駅前

 幕張ベイタウンは、面積84ha、計画人口26,000人、計画戸数9,400の幕張新都心の一角を占める住宅地です。欧風のまち並みや電柱のない街路など景観を意識して開発され、洗練されたデザインで人気を集めている集合住宅群です。平成7年に入居が開始されてから、住宅供給に合わせて3小学校、1中学校、公園等が整備されているほか、商店、診療所、銀行、ガソリンスタンドなど約100店舗が開業しています。30~40代の住民が多く、子育て世代が多く住むまちとなっています。

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幕張ベイタウン内の様子

幕張ベイタウンの住宅地開発には、次のような特徴があげられます。

◇沿道中庭型住宅 
 幕張新都心は、「職・住・学・遊」の複合機能を備えた国際業務都市として整備を進めており、幕張ベイタウンも、国際的な水準の住宅地をつくることを目標としていました。従来の郊外開発の住宅団地では、住宅をなるべく道から遠ざけているのが大きな特徴でした。これは、広大な敷地の内側に閑静な住宅地をつくる田園都市型のニュータウン思想に基づいて計画されていたためです。しかし、幕張ベイタウンの構想にあたり、新しい都市型居住として、街路が、生活やコミュニティを形成していくうえで、非常に大事なスペースではないかという議論が出てきました。その結果、街の中を縦横に道路が走り、連続する街区型住棟によるまち並みが形成されました。こうして、各住棟には中庭があり、外側は道路に面するという「沿道中庭型住宅」という計画が生まれたのです。

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沿道中庭型の街区による街並み

◇計画デザイン調整
 幕張ベイタウンの住宅地開発は、千葉県企業庁の計画のもと、住宅都市整備公団(当時)、千葉県住宅供給公社、大手民間不動産開発企業体6社、計8住宅事業者が参画した官民パートナーシップ事業でした。ここでは、沿道中庭型住宅が住宅地計画の中心となり、千葉県企業庁はマスタープランで、その導入を決めました。住宅建築については、住宅事業者が個別に実施することから、マスタープランでは不十分のため、幕張新都心住宅地都市デザインガイドライン(以下、デザインガイドライン)で設計指針がきめ細やかに定められました。このデザインガイドラインをともなって官民共同の設計調整体制を造り上げたことが、このプロジェクトの大きな特徴でもあり、高く評価されています。

◇幕張方式
 長期にわたる事業開発を継続的に行うための工夫として、「幕張方式」といわれる独特の事業方式が生まれました。これは土地転貸借権付分譲方式のことで、事業主である千葉県企業庁が、土地を民間住宅事業者に貸し、それを居住者が土地を賃借、建物を分譲取得する独特の手法です。この方式を取り入れることにより、千葉県継続的にまちづくりに関わっていくことができます。一方、入居者にとっては購入時に土地代がかからない(購入後に賃料を払う)ため、購入価格が安くなる、という利点もあります。


参考文献:
 日本建築学会編, エコロジカルデザイン:幕張ベイタウン, 建築設計資料集成 地域・都市1(プロジェクト編), 2003, 丸善
 蓑原敬, 日本で質の良い住宅都市は生き残れるのか 14年経った幕張ベイタウンの今, 新建築84(9), 50-57, 2009-8, 新建築社
 渡辺定夫、大室康一、安藤茂延、座談会 コーポラティブ・プロジェクトとしての都市づくり-ベイタウンに学んだもの、幕張アーバニスト第9号、2003年、千葉県企業庁
 前田英寿、都市建築の実現に向けた設計調整の実践 -幕張ベイタウンの事例-、日本建築学会計画系論文集 第606号、p123-130、2006年8月
 前田英寿、基盤建築の連携化に向けた都市空間計画の策定と実現 -千葉県幕張ベイタウンのマスタープランと都市空間形成について-、日本都市計画学会都市計画論文集、No.41-2、p25-32、2006年10月