京都市伏見区の京阪墨染駅から歩いて5分ほど行った住宅地に0.23ヘクタールの北鍵屋(きたかぎや)公園がある。この公園を地元の人は、隣接して消防署があったことから消防公園と呼んでいた。同公園は戦後の1950年につくられる。藤棚があり、ちびっ子プールもあり、それなりに近隣住民に使われていたが、2004年にプールが閉鎖され、全般的に不衛生なことや、草木が鬱蒼と生い茂り、痴漢も出るなどの事件もあり、徐々に人々は近寄らなくなっていった。
一方、近隣住民が利用せず問題を抱える公園の存在を把握していても、管理を担う京都市には対応する余力がなかった。市内には約950もの公園があり、予算や人員の制約から、改善には場合によっては数十年かかることもある。北鍵屋公園にも、完成直後から草むしりなどを行うボランティア組織(公園愛護協力会)があったが、この公園の問題は、地元のボランティアでは解決できないほど深刻だった。
そこで、京都市は市域全体の公園を管理するために「パークアップ事業」という施策を起ち上げた。これは、公園を地域主体で柔軟に管理させることを可能とする制度であり、民間企業等のサポート団体が運営支援できるようにすることなどで、地域課題の解決や価値向上に寄与することを目的とした。
この事業のサポート団体として最初に手をあげたのがコンビニエンスストアを全国で展開しているセブンイレブンであった。候補にあがったのは北鍵屋公園と同じ伏見区にある七瀬川公園であったが、結果的に北鍵屋公園で実施することになった。そして、2022年8月から藤森学区、セブンイレブン、京都市で共同研究を開始し、自治会等と10回以上の協議を重ねた。そこで、北鍵屋公園をどのように復活させていくか、その公園の担い手を育てていくためにも若者の声を聞くことが重要だと関係者は考えた。そして、この公園のある藤森学区の自治連合会の若手理事メンバーが集まり、その方向性を検討し始める。そこでは、いろいろな意見が出てきた。街区内にコンビニがつくられることで公園面積は減る。しかし、地域交流施設がつくられることで、地域はよくなるだろうという地元が決断する前には賛否両論の意見が出たそうだ。他にも、近くに園庭のない保育園があり、よく北鍵屋公園に通っていたので、子どもの使い勝手のよさを意識して欲しい、という要望なども出てきた。そして、園内が不潔なこと、藤棚などに蜂が集まったりして虫の問題があること、木が生い茂っていて死角がつくられていること、全般的に夜は相当暗くなること、などの課題が挙げられた。これらについて、より多くの地域の意見を集めるためワークショップや公園でのイベントを開催した。
2023年4月には自治会等に参加する住民、ワークショップ、イベントに参加した住民のグループにセブンイレブン、京都市を加えた3者からなるプロジェクトチームを設立し、地域交流施設やセブンイレブンの店舗の大きさ、さらには公園の広場や遊具の配置などの話合いを重ねた。加えて、この取組を地域に広く発信する実証実験「きたかぎ屋オープンパーク」を実施した。オープンパークでは、屋台のお店を出したり、トークショーを通じて、こういうプロジェクトが進んでいることを広く周知したりした。賛否はあったが、止めて欲しいという意見は極めて少なかった。
これらを通じて、新しい公園運営モデル「パークアップ事業」の活用第一号として、公園運営委員会が設立され、遊具エリア、広場エリア、パークアップ施設の3つのエリアを有する「みんなでつなげる、みんなの居場所」というコンセプトの地域主体の公園が2024年11月29日にオープンした。行政が管理していた公園から、民間の支援を受けながら、地域が主体的に管理をしていくという公園の誕生である。
355 北鍵屋公園(京都府)
京都市は地域が主体的に公園を管理運営することを前提に、地域の実情にあった運営方針や利用ルールを定めることができる新たな公園運営の仕組みづくりであるパークアップ事業を創設した。北鍵屋公園はその事業の第一号である。住民のグループにセブンイレブン、京都市を加えた3者からなるプロジェクトチームが話合いを重ね、公園が再び住民の交流拠点として機能するようになった。
北鍵屋公園の基本情報
- 都道府県
- 京都府
- 州/県
- 京都府
- 市町村
- 京都市
- 事業主体
- 北鍵屋公園運営委員会
- 事業主体の分類
- 市民団体
- デザイナー、プランナー
- N/A (住民)
- 開業年
- 2024年
ストーリー
地図
都市の鍼治療としてのポイント
京都市では現在、大小合わせて約950の公園を維持管理しており、都市の魅力、活力、憩いを生み出す空間として、日々、市民に利用されている。一方で、遊具等施設の老朽化や公園愛護協力会の高齢化・担い手不足、また、多様化する公園利用者のニーズへの対応といった課題を有する公園も多くある。そして、これらの課題に対処するためには京都市にはキャパオーバーであるという現状がある。そこで、京都市は地域が主体的に公園を管理運営することを前提に、行政が定めた画一的な利用ルールによる管理ではなく、地域合意のうえ、地域の実情にあった運営方針や利用ルールを定めることができる新たな公園運営の仕組みづくりであるパークアップ事業を創設した。
北鍵屋公園はその事業の第一号である。この新しい仕組みでの公園運営には、既存の枠組みにとらわれない民間の柔軟なアイデアや大胆な発想が必要と考え、京都市と共同研究をする民間企業等を公募した。そこで、公募により選ばれたセブンイレブンと、取り組みに賛同した藤森学区の住民と共に2022年8月に共同研究がスタートしたのだ。
これらの共同研究やオープンパークのイベントから「虫の多さ」「不潔」「死角があり治安上、不安」「暗い」といった課題が挙げられ、これらは空間デザインによって大きく改善することとなった。3つにゾーニングされたうちの一つ、パークアップ施設にはセブンイレブンと駐車場、そして地域交流施設がつくられた。これはセブンイレブンによって寄贈されたもので、店舗収益の一部が交流施設の運営や公園の活動資金として使用できるように地域に還元する仕組みとなっている。地域交流施設は誰でも利用できる空間で吹き抜けの室内には、畳の小上がりコーナーや、学習スペース、ミニキッチンが設置されている。その管理は、公園運営委員会のメンバーがシフトで行っている。また、遊具なども地域住民の要望に応じて設置された。このような地域の特性、要望に応じた柔軟な管理は京都市のような政令都市になるとほとんど不可能である。パークアップ事業は、そのような官僚的な管理を打破する新しい試みであると考察できる。
この事業によって、多くの子ども達がここに遊びに来るようになった。筆者が取材していた時も小学生ぐらいの子ども達が広場で野球を楽しんでいた。また、公園愛護協力会にも若いメンバーが入るなど、公園が再び、周辺住民の交流拠点として機能するようになっている。全般的に場所は明るくなり、活気は戻った。見事、公園が地域を再生することに成功させたのではないだろうか。
【取材協力】
安藤準佑(公園運営委員会長)、豊福火水成(公園運営委員副会長)、田中咲(ボランティアの学生)
【参考資料】
京都市役所のホームページ
https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000331682.html
みんなの公園愛護会のホームページ(2025/04/06)
https://park-friends.org/e/t070/
北鍵屋公園はその事業の第一号である。この新しい仕組みでの公園運営には、既存の枠組みにとらわれない民間の柔軟なアイデアや大胆な発想が必要と考え、京都市と共同研究をする民間企業等を公募した。そこで、公募により選ばれたセブンイレブンと、取り組みに賛同した藤森学区の住民と共に2022年8月に共同研究がスタートしたのだ。
これらの共同研究やオープンパークのイベントから「虫の多さ」「不潔」「死角があり治安上、不安」「暗い」といった課題が挙げられ、これらは空間デザインによって大きく改善することとなった。3つにゾーニングされたうちの一つ、パークアップ施設にはセブンイレブンと駐車場、そして地域交流施設がつくられた。これはセブンイレブンによって寄贈されたもので、店舗収益の一部が交流施設の運営や公園の活動資金として使用できるように地域に還元する仕組みとなっている。地域交流施設は誰でも利用できる空間で吹き抜けの室内には、畳の小上がりコーナーや、学習スペース、ミニキッチンが設置されている。その管理は、公園運営委員会のメンバーがシフトで行っている。また、遊具なども地域住民の要望に応じて設置された。このような地域の特性、要望に応じた柔軟な管理は京都市のような政令都市になるとほとんど不可能である。パークアップ事業は、そのような官僚的な管理を打破する新しい試みであると考察できる。
この事業によって、多くの子ども達がここに遊びに来るようになった。筆者が取材していた時も小学生ぐらいの子ども達が広場で野球を楽しんでいた。また、公園愛護協力会にも若いメンバーが入るなど、公園が再び、周辺住民の交流拠点として機能するようになっている。全般的に場所は明るくなり、活気は戻った。見事、公園が地域を再生することに成功させたのではないだろうか。
【取材協力】
安藤準佑(公園運営委員会長)、豊福火水成(公園運営委員副会長)、田中咲(ボランティアの学生)
【参考資料】
京都市役所のホームページ
https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000331682.html
みんなの公園愛護会のホームページ(2025/04/06)
https://park-friends.org/e/t070/