市場(マーケット)に関する事例

301 伝泊

(鹿児島県)

「伝泊」は奄美大島、加計呂麻島、徳之島にある宿泊施設・複合施設。「伝統的・伝説的な建築と集落と文化」を次世代に伝えることを目的とし、奄美の建築家、山下保博氏によって計画された。空き家などの「負」の地域資産を再活用し、地域アイデンティティを掘り起こした創造的な事業として高く評価され、2020年ジャパン・ツーリズム・アワード(国土交通大臣賞、倫理賞、ダブル受賞)など数々の賞を受賞している。

292 オールド・マーケット・ホール

(フィンランド共和国)

ヘルシンキの青空市場であるカウパットリは、ヘルシンキを代表する都市空間であるが、それに隣接したこのオールド・マーケットホールもヘルシンキのシンボル的な都市空間である。2014年に1500万ユーロをかけてリノベーションが施されたが、その歴史的な雰囲気はしっかりと保全されている。

291 下北沢の東洋百貨店

(東京都)

下北沢というマチの魅力は深層にあり、表面をなぞっただけではその魅力がよく分からない。しかし、一見の人でも分かるように、その層が地表に現出している場所がある。それこそが東洋百貨店である。

287 屋台空間カドレ(Ca'dore)

(ブラジル連邦共和国)

クリチバの北東部・バカチェリ地区で操業していた煉瓦工場の跡地につくられたアウトドアのフード・コート。再開発にあたってはサステイナブルな面が意識されており、店舗はコンテナを再利用したものとし、通路もリサイクルした建材を使っている。家族連れ、カップル、若者など、皆が楽しめるような空間づくりを目指している。「都市の鍼治療」提唱者であるジャイメ・レルネル氏も「素晴らしい空間」と高く評価した。

251 杭瀬中市場の再生

(兵庫県)

兵庫県尼崎市の杭瀬市場は、個店の寄せ集めであり、それに起因する多様性、不確定性がもたらす魅力はショッピング・センターにはみられない。ここには風変わりな古本屋や、市場の食材を使った料理を提供する食堂、一階が和菓子屋で二階がレコード屋というユニークな店舗ミックスなどが具体化している。それは、市場マーケティングなどではとても出てこない、経営理論や経済理論を越えた現象である。

241 シティズンシップ・ストリート

(ブラジル連邦共和国)

シティズンシップ・ストリートは、バス・ターミナルに設けられた複合公共施設である。日本の鉄道事業者も「駅ナカ」というコンセプトで駅に商業施設を中心とした店舗を設けることになったが、クリチバはそのような動きに先んじて、バス・ターミナルにおいて、収益事業だけではなく、公共的な事業・サービスを提供したという点に、この都市の創造性、問題解決能力の高さを感じる。

236 タグボート大正

(大阪府)

大阪市大正区のウォーターフロントに出現した複合商業施設「タグボート大正」は、人口減少に悩む地元のまちづくりを牽引する役割が期待されている。河川沿いの商業施設自体が日本では珍しいが、ここでは河川に係留された船が商業施設として利用されており、日本では初めてのケース。河川法を含め、多くの障害を乗り越えて実現に辿り着いたユニークなプロジェクトである。

233 グラン・プラス

(ベルギー)

ブリュッセルという商都のアイデンティティをまさに具現化したような広場。17世紀末、ルイ14世の軍隊によって破壊されるが、その蛮行への意趣返しを意図したかのように、広場を囲む建築物は美しい調和を奏で、その煌びやかな装飾はパリのどんな広場よりも贅沢で瀟洒なものとなった。

214 ヴィクトアーリエンマルクト

(ドイツ連邦共和国)

ミュンヘンの中心部にある、地産地消をメインとした食料品市場であり、広場。第二次世界大戦後、移転・再開発問題にも揺れたが、移転することなく、現在も旧市街地のランドマークとして活気に溢れている。地域文化を開発から守り、本質的な価値を次世代に継承しようとする強い意志が感じられる。

184 ザンド広場の再生

(ベルギー)

歴史的地区が世界遺産に指定されているブルージュにおいて、新たに都市を改造する機会はほとんどない。そのような状況下では、歴史的地区の縁に存在するヘト・ザンド広場のリ・デザインは、ブルージュにとって多くの課題を解消させる千載一遇の機会であった。

153 フェスケショルカ

(スウェーデン王国)

市場に第一に求められているのは、しっかりと物流拠点として機能することであるが、その市場に優れた建築的意匠を施すことで、それは都市を代表するランドマークになり、人々が愛着をもつ空間になることができる。

151 オックスフォード・カバード・マーケット

(イングランド)

250年の歴史という時間の積み重ねといった重みに加え、基本的に個店しか立地できないルールをつくることで、その独自性、アンチ・ショッピングセンター化を指向してきた。そして、それが、このマーケットの揺るぎないアイデンティティ形成に寄与してきたのである。

142 グランヴィル・アイランド

(カナダ)

グランヴィル・アイランドは北米の都市再開発の成功事例として知られている。その理由としては、多くの地元の人が利用していることが真っ先に挙げられるであろう。カナダ住宅金融公社が作成した基準は、賃貸が高くなることを防止し、この場所にオーセンティシティをつくることにつながるような工芸品の製造業や、小売店、文化的な活動を支援することに成功している。

104 メトロポール・パラソル

(スペイン)

完成してから5年、この建物は近代的で極めてユニークな意匠が為されているにも関わらず、世界遺産にも指定されている地区を擁するセビージャの旧市街地に見事に融和している。

073 ボケリア市場

(スペイン)

ボケリア市場はバルセロナのランブラス通り沿いにある公設市場。2013年2月にCNNが発表した「生鮮市場の世界ベスト10」ランキングでは、ボケリア市場は二位の東京の築地市場を押さえて一位であった。

054 ポートベロ・ロード・マーケット

(イングランド)

ロンドンの西部にあるケンジントン地区にポートベロ・ロード・マーケット(通称:ポートベロ・マーケット。以下、これで統一する)。
銀行の休日以外は、月曜日から日曜日まで毎日、何かしらの市が立っているが、最も多くの人出を見るのは土曜日の骨董市である。土曜日だとおよそ10万人が訪れると推測されている。

006 バロー・マーケット

(イングランド)

ロンドンのバロー・マーケットは、イギリス最古、かつ最大の屋外市場である。1755年に地元住民が6,000ポンドほどで、王様からマーケットを開催する権利を獲得。この権利は未来永劫のもので、バロー・マーケットは、信託統治されているロンドン唯一の自治市場なのだ。

005 パイク・プレース・マーケット

(アメリカ合衆国)

シアトルの公設市場であるパイク・プレース・マーケットは、シアトルのまさに心臓ともいうべき中心地に位置している。公設市場で現在も営業しているものとしては、アメリカでも最も古いものの一つ。公設市場は、都市の鍼治療的に捉えると極めて重要な「ツボ」である。

インタビュー

ジャイメ・レルネル氏インタビュー

(建築家・元クリチバ市長)

「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)

鈴木伸治氏インタビュー

(横浜市立大学国際教養学部教授)

ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。

柴田久 福岡大学教授インタビュー

(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)

都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。

高尾忠志(地域計画家)インタビュー

(地域計画家)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。

鳴海邦碩氏インタビュー

(大阪大学名誉教授)

1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。

中村ひとし氏インタビュー

(クリチバ市元環境局長)

シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。

対談 福田知弘 × 服部圭郎

(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)

お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。

対談 阿部大輔 × 服部圭郎

(龍谷大学政策学部にて収録)

「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。

岡部明子氏インタビュー

(建築家・東京大学教授)

「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)

今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。

土肥真人氏インタビュー

(東京工業大学准教授)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。

饗庭伸教授インタビュー

(東京都立大学都市環境学部教授)

人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。

お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授