138 ねこじゃらし公園 (日本)

138 ねこじゃらし公園

138 ねこじゃらし公園
138 ねこじゃらし公園
138 ねこじゃらし公園

138 ねこじゃらし公園
138 ねこじゃらし公園
138 ねこじゃらし公園

ストーリー:

 世田谷区の奥沢の九品仏浄真寺に隣接した場所、九品仏川が流れるところに世田谷区が所有している資材置き場として使われている土地があった。世田谷区がここに公園をつくる計画を知った近隣小中学校のPTA役員や地元有志が集まって、1986年頃からその有効活用について意見を交換し始める。最初は幅広い年代の人達が使える温水プールを建設しようと動き始めるが、他の場所でつくられることが決定したため、方向転換をして公園作りへと方針を変える。1991年に「奥沢7丁目公園を考える会」の最初の打ち合わせが行われ、1991年10月には第一回のワークショップが開催される。その後もワークショップを5回ほど繰り返し、1994年4月20日に奥沢7丁目公園(以下、ねこじゃらし公園)が開業することになった。
 それは、区民の要望によって世田谷区が始めてワークショップ形式により、本格的な住民参加の方法でつくりあげた公園であった。
1991年に設立されたNPO玉川まちづくりハウスは、「せっかくの地域の公園だから、住民に納得のいくものがいい」と考え、積極的に住民参加の方法で公園をつくりあげることを支援する。そして、つくりあげた後は「公園はできてからが大事、皆で見守ろう」と呼びかけ、公園を管理する組織を「奥沢7丁目公園を考える会」を母体としてつくる。その名前を「グループねこじゃらし」へと改名し、同グループが、世田谷区と管理協定を結び、公園の運営や管理を実践していく組織となる。具体的には、ゴミ拾いと週に一回の掃除を行っている。
「グループねこじゃらし」は、公園に関する情報を広く伝え、公園を一緒に維持していくことの重要性を共有してもらうために「ねこじゃらし紙」を毎月発行している。これらに加えて、各種イベントを行うなどして、同グループは公園をつくるだけではなく、つくった後もその公園を管理するなど、住民のための、住民によって守り育てられる公園として位置づけられるよう活躍している。その結果、この公園は、今では広く人々に親しまれる公園となっている。

キーワード:

公園づくり, 住民参加, まちづくり, NPO

ねこじゃらし公園 の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:東京都
  • 市町村:世田谷区
  • 事業主体:世田谷区、玉川まちづくりハウス
  • 事業主体の分類:自治体 市民団体
  • デザイナー、プランナー:玉川まちづくりハウス、地域住民
  • 開業年:1994年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 公共空間は誰に属しているのであろうか。その名称から推察するに、それは公共、すなわち地元住民を始めとした人々であろう。しかし、多くの公共空間は人々のニーズをほとんど聞かないでつくられてきた。そして、デザイナーのエゴや行政の勝手な考えにより、多くの公共空間が整備され、その結果、あまり人々が使わず、あまり人々に愛されもしないような公共空間、公園が各地に出現した。今でも、見た目は綺麗だが、誰も使用しないような公園や公共空間を見つけることが多い。
 そのようなニーズとサプライのズレをどのように調整したらよいのだろうか。その一つの解決法が、利用する地元住民にデザインさせてしまう、というやり方である。そして、つくった後の管理も住民に委ねれば、住民のその公共空間に対する社会的責任感も高まるであろう。そのような考えのもとに、つくられたのがねこじゃらし公園である。
 ねこじゃらし公園に行くと、なんかホッとするような気持ちになれる。それは、意図的なデザインの押しつけのようなものを全く感じないからだと思う。ヤゴ池、というネーミングがいかにも行政的ではない。また、公園に設置されている丸太のベンチの洗練されていないつくりや、卵のようなデザインのトイレもちょっと嬉しい気分にさせる。この公園には手作り感が溢れている。
 5回開催されたワークショップの中には、中学生も関わったものがある。中学生はスケートボードランプをつくって、自らが管理したいという提案をした。その提案は実現されなかったが、中学生はその後も、この公園を気に掛けており、イベント時には手伝ってくれたりもしたそうだ。この公園が、まさに地域の人々のものとして認識されたのは、その住民のニーズを反映させたものをつくろうと意図してきたことと、その管理を地域の人々が担ってきているからであろう。
 ねこじゃらし公園ができてから20年以上が経ち、最初にこの公園づくりに中核的に取り組んだ40代の人達も今や60代になってしまっている。一番、年輩な方は81歳であるなどメンバーの高齢化、そして後継者を育成することが課題となっていたりはする。ただ、この素晴らしく魅力的な公園空間だけがねこじゃらし公園の価値ではなく、これをつくり、そして管理するうえで形成された地域のネットワーク、地域の関係性が築けたことこそが、ねこじゃらし公園の真に評価すべき点であると思う。難しい課題を抱えつつも、ねこじゃらし公園によってつくられた地域力によって、今後も地域住民のための公園としての役割を果たしていき、地域住民の豊かさの源になっていければ、それは素晴らしいことであるし、そのような公園が存在していることは我々を勇気づけてくれる。

【参考資料】「ねこじゃらし公園の10年」
【取材協力】林泰義、小西玲子 、浦辺やすこ

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