オリンピックが変える都市の姿(3) ソウルに見る再々開発

■街のマイナス変容速度
東京オリンピックの前に東京の水路を覆うように建設された首都高速道路は都市景観再生の議論の中で矢面に立たされている。しかし、それを上空から見ると(写真4)過密なこの都市の動脈として機能しているこの道路の存在を否定することは、もはや出来そうに無いように思えてくる。
韓国のソウルでは、その出来そうに無いことが実行されたのである。ソウル都心を流れるチョンゲチョン(清渓川)の再生である。この川は1950年代から70年代にかけてコンクリートの蓋で覆われ、その上に高架道路が作られた。しかしそれらの老朽化と環境悪化の対策として、清渓川復元事業を掲げた李明博氏が2002年のソウル市長戦に勝ち、2003年に着工(写真5)、2005年には都心のオアシスとして市民の憩いの場となった(写真6)。しかし、川の流れはまったくの自然ではなく、不足する水量を補うために給水をしたりポンプを使って循環させたりしている。このエネルギーを消費する都心の「自然」についての批判もあるが、ソウルでは貴重な親水空間として多くの市民に受け入れられている。いったん開発した場所を復元再生するマイナスの変容速度を示す好例である。
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写真4 上空から見た東京の首都高速道路

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写真5 撤去される高架自動車道(ソウル市住宅局Hur-Young氏提供)

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写真6 復元されたソウルのチョンゲチョン(清渓川)

(大野隆造)