2009年06月 アーカイブ

銀座らしい街並みのために 竹沢えり子氏インタビュー(2)

― 銀座デザインルール(以下、デザインルール)作成までの経緯を教えてください。

◇「銀座デザイン協議会」というしくみづくり
 銀座街づくり会議をつくって、地区計画を改正しようという協議をしている間に、高さや容積率は問題ないけれど、このデザインはちょっと銀座にはふさわしくないんじゃないか...という案件がいくつか出てきてしまったんです。ですが、法律的には問題ないので、何の規制も出来ないわけです。仕方がないので、事業者や建築家の方をお呼びして、何度か議論したんですね。こういった経験があって、地区計画だけでは銀座らしい建物は建たないという結論に達したんです。思いを共有してくださった中央区も、何とか地区計画だけでない仕組みを作らなければいけない、ということで、デザイン協議会のしくみを中央区の方から提案されました。そして、地区計画改正とともにデザイン協議会制度を要綱に規定したんです。

◇行政との連動、信頼関係
 区の要綱では中央区の制度としてデザイン協議会を位置づけ、区がある団体を認定するという形をとっています。第一号として銀座が、中央区長から認定を受けてやっている、ということです。
このような協議会ができたというのは、98年の地区計画策定時にさんざん話し合って、行政と銀座の間で信頼関係ができていたからと思います。


続きを読む

銀座4丁目交差点の広告ビジョン

竹沢えり子氏のインタビューでも触れられている銀座の広告ビジョンについて、編集局の添田と川上が動画でレポートします。

続きを読む

銀座ルールから高さ制限のあり方を考える

編集局 大澤昭彦


■街路幅員に応じた高さ規制
 銀座ルール(地区計画)のポイントは、街路幅員に応じて建物高さを規定していることにある(表1参照)。

表1 銀座ルールによる高さ制限
osawatable1.jpg

 「広い道には高い建物を、狭い道には低い建物を」と言えるこの考え方は、ヒューマンスケールな街路景観を形成するという観点から、非常に理にかなったものと思われる。銀座では、明治5年の銀座大火の後に策定された「銀座煉瓦街計画」において既に、そのような考えに基づいた規定が設けられ、高さの揃った統一的な街並みの形成が意図されていた(表2参照)。いわば、明治期に「銀座ルール」は存在していたのである。

表2 銀座煉瓦街計画における高さ制限
osawa-table2.jpg

続きを読む

銀座デザインルールに見る誇りと新陳代謝

編集局 川上正倫


■「らしさ」は次世代へのはじまりである/デザインの新陳代謝
 銀座デザインルールで述べられている「銀座らしい」街とはどういうことなのかを考えながら、銀座を歩いてみた。その中で実感したことは、「らしさ」を柔軟に捉えることの重要性である。竹沢氏がおっしゃる「ビルを建設するということは、銀座の街に入っていくきっかけ」という当たり前ながら忘れがちなことが、建築デザインにとって非常に重要なテーマであるように思われた。

 建築デザインは、既存の街に対してそのあるべき姿を示すという意味があるが、それ故に、どうしても建物の竣工時がゴールであると錯覚してしまう。しかし、その建物はその後も何十年と残っていくわけであり、その間に周囲が建て変わっていく可能性もある。変化する周囲の中では、竣工した時点からそのデザインは老化していくことになる。下手をすると長い工期の内に、完成を待たずに賞味期限が切れる可能性だってある。無秩序な状況下では建築デザインは儚いものであり、一体何を世に発信しているのか担保できない。その状況を調停するのが「らしさ」をめぐる議論ではないかと感じた。

 建築主にとっては「らしさ」を表現した建物の提案こそが、これから銀座の街に参加していくための所信表明なるものであり、建築デザインはその表現として継続的に街に貢献する重要な役割を与えられる。通常の街において「らしさ」を追求しようとすると、クライアントの趣向や経済的な事情から実現されないことも多い。そういう意味で、銀座デザインルールにおいて「らしさ」を要求されるということは、建築と街並みが結びつく非常に重要な接点となる。「らしさ」としてデザインの意味を説明する必要があるのならば、その議論の中でデザインに対する思考は活性化されるはずなのである。

続きを読む