都市とイルミネーション

 今年も早や12月となった。この時期の街の風物詩と言えば、やはりイルミネーションだろう。ということで、今回は東京の各地のイルミネーションについて、その特徴を語ってみたいと思う。


■新旧商業地対決

 一昔前は、イルミネーションというと、大通りの街路樹に電飾を飾って、というのが定番だった気がするが、今では、それに留まらない様々な仕掛けが多く見られる。それらを牽引しているのが近年開発された商業施設達である。中でもすごいのが六本木の大規模再開発である東京ミッドタウンと六本木ヒルズだ。ミッドタウンでは、隣接する桧町公園を取り込んで大々的なイルミネーションが行われている。特に、公園の芝生に張り巡らされた電飾ネットはもはやイルミネーションの枠を超えたアートに近いものである。ヒルズでは午後5時の一斉点灯が話題を呼んでおり、それを目当てに観光客が押し寄せるほどの名物になっている。これらの施設はイルミネーションによって集客を図りたいという事業者側の強い思惑があるため、このような派手な演出の傾向は今後も続いていくだろう。
 これに対して、銀座や丸の内、横浜元町といった有名どころの通りは、よく言えば控え目で上品な、悪く言えば少し寂しい感じのイルミネーションになっていた。銀座などはそもそも日本のクリスマスイルミネーション発祥地とも言われているだけに、もう少し盛り上がっているのかとも思ったが、背後のブランドビルの、ファサード全面を使ったディスプレイに負けている感じがして、やや肩透かしだった。しかし、これは見方によっては集客をイルミネーションなどに頼らなくてもやっていける老舗の余裕と言えるのかもしれない。

■ストリートイルミネーションの意味
 渋谷の道玄坂は電飾に負けない背後のビルの賑やかさが特徴的だ。それにしても、イルミネーションなど必要ないくらいに煌々としたこのカオス状態の通りに、電飾が付加されるだけで何か一体感が生まれるように見えてしまうのは新鮮だった。
 最後に表参道。ここは1990年代には通りのシンボルであるケヤキを使ったイルミネーションを行い、イルミネーションといえば表参道といわれるぐらいの盛り上がりを見せた場所である。それが、あまりの混雑による近隣住民からの苦情などに配慮して中止され、一時形を変えて再開されたこともあったものの、今年は写真のような暗い姿になっていた。イルミネーションの有無でこんなにも通りの印象が変わるのかと驚かされると同時に、イルミネーションの意味、-果たして誰のための、何を伝えたいためのイベントなのか-について改めて考えさせられる場所であった。

■東京各地のイルミネーション達
 このように多種多様なイルミネーションが見られるのは、近年のLEDの普及により電飾の色が豊富になったという技術的な背景も大きい(ちなみに、今年の注目色は赤だそうだ)。

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新宿サザンテラス

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東京ミッドタウン

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六本木ヒルズ

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銀座

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丸の内

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横浜元町

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渋谷道玄坂

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表参道(表参道ヒルズの電飾ばかりが目立つ暗い通りになっている)

(添田昌志)