オリンピックが変える都市の姿(4) 2回目の意義?

■2回目の東京オリンピックは有効な都市改変をもたらすのか
 2回目の開催を目指す東京は、露骨に開発至上の姿勢は見せず、むしろコンパクトな「成熟した都市変革」をうたい文句としている。直前に中止された世界都市博覧会の空いたままの用地を埋めるためと悪口を言われ、少子化の進む将来に負担を残すとの批判もある一方で、「発展」を否定することは、人間の本質的な部分の否定につながりかねないとの主張もある。
 しかし、今の東京に求められているものは、先進西欧都市に接近するために成熟した姿を海外に見せることなのだろうか?私の個人的な(阪神淡路大震災の)体験から、1000万人以上の人口が集積するメガ都市の安全性、さらには安心して住める都市への変革の方が急務であると思う。2016年の華やかなイベントに備えるのか、それともその前かその後かは定かでないが確実に訪れる首都直下地震に備えるべきか、答えは明らかのように思う。最悪のシナリオでは、1万人以上の犠牲者が出ると予測されている未曾有の被害を最小限にとどめる防災対策は、一見夢のない消極的な行為のように思われるかも知れない。しかし、世界中の主に発展途上の国々で1000万人以上のメガ都市がますます増えつつある今日、その安全性の手本を示すことで国際的な貢献をする積極的な意義がある。
 オリンピック競技の背景として全世界のテレビに映し出される建築やまちの美しさよりも、市民が日々実際に暮らす建築とまちの安定感と安心感がより重要ではなかろうか。
(大野隆造)