2009年10月 アーカイブ

現場での交流がまちづくりを促進する

編集局 大澤 昭彦

■ 外部評価を取り入れるということ
 個人にせよ都市にせよ、自らを客観的に評価することは難しい。外からの評価によって、はじめて自らの価値や問題点に気づくことが少なくない。

 その点、佐原は客観的な評価を意識的にまちづくりに取り込んできたまちである。田口氏が「どの団体も行事が終わると必ずレビューをやるんです。それもできるだけ外部の意見を取り入れて。やった、終わった、疲れた、じゃあ先に進まないんで。自分たちで独りよがりになったら絶対にだめだと。市もそういう考え方だし、商工会議所もそうですよね。」と述べているように、佐原では外部の視点を大切にし、実践してきた。

 もともと佐原のまちづくりの出発点は、外部評価をきっかけとしたものであった。視察に来た飛騨高山の人からの「この川(小野川)すごいですね、どうしてまちづくりに活かさないんですか」との一言で、はじめて自らのまちの価値に気づいたという。

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町の資源を生かすために 田口一博氏インタビュー(3)

― 佐原の大祭(毎年夏と秋の2回行われる。今年の秋の大祭は10/9~11に開催)も、昨今よく知られるようになりました。そのお祭りの背景について教えてください。

◇ 祭りは福利厚生
 佐原の大祭は神社に奉納するということだけから始まったお祭りではなくて、ある種の公共事業にもなっていたお祭りなんです。つまり、大きなお店をやっているところが、奉公人に飲んで食べて大騒ぎできる機会を作り、大きな山車を作って競わせたというのが、江戸時代中期以降からの一般的なかたちだと思います。福利厚生といいましょうかね。
 なので、景気が悪くなったり、飢饉が起こると、今の公共事業に当たるようなことはみんな大店がやっていたんです。天明の大飢饉の時に建った蔵などもそうですし、ごく最近までも、例えば、子どもがちょうど学校へ行くから、お金を稼がせてあげなければいけないから、仕事をつくって稼がせてあげるとか、大店の人たちはお金を使って地域を上手に回していかないと尊敬してもらえないような、そんなしくみで動いているようです。自分から言ったら品がないと、なかなかこういう話はしてくれないんですけれど、そういうまちの仕組みが根本にあります。

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秋の大祭の様子:小野川沿いの町並みを進む山車

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町の資源を生かすために 田口一博氏インタビュー(4)

― 佐原のこれからの課題について教えてください。

◇ 仕事を持って佐原に戻る
 今やろうとしていて、できつつあることは、一度佐原から出た子ども達が、仕事を持って戻ってくることです。佐原の場合、東京へ通うのはギリギリくらいの距離で、一回出て行ったらなかなか戻ってこなかったのが、地元で働く場所があれば、やはり戻ってくる訳です。今年は、イタリアで修行して腕を磨いて戻ってきて開業した、というのがあって、そういうような人たちが毎年少しずつ現れるようになってきているんです。子どもが帰ってくるのは親にとっては嬉しいようで、周りもそれで元気になっている。そこで商売が成り立って、お客さんが入って地元にお金が入る。このような仕組みが出来つつあります。

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