ミラノ・ガレリア

ミラノ・ガレリア1

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ミラノ・ガレリア7


キーワード:

アイデンティティ ,イタリア ,ギャラリー ,商業施設 ,広場 ,鍼レベル 大 ,集客施設

ストーリー:

 ミラノ市にある19世紀につくられたショッピング・アーケード。正式名称をビットリオ・エマニュエル2世のガレリアと言う。世界で最も歴史のあるショッピング・アーケードでもある。ビットリオ・エマニュエル2世の名称はイタリア王国の初代国王から取っている。
 ミラノ市は1860年に大聖堂とスカラ座とを結ぶ歴史的地区の再開発プロジェクトのコンペを実施した。その結果、ボローニャの建築家ジョセプ・メンゴンが選ばれた。そして、彼によって1861年に設計され、1877年に完成したのが、このガレリアである。それは、それまでのショッピング・アーケードに比べると、空間的にはるかに巨大であり、設計当時は前代未聞の建物である。それは、ミラノの都市の精神的中心であるドゥオモ広場と、文化的中心である(少なくとも建設時は)スカラ広場とを結ぶ軸状に設置された南北200メートルのアーケードと、それに直交する100メートルの東西のアーケードから十字架状に構成される。
 アーケードはアーチ型ガラス天井で、その高さは30メートルに及び、十字路の上部の八角形の天蓋ドームは55メートルの高さになる。北イタリアの空の色を反映したガラス屋根は、新古典主義の建物と見事にマッチし、感動的な空間体験を訪れる人に提供してくれる。また、中央十字路の天蓋近くには東西南北ごとに、アメリカ、アフリカ、中国、北欧を象徴的に描いたという4枚のフレスコ画が描かれており、十字路に立って上を見上げると、ちょっとした美術館にいるかのようである。さらに足下に目をやると、舗道には見事なモザイク模様が施されている。これらのモザイク模様は中央がイタリア王国の紋章、その周辺にはミラノ、トリノ、フィレンツェ、ローマの紋章が描かれている。ドゥオモ広場と接続するところには豪華絢爛なアーチがつくられている。このショッピング・アーケードは4階建てになっており、洗練された上品な店舗が主にテナントとして入っている。
 ミラノ・ガレリアはミラノ市が所有している。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 2001年にここを訪れた時、ガレリアの十字路の角にはマクドナルドがテナントとして入っていた。今では、この角にはプラダが入っている。隣はルイ・ヴィトンである。これは、2012年に十字路にテナントとして20年入っていたマクドナルが契約延長を拒否されたからである。これは市民がそのように求めたからであり、これを不満としたマクドナルドは、ミラノ市を裁判で訴えたのだが、しばらく経ってこれを取り下げた。
 この事件は、何を示唆しているのであろうか。それは、欧州における都市間競争が激化する中で、シンボル性の高い都市空間の価値が高まってきており、ガレリアなどの空間の記号的価値が高まってきたということである。そして、そのようなブランド・イメージを有する場所に「場所性」のないマクドナルドというテナントが入っていることに人々は強い抵抗を覚えたのであろう。代わりに入った「プラダ」も国際的ブランドを有してはいるが、ミラノに本社がある。ガレリアのようにシンボル性が高い空間は、ミラノのアイデンティティをも体現しており、そこにはマクドナルドのようなアメリカ企業ではなく、ミラノの企業が入ることを望ましいと人々は考えたのである。都市間競争が激しくなると、都市は他と差別化するうえでブランド力が求められるのだが、そのようなブランド力をつくりだすのは、このガレリアのような強烈なアイデンティティを有する空間が重要な役割を果たすということである。
 そのような情報化社会、グローバリゼーション下におけるガレリアの重要性とは別に、単に公共空間としても、そのガラス天井のアーチの大きさ、そしてこの屋根がつくりだすエンクローズド感は、そこにいる人々になんとも言えない居心地のよさを感じさせる。この屋根がつくられたときは、まさに画期的であり、それは国際的な技術協力のもとで初めてつくることができた。特にガラスを巨大な屋根に貼り付けるところが難しかったそうである。レルネル氏はその著書『都市の鍼治療』で、ビットリオ・エマニュエルは「ミラノで最も美しい出会いの場所である」と述べている。それは、ここが単なるショッピング・アーケードだけではなく、ミラノの人々が出会う場所としても重要であるからだ。また、ここは隣接している大聖堂とともにミラノの観光の目玉となっている。
 このガレリアは歴史的文脈でみれば、ドゥオモ広場とスカラ広場とを繋ぐことで、単なるショッピング・アーケードではなく、ミラノの都心部に極めて重要な動線をも創出したのである。ミラノという都市のアクセスを大きく改善しただけでなく、それと同時に、その都市のアイデンティティまでも新たに更新するかのようなランドマークを創り出してしまった。これによって、ミラノという都市は大きくアップグレードされたと考えられる。見事な「都市の鍼治療」であるといえるであろう。

事業主体:

ミラノ市

事業主体の分類:

自治体, その他

デザイナー、プランナー:

Giuseppe Mengomi

開業年:

1877年

類似事例:

027 ギラデリ・スクエア、サンフランシスコ(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
113 クレーマー橋 (ドイツ)
・ バーリントン・アーケード、ロンドン(イギリス)
・ セン・ヒューベルト・ギャラリー、ブリュッセル(ベルギー)
・ ヴィヴィアン・ギャラリー、パリ(フランス)
・ ファニュエルホール・マーケットプレイス、ボストン(マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)
・ クリチバ・ショッピング・エスタソン、クリチバ(パラナ州、ブラジル)
・ ユニオン・ステーション、セント・ルイス(ミズーリ州、アメリカ合衆国)

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国:イタリア
州・県:ロンバルディア州
市町村:ミラノ