2009年12月 アーカイブ

良好な住宅地であり続けるために 三井所氏+編集局員座談会(1)

 前回は、住政策の専門家である三井所さんにエリアマネジメントという観点から良好な住宅地を維持するための民間事業者の取り組みについてご紹介いただきました。今回は都市計画や建築設計の専門家でもあるジャーナル編集局員を加え、郊外住宅地たまプラーザの課題や価値について議論した座談会の模様をお送りします。

郊外住宅地としてのたまプラーザの特徴

◇ 質も住民意識も高い住宅地
大澤:まず、三井所さんに、たまプラーザの住宅地としての特徴を伺うところから始めたいと思います。

三井所:たまプラーザは、他の郊外住宅地と比べて何がいいかと言うと、フットパスを自然な形で入れ、クルドサックをしているなど、その当時の計画論を踏まえてきちんと作りこんでいることです。緑も豊かで、道路と敷地の生け垣があり、その手前のところにもまた緑を入れるという二重植栽をやっていて、それを維持しようという意識も持たれています。それが協定委員会の立ち上げや、協定の見直しということに表れています。ですから、ハードの環境とそれを維持しようとするソフトの取り組みということに関しては、ある程度完成された状況になっていると思います。

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よく手入れされた「二重植栽」

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良好な住宅地であり続けるために 三井所氏+編集局員座談会(2)

敷地分割は悪か

◇ 何のための180㎡か
大澤:今、たまプラーザでは敷地分割されている事例が多く見られます。この分割というのは、当然地区協定で定められている「1つの敷地は180㎡以上とする」という制約は守っているわけですが、この敷地分割という事象を、ルールを守っているんだから別に問題ないんだと捉えればいいのか、いや180㎡というのはあくまでも最低限の基準であって、本来のたまプラーザ、美しが丘らしさみたいなものから考えると、望ましい規模は300㎡なんだという風に考えるべきなのか。つまり、敷地分割=悪と単純に捉える傾向もありますが、敷地が細分化されていくことの何が具体的によくないのかを考えてみたいと思うのですが。

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良好な住宅地であり続けるために 三井所氏+編集局員座談会(3)

良好な街であり続けるために

◇ 何をもって価値とするのか
川上:結局、考えていくと、何をもって良好な住宅地が維持されたと評価すればいいのかというところにたどり着きます。やっぱり地価なのでしょうか。

大澤:それも一つの指標かもしれないですよね。

川上:それとも生け垣のある家が立ち並ぶ街の姿なのでしょうか。要するに何をもってこの「たまプラーザプロジェクト」を成功だとするんでしょうね。本来、街というのは自然発生的に出来ているから、色々なものの新陳代謝があることで維持できていると思うんです。例えば佐原みたいに、歴史的な何かを残しましょうという街だと、それが維持できているかどうかを一つの評価軸にできるけれども、一気に建ってしまった郊外住宅地というのは、建物の一つ一つにコンセプトがあるわけでもないですよね。何となくの雰囲気で、いい住宅地でしょ?と言ってみても、結局いい住宅地とは何なんだろうと。

 本来は地価が安いということも一つの評価軸だったのにもかかわらず今はやたらと高くなっていますよね。もともといい住宅地を安く供給したかったという思想もあった訳ですから、安く快適に意識の高い人たちだけで住みましょう、みたいな話でもいいんだと思うんです。結局、何を生活環境の基準とするのか、ということですよね。

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