マンションか戸建かの問い

■マンションか戸建か
 マンションといえば土地が少ない都市や都市近郊の住まい方、という感覚はだんだんなくなってきているような気がする。なぜなら、いまどきは地方都市の郊外でも、下手すれば地方の小さな町の駅前でも、マンションが林立する時代だから。
 同時に、都心だって10数坪の土地に狭小住宅を建てることができる時代だ。そう考えると、マンションか戸建かという選択は、単なる「好み」の問題と言い切ってもよさそうだ。アパートについては、借家か持ち家かという話に組み込めそうなので、今回はマンションか戸建かの「好み」について考えてみよう。
 私自身の住歴は、0歳~12歳で地方都市郊外の100坪くらいある戸建、12歳~26歳は東京郊外(多摩地区だ)の3LDKマンション、その後は一人暮らしで27歳で都心の古い木造家屋の2階に下宿、次に都心の幹線道路脇の2DKマンション5階、東京郊外のおしゃれな町でテラスハウス(1階2階が使えて2DK)、今に至るまで住んでいる街・茅ヶ崎市の安普請のアパート、結婚して築80年の木造平屋、その後あたりまえの木造モルタルの戸建、そして7年前から現在の「レトロモダン」と感想を言われることもある2階建ての木造モルタルの戸建、という変遷だ。
 こうしてみると、まあ、いろいろな住まい方を経験してきているなあと思う。
 この変遷のどこかの時点で、「そのときどきの自分のライフスタイルや心身の状態にあった住まい方ができればいいや」と納得するようになった。あたりをつけるなら、4、5年前からだろうか。
 マンションのよさは、よく言われるように、セキュリティ面、家のメンテナンスのしやすさ、戸建のよさは「地面の上である」こと、地域とのつながりを感じやすいことなどがあるだろう。デメリットと考えられることについては、あえて書かない。

■「好み」は変わる
 私は自分の経験から、どの家も自分らしく住みこなせるし、どの家もよい点と困った点があると思っている。どの家に住んでも地域とつながれるし、便利に生きられるとも思う。住みこなせるか、困った点を笑って済ませられるかは、その時々の個別の状況に左右されるものであって、「私」という個人の動かしがたい個性や好みの問題ではないのではないかしら。
 要は、「私」の好みなんてけっこう変わるものだし、そもそも人の好みは意外に一貫性もないさまざまな面があるものだし、「マンションがいい」「戸建がいい」とか「マンションはおしゃれ」とか「戸建こそが暮らしだ」とか、「家は一生の買い物」とか「終の棲家」とか(何でもいいのだが)、決めてしまわないほうが、気持ちよく暮らせると思うのである。
  じゃあ、高層マンションと低層型のマンションでは?
 じつはここにこそ、都市居住の「好み」で済ませてはいけない問題があると思うのだが、それは次回に。

(辰巳 渚)