012 パセオ・デル・リオ(アメリカ合衆国)

012 パセオ・デル・リオ

012 パセオ・デル・リオ
012 パセオ・デル・リオ
012 パセオ・デル・リオ

012 パセオ・デル・リオ
012 パセオ・デル・リオ
012 パセオ・デル・リオ

ストーリー:

 サンアントニオはテキサス州三番目の都市で人口は100万人ほどである。サンアントニオは有名なアラモ砦の戦いでアメリカが勝利するまでは、スペイン領であったテキサスの首都であったこともあり、ヒューストン、ダラスとは全く異なる趣のある都市である。
 サンアントニオの中心部にはサンアントニオ川が流れているのだが、この川沿いがパセオ・デル・リオ(リバーウォーク)と呼ばれる歩行者空間となっている。この歩行者空間は道路より一段下のレベルにあるため、自動車道路を交叉することなく、サンアントニオの都心を快適に歩いて移動することを可能とする。また、川沿いのランドスケープ・デザインがしっかりとされているため、樹木や草花が生い茂り、歩行を快適にすることに加え、歩道に沿ってレストランやカフェが営業しているため、都市的な賑わいも備えている。さらには、円形劇場といった広場的な装置もあり、しかも対岸に座席が置かれているので、川をはさんでパフォーマンスを観るといった見事な空間利用も為されている。まさにサンアントニオという魅力あふれる都市を象徴する、素晴らしい都市空間がパセオ・デル・リオなのだ。
 さて、しかし、このパセオ・デル・リオが実現するためには多くの障壁が立ちはだかった。そもそも、この都心部を通るサンアントニオ川は、死者50名を出した1921年の洪水を機に、都市の上流にダムをつくり、暗渠化することが計画された。しかし、ダムは完成しても暗渠化の計画は、サンアントニオ保全協会の反対によって阻止された。暗渠化の代替案として、川沿いに歩道を整備するというパセオ・デル・リオに通じる計画案が、ロバート・ハグマンという地元の建築家によって1929年に提案された。これはしばらくの間、放っておかれたのだが、地元の有力な政治家であり前市長であったジャック・ホワイトによって、それを実現させるための「サンアントニオ美化プロジェクト」が1938年に策定され、そのための予算も獲得された。このプロジェクトによって、4キロメートルに渡るサンアントニオ川沿いの歩道、パセオ・デル・リオが整備されることになった。
 その後、現在まで、少しずつ歩道は延長されてきているが、現在の骨格の主要部分が完成するのは1968年の万博開催時であった。このとき、コンベンション・センターが都心部につくられ、観光客をターゲットしたレストランも30軒ほどが開業した。さらには、1981年にはサンアントニオ随一の観光名所であるアラモ砦と接続され、1988年にはパセオ・デル・リオ沿いにつくられたショッピング・センターであるリバーセンターとも接続されるなど、都心の主要施設をネットワーク化している。その結果、パセオ・デル・リオの魅力を増すだけでなく、都心部のアクセスを大幅に改善することで、都心の魅力を向上させることにも大きく寄与している。

キーワード:

ウォーターフロント,アイデンティティ,歩道,アクセス

パセオ・デル・リオの基本情報:

  • 国/地域:アメリカ合衆国
  • 州/県:テキサス州
  • 市町村:サンアントニオ市
  • 事業主体:The Paseo del Rio Association
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Robert H. Hugman (デザイナー)、Jack White(提唱者)
  • 開業年:1939

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 パセオ・デル・リオは、素晴らしい都市空間が持つべきほとんどすべての要素を兼ね備えている。まず都心の高層ビルの足下において、ヒューマン・スケールの空間をつくりあげている。しかも、自動車とは交叉することなく、歩行者は自由に都心部を移動することを可能とする。しかも、水や生い茂る樹木、草花が彩るアメニティ溢れる空間は、まさに公園の中を歩いているような快適性に溢れている。加えて、歩道沿いにはレストランやカフェなどが立地していて、歩いて飽きることがない。ちょっと疲れたら、これらの店で一服をしたり、空腹を満たしたりすることもできる。青空劇場があったり、大道芸人もいたりして、舞台としての都市の魅力をも有している。このような魅力溢れる空間であるために、ここは多くの人が行き来する。結果、この空間は都市的な賑わいに満ちあふれていることになる。都市が有するいいところを集約させたような回廊状の空間を形成しているのだ。
 このパセオ・デル・リオを暗渠化していたら、サンアントニオはまったく別の都市になってしまったであろう。サンアントニオ川は一時期、洪水の原因として、都市の問題として捉えられていたのだが、この問題を見事に肯定的に捉えることで、マイナスをプラスへと変換したことによって、都市は大きく輝きを放つようになった。レルネル氏が口癖のように言う「問題こそ解決」を、まさに実現した素晴らしき都市の鍼治療事例である。

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