豊洲の価値をはかる(6)再開発がもたらすもの-2

埋立てであることの価値
 工業地域であった湾岸地帯を住居地域に変換する。ドーナツ化しつつある東京の住宅事情に対し、都心居住の可能性拡大は魅力的な話である。類似する再開発として、オランダ・アムステルダムの湾岸開発、中でもアイ・バーグという人工島の開発を思い出す。最初に行われたのが、アムス中心部との関係性、島の形や道路網、交通網の形状の整理だったというのだからおもしろい。
 日本だと道路は御上から与えられる。しかも、その地に適した提案が行なわれるとは限らない。また、建築基準法は道路がなければ建築してはいけないという。そういった制約の中で、しかも江戸の街を踏襲した東京の街路再構成の難しさは理解できる。しかし、豊洲は埋立地でありリセットもかけているのだ。なぜ、ディベロッパーや行政が手を組んで新たな街を再構成できなかったのだろう。道路の分断による不幸は汐留で経験済みのはずである。六本木ヒルズは逆をやって城を築いたではないか。
 豊洲はもう工業地域ではないのに、なぜ晴海通りをあそこまで拡幅したのか。市場ができたら住宅地を分断する大通りにはトラックが押し寄せるに違いない。一方、歩道の広さは歩きやすく、埋立地ならではの平らさは自転車やベビーカーにもやさしい。しかし、地形的特徴のなさが逆に道路をつまらなくしているのも事実だ。道路によって多少起伏のある地形を作り出すぐらいの新たなる価値評価がこの埋立て島にはあるべきだと思う。
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駐車場、駐車場タワーと壁のようなマンション
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同一の設計なのにめちゃくちゃな配置計画

群島の中の群島の価値
 道路のつまらなさを助長しているのが、郊外のショッピングセンター形式にならった土地の囲い込みである。設置性と一時性を決め込んで上空権を売り渡すのは結構だが、悲惨な建物によって全体のスカイラインがめちゃくちゃになってしまった。郊外の幹線道路に対する集約性はここでは無縁なはずである。
 タワーマンションが生え揃う頃には島の中に浮かぶ群島よろしく、事業者ごとの独立したエリアが浮き彫りになってくるだろう。道路の分断性の強さが豊洲内部にも群島を作り出そうとしているのだ。これが渋谷と同じく住み分けに発展するか、各島が鎖国をし始めるのかで街全体の価値は大きく変わるだろう。
 とにかく、全体計画に先んずる経済戦略が街全体を支配し、個々のディベロッパーの独立した状態が目立つ。各街区が少しでも開放に向かえば、界隈が形成できかえって全体の経済的活気につながると思うのだが。浜辺がたくさんあるのも商売にとっても利があるはずである。そういう中で、群島である豊洲の中に新たな群島を築くのではなく、豊洲、晴海、辰巳、東雲、台場といった東京湾埋立て群島のそれぞれがキャラ立ちすると面白い。
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広すぎる晴海通りと各々で閉じている敷地
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ゆりかもめ終点とその周囲の島状の塊