楳図邸騒動から景観を考える(1)

 今、ワイドショーやニュースで話題になっている、楳図かずお氏の自邸の建設現場を見に行く。紅白のストライプの外観と「まことちゃん」を模した塔が周辺の景観を破壊するとして、周辺住民2名が工事差し止めの仮処分申請を申し立てたというものである。
 現場を見ると、その外観はまだ完成していない。訴えた住民はどうやら工事関係者から聞いた情報を基に、完成予想スケッチを自ら作成したようである。実際にどのような外観になるのか、今はまだ分からないというのが本当のところのようだ。
 マスコミは楳図氏の独特のファッションや創作物に絡めて、この一件を面白おかしく取り上げているように見える。報道を見ていて、奇妙に思ったのは、周辺の景観と合わないと言いながら、映像や写真では楳図邸だけ切り取って写したり、周辺の建物にはモザイクをかけていたりするということである。もちろん、周辺住民のプライバシーに配慮してという意図なのだろうが、これでは、その建物が周辺景観に対して本当にどうなのかという議論はできないだろう。つまり、単独の建物が一方的に攻撃されるのみで、「周辺の景観」については誰も論じていないのである。実際現地に行ってみると、問題の建物の数件先には真っ青な住宅が忽然と現われたりするのだが、こちらは問題になっていないようだ。そこに、この手の景観紛争の難しさを見る思いがする。
(添田昌志)