117 街中がせせらぎ事業 (日本)

117 街中がせせらぎ事業

117 街中がせせらぎ事業
117 街中がせせらぎ事業
117 街中がせせらぎ事業

117 街中がせせらぎ事業
117 街中がせせらぎ事業
117 街中がせせらぎ事業

ストーリー:

 静岡県の三島市は人口約11万、伊豆半島、箱根、富士山という三大観光地に囲まれている。同市は、第二次世界大戦の時、幸いに空襲を免れた。しかも、旧市街地にはお寺や神社があり、それらが広い土地を持っている。こうしたことから、なかなか再開発がすすまなかった。三島駅の南口でも、自動車が通りやすい幅の広い道路などを整備しようとしたが、住民の反対などで実現せず、現在に至っても、中心市街地は碁盤の目にはなっていないような状況である。
 一方で、三島市は市内各地で富士山の湧き水が見られ、せせらぎを聞くことができた。しかし、地下水の利用で水量が激減し、川の汚染もひどくなるという問題を抱える。
 湧き水が出るスポットは都市の中心に多くある。中心市街地が碁盤の目ではないというのは、自動車にとっては不便だが、歩行者にとっては歩きやすい。この歩きやすい環境を活かして、湧き水を再生させ、管理し、それらをめぐる散策路を整備すれば街の活性化に繋がるのではないかという考えのもと、三島市では1996年から「街中がせせらぎ事業」を展開することにした。
 そして、商工会議所、住民、NPOなどが協働して、三島駅を発着点とし、中心市街地にある水辺や緑、歴史・文化といった街の宝物のアメニティ資源をめぐるルートを策定した。その計画を受け、行政はこのルートを5キロメートルの回遊路として整備する事業を2001年から2005年にかけて実施したのである。ルート沿いは、舗装を変えるなどして、探検気分で歩けるような工夫がされた。また、自動車のスピードを落とさせるためのハンプ(ちょっとしたでこぼこ)を設けたり、歩道の舗装を広めたりするなどの工夫もしている。
 三島駅南口を起点とするこのルートは、市街地にある湧き水をめぐり、源兵衛川の水辺や三石神社、水の苑緑地から三島梅花藻の里などを訪れることができる。そして、その途中で富士山がたびたび姿を現す。
 この湧き水を活かした三島のまちづくりは「優秀観光地づくり賞金賞総務大臣賞」「都市景観大賞美しいまちなみ大賞」などを受賞している。

キーワード:

自然保全,生態系保全,観光

街中がせせらぎ事業 の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:静岡県
  • 市町村:三島市
  • 事業主体:三島市
  • 事業主体の分類:自治体 民間 市民団体
  • デザイナー、プランナー:不明
  • 開業年:1996年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 「せせらぎ」のルートの中に、ちょうどうまい具合にすっぽりと中心市街地が入る。三島市の商店街はそれほど繁盛していないが、シャッター通りではない。さらに、道が狭いので商店街の空間密度が高い。加えて、自動車での交通の便がよくないので、住民は買い物を近くの商店街で済ませる。こうしたことから、商店街にはそこそこの活気がある。そこに「せせらぎ」のルートが整備されたことで観光客が三島の中心市街地を歩くようになり、商店街のそこそこの活気もアメニティになって、観光客に喜ばれている。
 三島市は、自動車社会である。自動車なしではもはや生活が成り立たない。そういう中で歴史的な偶然もあって、三島の中心市街地は歩行回遊に適した人間的スケールの空間が維持されていた。さらに三島の地域的個性でもある「せせらぎ」。この二つを見事に融合させ、本事業は三島の街の魅力を大きく向上させることに成功した。都市の格を大幅にアップさせ、市民の三島市に対する愛着を高めると同時に、そこを訪問する人達にも三島市の魅力をアピールすることができるようになった。
 その都市にある自然を活かすことで、地元の人達だけでなく、観光客にも喜ばれ、商店街の賑わいも加わるといった、なかなか素晴らしい「都市の鍼治療」事例である。

類似事例:

012 パセオ・デル・リオ
021 大横川の桜並木
090 デッサウ「赤い糸」
174 カール・ハイネ運河の再生事業
205 柳川市の堀割の復活
234 鈴鹿・長宿の景観整備と保全
・ グリーン・テンプレート、ティルブルグ(オランダ)
・ ストロベリー・クリークの再生事業、バークレー(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
・ カール・ハイネ運河の再生事業、ライプチッヒ(ドイツ)
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・ リージェント・カナル再生事業、ロンドン(イギリス)