360 サステイナブル・コミュニティ「セーゲパーク」(スウェーデン王国)

サステイナブル 都市開発 脱自動車

スウェーデン・マルメ東部のセーゲパークは、旧マルメ東病院跡地を活用し、気候変動に対応したサステイナブルな都市開発が進む地域である。再生エネルギー活用や雨水再利用、生活道具のシェア、都市農業など、多面的な取り組みを推進し、“持続可能な暮らしのショーケース”として注目されている。

サステイナブル・コミュニティ「セーゲパーク」の基本情報

国/地域
スウェーデン王国
州/県
スコーネ県
市町村
マルメ市
事業主体
マルメ市
事業主体の分類
自治体 
デザイナー、プランナー
Kjellander + Sjöberg
開業年
2020年

ストーリー

 セーゲパークは、スウェーデンはマルメの東部に位置する住宅地区である。マルメ東病院の跡地を中心として、そこでは現在、地球気候温暖化に対応したサステイナビリティを意識した再開発が進展中である。既存の建物は極力、保存して活用され、空地には新たに建物もつくられる計画であり、密度の高度化が図られている。
 それは、サステイナビリティを意識した都市開発のショーケースとなることが意図されている。そこでは800戸以上の住宅がマルメ市によって提供されていると同時に、シェアード・エコノミー、都市農業、代替エネルギーによる発電などが実践されている。住宅は気候変動へ対応した工夫が為されている。
 セーゲパークには住宅、企業、そして公共サービスが立地する。ここではゴミの分別が容易にできるようにしている。また、シェアード・エコノミーを普及させるために工具、おもちゃなどが共有できるようになっている。その結果、ここの住民はシェアをすることで出費を抑えることが可能となっている。何より、モノを所有せずに済むようになっている。また、エネルギーは再生エネルギーによって供給される。建物は省エネルギーであり、太陽光パネルが設置されている。太陽光パネルは合計すると1,250㎡である。雨水は貯水され、再利用される。自動車所有は世帯当たり0.5台と少なく抑え、家ごとに駐車場を設けるのではなく、住宅地の脇に木造の立体駐車場をつくっている。ここには駐輪場も設けられ、自動車、自転車をレンタルすることもできる。自然菜園も提供されており、野菜や果物を自ら育てたい人は、それらを借りることができる。
 セーゲパークには病院時代に遡った豊かな歴史を有する建築群が今でも存在している。そして、その時代につくられた緑地などの自然環境は快適な生活環境を提供してくれる。セーゲパークの再開発では、これらの建物や自然環境を保全活用すると同時に、新しいサステイナビリティを意識した住宅群を建設している。このようなアプローチをすることで、セーゲパークは多様な住宅タイプを供給することを可能とし、その結果、住民も多様な人々で構成されることが期待できる。
 サステイナブル・コミュニティ「セーゲパーク」のデザインはコンペによってケランダー・ショーバーグ(Kjellander + Sjöberg)が担当することになった。そのデザインはサステイナブルな社会にするためのライフスタイルに注目したもので、ライフスタイルの実現を支援するための空間を設計するというものである。そのために多くの生活品や生活していくうえでの情報や知識を共有し、また共同活動を住区のブロックごとに展開するように仕掛けている。特に、アメニティ溢れる共有空間を多く設けて、共同活動を促すようにしている。実際の施工・開発は11の不動産デベロッパーによって遂行されている。
 セーゲパークの再開発がマルメ市に認められたのが2015年。再開発のための土地区画の変更の許可は2017年に出された。そして、最初の開発のための工事が始まったのが2020年である。2023年に筆者が訪問した際の取材では、セーゲパークに800人が住んでいるということであった。セーゲパークの計画人口は2,500人。その敷地面積は25ヘクタールである。

地図

都市の鍼治療としてのポイント

 1992年のリオデジャネイロでの環境サミットの後、サステイナブル・コミュニティの開発コンセプトが大いに注目された。アメリカではラグナ・ウエスト、シーサイド、セレブレーション、ケントウッドなどのサステイナブル・コミュニティが具体化され大いに注目された。しかし、それがメイン・ストリームになることはなく、今でも亜流のままニッチのマーケットから脱却できずにいる。日本でもそのような開発が模索されたが、そのような付加価値を加えるような余裕もなく、SDGsという言葉だけが現在でも一人歩きしているような状況にある。
 しかし、欧州の国々は地道にサステイナブル・コミュニティを開発してきた。エネルギー負荷を低め、代替エネルギーで発電をし、自動車への依存度を減らし、微気候管理をして、雨水処理も地下浸透を徹底させ、植栽もその地域の生態系を意識するなどして、どんどんコミュニティ単位のサステイナビリティを高めてきた。セーゲパークのあるマルメ市にあるアウグステンボリ団地(「都市の鍼治療」事例No.319)オランダのエコロニア(No.030)、同国ティルブルク市のグリーン・テンプレート(No.048)、ドイツのシュテルベルク60(No.097)、同国フライブルク市のファウバーン、ハノーファー市のクロンスベルク、ダルムシュタット市のリンカーン団地などがある。アメリカや日本では一時期の流行でさして注目されなくなってしまったサステイナブル・コミュニティであるが、欧州ではその数が増えているだけでなく、内容も進化している。そしてセーゲパークはまさにその最前線にあるようなサステイナブル・コミュニティである。
 ポイントとしては技術的には何も目新しいことをしていない点である。ただ、なかなかそれまでアイデア・レベルでは考えられていたとしても、それを実践することができなかったことをブレイクスルー的にしているところが、まさに「都市の鍼治療」的である。それは、生活道具のシェアである。例えば穴開けドリル。一人が一生でこのドリルを使う平均時間は13分だそうだ。しかし、私もそうだが多くの家でこのドリルを買っている。確かに私も5年前にこのドリルを使って以来、手にしていない。これをシェアできれば多くの人がお金はもちろんそうだが、保管スペースをも節約できる。大きな荷物を運ぶ荷車などもそうだ。そのような生活道具を共有することで、購入をする前に「本当に必要なのか」を考える習慣もできるであろう。そのようなライフスタイルの変換は、よりコミュニティをそして社会をサステイナブルにすることに繋がるのではないか、とセーゲパークの開発側は考えている。もちろん、自動車、自転車、スクーターはレンタルできるシステムが整備されている。そして、そのような生活用具を共有することでコミュニティの結び付きは強化するであろう。
 SDGsという念仏を唱えるより、具体的な日々の生活をサステイナブルにするためにライフスタイルを変えていくこと。その変えていくための仕組みづくりをして、そのシステムを供給しているのがセーゲパークである。口先だけでなく実践する。これが日本にはない欧州の強みなのではないかと考える。

【参考資料】
アーケロのウェブサイト
https://archello.com/en/project/sege-park

Kjellander + Sjöbergのウェブサイト
https://kjellandersjoberg.se/en/projects/project/sege-park/

【取材】
セーゲパーク

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