MFOパークはチューリッヒ市のエルリコン地区(Oerlikon)の再開発地区につくられた公園である。エルリコン駅の北側の地区にあったマシネンファブリク・オエリコン(MFO)の工場があった場所につくられた。MFOパークは、その斬新なデザインで来る者に強烈な印象を与える。それは縦100メートル、横35メートル、高さ17メートルの鉄骨でできた巨大な直方体のパーゴラであり、その形状は昔の工場の建物と同じであるように意識したそうだ。公園の0.85ヘクタールの敷地の大部分をそれは占めている。パーゴラは二重構造で、それは格子状のトレリスとなっており、蔦がその建物を覆っている。この二つの構造の間は回廊となっており、そこを人々は行き来できるように工夫されている。その中の空間は適度に分割されており、階段によって上階に行くことができる。最上階である4階からはチューリッヒ市の見事な展望が得られる。
エルリコン地区の再開発は、ブラウンフィールド(工場跡地)としてはスイス最大規模のものであった。この再開発地区に設けられたこのMFOパークを含めた4つの公園は職場・住宅・余暇といった異なる用途の空間の結びつきを強化させるハブとしての役割を果たすことが期待された。また、それまで民有地であったこのエルリコン地区が公共空間として再生したことを象徴する空間としての役割をも担うことになった。さらに、この地区は土壌汚染がひどく、その再開発をするうえでも汚染を浄化させることが重要な課題となった。緑の建築物(構造物?)のようなイメージを人々に与えるMFOパークは、汚染された土地から緑がある土地へと再生したことのシンボルとしての機能をも有している。
MFOパークでは多様な活動が展開している。そこでは、会合や映画、コンサート、ちょっとした演劇なども行うことができる。このようなイベント時には、およそ1,000人が収容できるそうだ。MFOパークの建設は2001年の秋に始まり、2002年に開業した。このパークは数々のデザイン賞を受賞している。2010年には欧州庭園ネットワークから、「最も創造的な現代的公園」の賞を受けている。また、2006年にはチューリッヒ州、そしてチューリッヒ市の優秀建築賞を受賞している。総建設費は約7億円。
190 MFOパーク (スイス連邦)







チューリッヒ市のエルリコン地区(Oerlikon)の再開発地区につくられた公園。開発にあたっての課題は、工場跡地という場所を、いかに人々に親しまれ、来たくなる(住みたくなる)場所へと転換させるかであった。しかも、この再開発地区は兵器工場であったから、そのネガティブなイメージをポジティブなものへと転換させることは、再開発成功の鍵を握っていたといえよう。
MFOパーク の基本情報
- 国/地域
- スイス連邦
- 州/県
- チューリッヒ州
- 市町村
- チューリッヒ市
- 事業主体
- チューリッヒ市
- 事業主体の分類
- 自治体
- デザイナー、プランナー
- Burckhardt+Partner(建築)、Raderschallpartner(ランドスケープ)
- 開業年
- 2002年
ストーリー
地図
都市の鍼治療としてのポイント
エルリコン地区はチューリッヒ中央駅から北に4キロメートルぐらいいった場所にある。その再開発地区はエルリコン駅からすぐそばの北西部に位置している。業務地としても住宅地としても、極めてニーズの高い場所でのブラウンフィールド開発であり、さらにスイス最大規模ということもあって、チューリッヒ市も随分と力を入れたことが推察される。
ブラウンフィールドの開発をするうえでの大きな課題は、それまで工場という一般市民からは隔離された場所を、いかに人々に親しまれ、来たくなる(住みたくなる)ような場所へと転換させるかであった。しかも、この再開発地区の場合は兵器工場であったから、そのネガティブなイメージをポジティブなものへと転換させることは、再開発が成功するための鍵を握っていたといえよう。
そのような中、MFOパークがもたらした効果は大きなものがあった。工場と同じ構造体にしたことで、あえて工場時代の記憶を喚起させるようなデザインにしつつ、そのコンテンツや機能はまったく違うものにしている。さらに、同再開発地区は建物の高さがしっかりと規制されており、そのためスカイラインが揃っている。そのため、中高層の箱形の建物が並んでいるような町並みが形成されているのだが、MFOパークは高さも建物の規模も似たような形状の直方体の構造物であるため見事にその町並みに溶け込んでいる。それでいて機能はプライベートに対してパブリックであり、生産の空間に対して憩いの緑の空間であり、高密度に対してがらんどうであり、再開発地区に不足している豊かさ、余裕、アメニティを供している。
このように、MFOパークはこの再開発地区の過去と未来を繋ぐ役割を担っているだけでなく、周辺の生産空間を補うようなアメニティや公共性をも提供しているのである。
高さ規制がされているために周辺に高い建物がないこともあって、MFOパークの最上階から望むチューリッヒ市の展望は気持ちよい。また、内部のがらんどう空間の中に設置された回廊を歩き、ところどころに設置されたデッキで佇んだりしていると、ちょっとした空中散歩をしているような気分になる。地上から10メートルぐらいの高さで、蔦の緑の中でゆっくりとしていると、「ジャックと豆の木」の物語を思い出した。ブラウンフィールドの土地を見事、再生への道に導く、優れた「都市の鍼治療」事例であると考えられる。
【参考資料】情報誌「ネルシス」vol.3 (2002) , Naturvation のホームページ(https://naturvation.eu/nbs/zurich/mfo-park)
ブラウンフィールドの開発をするうえでの大きな課題は、それまで工場という一般市民からは隔離された場所を、いかに人々に親しまれ、来たくなる(住みたくなる)ような場所へと転換させるかであった。しかも、この再開発地区の場合は兵器工場であったから、そのネガティブなイメージをポジティブなものへと転換させることは、再開発が成功するための鍵を握っていたといえよう。
そのような中、MFOパークがもたらした効果は大きなものがあった。工場と同じ構造体にしたことで、あえて工場時代の記憶を喚起させるようなデザインにしつつ、そのコンテンツや機能はまったく違うものにしている。さらに、同再開発地区は建物の高さがしっかりと規制されており、そのためスカイラインが揃っている。そのため、中高層の箱形の建物が並んでいるような町並みが形成されているのだが、MFOパークは高さも建物の規模も似たような形状の直方体の構造物であるため見事にその町並みに溶け込んでいる。それでいて機能はプライベートに対してパブリックであり、生産の空間に対して憩いの緑の空間であり、高密度に対してがらんどうであり、再開発地区に不足している豊かさ、余裕、アメニティを供している。
このように、MFOパークはこの再開発地区の過去と未来を繋ぐ役割を担っているだけでなく、周辺の生産空間を補うようなアメニティや公共性をも提供しているのである。
高さ規制がされているために周辺に高い建物がないこともあって、MFOパークの最上階から望むチューリッヒ市の展望は気持ちよい。また、内部のがらんどう空間の中に設置された回廊を歩き、ところどころに設置されたデッキで佇んだりしていると、ちょっとした空中散歩をしているような気分になる。地上から10メートルぐらいの高さで、蔦の緑の中でゆっくりとしていると、「ジャックと豆の木」の物語を思い出した。ブラウンフィールドの土地を見事、再生への道に導く、優れた「都市の鍼治療」事例であると考えられる。
【参考資料】情報誌「ネルシス」vol.3 (2002) , Naturvation のホームページ(https://naturvation.eu/nbs/zurich/mfo-park)