タングア公園はバリグイ川の上流部分につくられた公園である。クリチバ市の北西部、ピラウジーニョ地区、タボアン地区に位置する。その面積は23.5ヘクタール。
タングア公園は、バリグイ川上流にある民間企業が有していた元石切場で、その企業が産業廃棄物を捨てておくような場所であった。ここを公園にしようと提案したのはレルネル市政を継いだグレカ市政においても環境部長を務めた中村ひとし氏である。
その土地はニューヨーク市の開発権移転制度を緑地を獲得するために応用させた制度を用いて手に入れる。これは、民間企業が所有する土地を市役所に提供してくれれば、その分、他の所有する土地に開発権を移転できるという制度で、それは例えば緑地であれば住宅地として開発したり、商業用地であったら容積率のボーナスが得られるような制度である。
タングア公園の土地は土壌汚染の心配もあったが、さらに、それがバリグイ川の源流のそばにあるために、環境保全といった観点からも市役所としては、ここを緑地として管理したいと考えたのである。
このタングア公園には、多くの野生動物が生息しており、スカンク、アルマジロ、コウモリなどがいることが確認されている。植物も希少なものがここには育っている。
企業が産業廃棄物を捨てていたところには、土壌汚染を浄化するお金がなかったこともあり、水を溜めて池にした。そして、崖があったのだが、そこには立派な滝をつくった。しかも、その滝壺にまでアクセスできるよう、崖に穴のトンネルまでもつくってしまった。トンネルは46メートルの長さもあり、ちょっとした冒険気分を味わうことができる。池のほとりには、ビア・ガーデンも設置した。崖の上にはバスの停留所や駐車場、キヨスクなどがつくられた。65メートルの高さのある崖の上から池を見下ろす展望台からの眺めは素晴らしく、パラナ州のランドスケープを眺望することができる。また、散歩のためのトレイルがしっかりと整備され、ジョッギングやサイクリングを楽しむ多くの人がこの公園を訪れる。
238 タングア公園(ブラジル連邦共和国)







クリチバ市のタングア公園は、バリグイ川上流にある民間企業が有していた元石切場で、産業廃棄物が堆積している場所であった。クリチバ市は開発権移転制度を活用してこの土地を獲得し、市民が憩える見事な緑の空間に変えた。クリチバ・マジックとも形容したくなるような事例である。
タングア公園の基本情報
- 国/地域
- ブラジル連邦共和国
- 州/県
- パラナ州
- 市町村
- クリチバ市
- 事業主体
- クリチバ市
- 事業主体の分類
- 自治体
- デザイナー、プランナー
- 中村ひとし(ランドスケープ)
- 開業年
- 1996
ストーリー
地図
都市の鍼治療としてのポイント
レルネル市長が3回目の市長を務め、中村氏が環境局長をしていた頃、クリチバは凄い勢いで公園を整備していくのだが、それは公園を整備するための土地を確保する画期的な制度が出来たためである。それは、公園のために民間が土地を市役所に提供した場合、市内の指定された土地の容積率をボーナスとしてもらえるという制度だ。いわゆる開発権移転制度で、この制度自体はクリチバも歴史建築物を保全するためには1981年からニューヨーク市の真似をして導入していたのだが、それを公園整備の土地にまで拡張したのである。この制度を用いてタングア公園の土地を市役所は獲得した。
筆者は以前、池に降り注ぐ人工の滝をつくった真意を中村氏に尋ねたことがある。「なぜ、ここに滝をつくったのですか?」。そうしたら「そりゃ、ここに滝があった方が断然、いいと思わないか」と、おかしいことを聞く奴だなというような顔で言われたことがある。崖に穴のトンネルをつくったのも、「滝壺まで歩いて行けたら楽しいだろう」とのことだそうだ。そりゃ、確かにそうである。役人でもない大学教員である私でさえも、いちいちアカウンタビリティを意識してしまう日本の空気。このような空気が、クリチバのような楽しい公共空間がなかなかつくれない理由かなと反省させられた中村氏との対話であった。
産業廃棄物を捨てていたマイナスの土地を、開発権移転制度を見事に応用した手法で、見事な緑の空間というプラスの土地へと変貌させてしまった。クリチバ・マジックとも形容したくなるような「都市の鍼治療」プロジェクトであると考えられる。
【参考資料】
服部圭郎著「ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語」(未來社)
筆者は以前、池に降り注ぐ人工の滝をつくった真意を中村氏に尋ねたことがある。「なぜ、ここに滝をつくったのですか?」。そうしたら「そりゃ、ここに滝があった方が断然、いいと思わないか」と、おかしいことを聞く奴だなというような顔で言われたことがある。崖に穴のトンネルをつくったのも、「滝壺まで歩いて行けたら楽しいだろう」とのことだそうだ。そりゃ、確かにそうである。役人でもない大学教員である私でさえも、いちいちアカウンタビリティを意識してしまう日本の空気。このような空気が、クリチバのような楽しい公共空間がなかなかつくれない理由かなと反省させられた中村氏との対話であった。
産業廃棄物を捨てていたマイナスの土地を、開発権移転制度を見事に応用した手法で、見事な緑の空間というプラスの土地へと変貌させてしまった。クリチバ・マジックとも形容したくなるような「都市の鍼治療」プロジェクトであると考えられる。
【参考資料】
服部圭郎著「ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語」(未來社)
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