137 チェスターの城壁 (イングランド)

137 チェスターの城壁

137 チェスターの城壁
137 チェスターの城壁
137 チェスターの城壁

137 チェスターの城壁
137 チェスターの城壁
137 チェスターの城壁

ストーリー:

 チェスターの壁は、イギリスの西部にあるチェスター市の旧市街地を囲むようにつくられた3キロメートルに及ぶ城壁である。現在では、その上を歩くことができ、ちょっとした空中散歩を楽しむことができる。この壁の歴史は古く、そもそもは西暦70年、80年にローマ人によって築かれた。その後、ノルマン征服を経て、中世時代、壁は都市を囲むかたちで、12世紀頃(1162年と推測されている)に完成する。この壁には約160メートル間隔で木造の塔が設置された。そして、東西南北にそれぞれ、木造の塔と門がつくられた。
 チェスター市の城壁はイギリスの中で、ローマ時代、中世時代につくられた壁としては最も良好な状態で保全されているものとして捉えられている。壁のほとんどすべての部分が、イギリスの国家遺産リストに登録されており、登録されている箇所は、「ブリッジゲート」と群庁舎の間を除き、すべてがグレード1(最も重要)に指定されている(ブリッジゲートと群庁舎の間はグレード2として評価されている)。
 チェスターの壁は度重なる戦争によって損傷を受け、その復元は大きな課題となった。18世紀頃からは、防御としての役割は必要となくなっていたので、それはレジャー、レクリエーションの用途のために修繕されることになった。その維持管理は昔から大きな課題となっており、1707年に市議会は1,000ポンド(2015年の15万ポンドに相当)ほどの建設費を出して、城壁を歩けるように整備している。また、18世紀には城壁の歩行者の多さに比して、門が狭すぎたので、拡張工事がなされている。
 1930年頃から自動車交通が増加し始め、都心部に深刻な渋滞問題を起こすようになっていた。そこで、この都心部をバイパスするような環状道路が1960年代につくられた。現時点でも市にとって、この橋の維持管理は大きな課題となっている。 
 現在では、このチェスターの壁はチェスター市の重要な観光資源の一つとなっている。

キーワード:

ランドマーク, 城壁, 歩道

チェスターの城壁 の基本情報:

  • 国/地域:イングランド
  • 州/県:チェルシアー県
  • 市町村:チェスター市
  • 事業主体:チェスター市
  • 事業主体の分類:自治体 その他
  • デザイナー、プランナー:ローマ帝国
  • 開業年:70年〜80年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 チェスター・ローで有名なチェスター市は歴史都市として多くの観光客を集める。そして、チェスター・ローと並んで観光の目玉となっているのが、チェスターの壁である。それは、ほとんどチェスターの市域を囲っており、一周すると3.2キロメートルであり、ほどよい散歩の距離となっている。壁の形状はほぼ長方形であり、南の部分を除けば、ほぼ高架で地上から3メートルから5メートルぐらいの高さから、歴史的都市の美しい街並みを楽しむことができる。
 最近では、ニューヨークのハイライン、そしてその前につくられたパリのプランタン・プロムナードが注目されているが、このチェスターの城壁は何百年も前から、歩行者専用のちょっと視点が高い歩道を提供していたのである。私も北の門から時計方向で一周してみた。最初は運河沿いの絶壁の高低差があるところを歩いて行く。運河は観光船が浮かんでいたりして、なかなかイギリス的な風景である。ところどころにある塔に登ると、街並みの美しい展望が得られる。そして、門からは歴史都市チェスターの美しい街並みのパースペクティブを得ることができる。何より、自動車を気にせずに自分のペースで歩けるのが嬉しい。
 歴史的土木構造物であり、その維持管理は難しい点があるが、それをしっかりとしてきたことが、チェスターの壁を他の都市にはない、チェスターにユニークなランドマークとして位置づけることを可能とした。それは、チェスター市のまさに象徴的な存在であり、その重要性をしっかりと昔から認識してきたことが、チェスター市を特別な観光都市としての風格を持たせることに成功してきたと思われる。長期に渡る、優れた「都市の鍼治療」の事例であると考えられる。

類似事例:

008 テンプル・バー
013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク
020 ニューラナークの再生
031 剥皮寮(ボーピーリャウ)の歴史保全
053 ハイライン
063 チャールストンの歴史保全
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・チェスターのザ・ロー、チェスター(イギリス)
・レッテン・ヴィアダクト、チューリッヒ(スイス)