九州・沖縄地方」の事例

082 警固公園のリニューアル・デザイン

(福岡県 )

一年前、天神を訪れ、西鉄ソラリアの前のこの公園を発見して驚いた。日本にもまともな広場が存在することを知ったからである。それは、ポートランドのパイオニア・コートハウス・スクエアやゴスラーのマーケット・スクエアをも彷彿させる、ほぼ完璧な広場であった。

180 門司港レトロ

(福岡県 )

門司港レトロとは、JR門司港駅周辺地域にある歴史的建造物を中心に、大正レトロを意識して修繕、空間演出をした事業である。門司港レトロを訪れた人は、「良くこれだけ歴史建築物が残っていた」と感心するそうだが、これらのほとんどが取壊の瀬戸際に立たされていた。

181 門司港駅の改修と広場の再生

(福岡県 )

門司港駅の復元事業は素晴らしいものであるが、それと同時に、建物だけではなく、その駅前広場を再生させることで、その都市空間的機能をも再編成させてしまった。この二つを同時に行えたことで、この駅の建物としての魅力はもちろんのこと、その駅の公共性も大きく向上させることに成功した、見事な「都市の鍼治療」事例であると考えられる。

205 柳川市の堀割の復活

(福岡県)

福岡県柳川市は市内を堀割が縦横に流れている水郷都市である。堀割には一切の柵がなく、家などの建築物と見事に調和した田園景観をつくりだしている。人と自然環境とが見事に共存できている素晴らしい事例だと、ここを初めて訪れた人達は思うだろう。まさか、この堀割が埋め立て工事によって消滅寸前の危機に直面したことがあったなどということは想像できないのではないだろうか。

215 眼鏡橋の保全運動

(長崎県)

長崎市の中島川に架けられた、日本最古といわれるアーチ式の石橋。長崎市のランドマークとして強烈な存在感を放っている。1982年の長崎大水害で一部損壊し、復興事業によって撤去される計画が進められたが、地域文化の保全をめざす市民らの奮闘を受け、撤去計画が見直された経緯を持つ。

220 出島表門橋

(長崎県)

出島表門橋は、物理的に現在の長崎市と復元されつつある出島を結ぶというだけではない。それは現代の長崎と鎖国時代の長崎とを時間を越えて結ぶ役割をも担っている。それは、忘れられていた出島という都市の記憶を現在へと繋ぐタイムマシーンのようなものだ。そして、その役割を見事に象徴させているのが、この橋のデザインであると考えられる。

231 長崎稲佐山スロープカー

(長崎県)

長崎の絶景が楽しめる観光ルートとして、稲佐山中腹の駐車場から山頂までの600メートルを結んで2020年に開業したスロープカー。その洗練されたデザインと、スロープカーの車窓からの展望も見事であり、それ自体が一つの観光の目玉になっている。

237 長崎水辺の森公園

(長崎県)

この公園は、港そして対岸の山並を展望する視点場としても極めて優れており、長崎という恵まれた自然景観を楽しむことができる。また、平地が少なく、広い空間が乏しかった長崎中心部に人が集まる開放的な空間を創出した。2004年にグッド・デザイン・アワード、2006年に土木学会デザイン賞、2013年には長崎市景観賞を受賞している。

239 由布院駅周辺の交通体系再編成

(大分県)

駅前の渋滞・混雑に悩まされてきた由布院駅周辺は、ちょっとした一方通行の環をつくって自動車の動線を簡潔化することにより、人々のモビリティを大幅に向上させた。モータリゼーション以前に駅前空間を整備した観光都市などにおいては、大いに参考にする価値があると思われる。

240 由布院駅

(大分県)

都市の中央駅をうまく活かすことで、都市の多くの問題を改善させることが可能になる。由布院駅は、設計者に大分出身の世界的な建築家・磯崎新氏を起用。中央駅というものの象徴性、玄関口としての機能をしっかりと担いながら、湯布院の雰囲気づくりにも重要な役割を果たしている。

245 大分いこいの道

(大分県)

都心部における緑地不足の状況を改善したこの事業のポイントは、4車線・幅20メートルの車道を集約的に配置することで、駅前という一等地において市民が憩える緑の広大なる芝生広場をつくることに成功したことにある。2014年には第1回九州まちづくり賞(ホルトホール大分と大分いこいの道の一体的整備によるにぎわいの創出)、2019年には景観大賞(大分駅南地区)を受賞している。

255 リノベーション・ミュージアム冷泉荘

(福岡県)

冷泉荘は福岡市の上川端商店街に1958年に建築されたレトロなビル。レトロではあるが、古さは感じられないこのビルこそ、福岡発のリノベーション・ブームを牽引してきた吉原住宅が手がけた代表的なビルであり、ビル単体だけでなく、周辺にもプラスの効果をもたらした事例である。

262 Wine Houseやまつづら

(福岡県)

福岡県太宰府市にある街なかのアパート。ほとんど空き部屋となっていたが、筑紫女学園大学の教授であった上村真仁氏が部屋を借り上げ、学生の企画に基づくリノベーションが実現した。現在、学生、上村氏、ワインの専門家の3者の共同事業によるワインショップが運営されている。

265 さいき城山桜ホール

(大分県)

住民参加がなぜ必要なのか。それをする意義はどこにあるのか。このような質問に見事に回答してくれるのが「さいき城山桜ホール」である。逆境を乗り越えるために市民参加を徹底的に推し進めた結果、魅力あふれる市民の広場が実現した。2021年、国土交通省「都市景観大賞」受賞。

273 長崎の斜面移送システム

(長崎県)

急斜度で知られる長崎市の住宅地を、定員2名のまさに電話ボックスのような箱が分速15メートルで移動する。乗車できるのは地元住民のみで、専用のカードが必要。利用は無料だ。移動スピードは歩いているようなものであるが、長い階段を登らなければならない高齢者にはまさにオアシスのように思われるのではないだろうか。

274 オモケンパーク

(熊本県)

熊本市の中心街である上通のアーケードに、ちょっとセットバックをした空間がある。幅6メートルと間口は決して広くはないが、光が差し込む居心地のよい空間は、人口縮小時代に悩まされ閉塞状況にある商店街に新鮮な空気を送りこんでいるかのように見える。

277 鶴田商店

(長崎県)

長崎県の五島列島最大の島、福江島に位置する玉之浦町。人口減少の激しい集落であるが、2022年1月、ここに「鶴田商店」が開業した。玉之浦教会のそばにある空き家であった木造二階建てを、所有者から借りて改装したものだ。現在、ここでは地元で捕獲した鹿肉を使って開発をした「ジビエバーガー」や「ジビエカレー」などを販売している。

288 名山町の「バカンス」

(鹿児島県)

鹿児島市名山町の「バカンス」。周りに近代的で大きな建物が林立している中、この周囲だけはまるで時間が止まったかのように昭和レトロな雰囲気が漂っている。1階はキッチンスペース、2階は4畳半の小さな空間であるが、そこは狭い路地ゆえに「再建築不可」の空き家がつくりだした、奇跡的なパブリックな場所である。

301 伝泊

(鹿児島県)

「伝泊」は奄美大島、加計呂麻島、徳之島にある宿泊施設・複合施設。「伝統的・伝説的な建築と集落と文化」を次世代に伝えることを目的とし、奄美の建築家、山下保博氏によって計画された。空き家などの「負」の地域資産を再活用し、地域アイデンティティを掘り起こした創造的な事業として高く評価され、2020年ジャパン・ツーリズム・アワード(国土交通大臣賞、倫理賞、ダブル受賞)など数々の賞を受賞している。

302 奄美群島の黒糖焼酎

(鹿児島県)

鹿児島県の奄美群島には、そこでしか製造することができない黒糖焼酎というお酒がある。黒糖焼酎には、この地域のユニークな生態系や、独特な文化、伝統といった風土が反映されており、その地域アイデンティティの象徴のような役割をも果たしている。

インタビュー

ジャイメ・レルネル氏インタビュー

(建築家・元クリチバ市長)

「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)

鈴木伸治氏インタビュー

(横浜市立大学国際教養学部教授)

ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。

柴田久 福岡大学教授インタビュー

(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)

都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。

高尾忠志(地域計画家)インタビュー

(地域計画家)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。

鳴海邦碩氏インタビュー

(大阪大学名誉教授)

1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。

中村ひとし氏インタビュー

(クリチバ市元環境局長)

シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。

対談 福田知弘 × 服部圭郎

(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)

お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。

対談 阿部大輔 × 服部圭郎

(龍谷大学政策学部にて収録)

「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。

岡部明子氏インタビュー

(建築家・東京大学教授)

「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)

今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。

土肥真人氏インタビュー

(東京工業大学准教授)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。

饗庭伸教授インタビュー

(東京都立大学都市環境学部教授)

人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。

お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授