ブラジルの環境都市として知られるクリチバは、1989年にジャイメ・レルネル氏が三期目の市長として当選してから、「環境都市」を施策目標として掲げる。そして、低所得者層が多く住んでいたフェベラ地区のごみ問題の解決策として「ゴミ買いプログラム」を導入し、見事、大きな成果をあげる。
しかし、この「ゴミ買いプログラム」はファベラ地区限定のものであった。クリチバ市はブラジルの中では相当、豊かな都市であるが、それでもクリチバ市民は約8割が、最低賃金の3倍以内の収入しか得ていない。ファベラ住民でなくても、ごみを食糧と交換してくれる「ゴミ買いプログラム」は魅力的であった。彼らが「ごみ買いプログラム」を、ファベラ地区以外にも提供してくれと要望したことでできたのが、この「緑との交換プログラム」である。
低所得者層の住民は税金も支払うし、ごみの回収トラックが入れる。したがって、これらの地区においては、リサイクルごみのトラックが回収に行き、リサイクルごみと野菜と交換するプログラムとした。野菜とゴミとの交換比率は重量で1:4とした。すなわち、ゴミを4キロ持ってくれば、1キロの野菜と交換してもらえるようにしたのである。このプログラムは1991年に開始された。最初の日にはレルネル自らが、トラックに乗ってキャベツを配った。季節の野菜で、低価格で販売されているものを市としては交換用に購入するようにしているそうだ。
「ごみ買いプログラム」の実施されていた地域は、道路も改善され、ごみ回収トラックが入れるようになって、どんどん「ごみ買いプログラム」を卒業して、「緑との交換プログラム」に移っている。この緑の交換プログラムが実施されている箇所は、私が最初に調べた2002年には63カ所、2007年には78カ所、そして現在(2012年)では90カ所ほどあるそうだ。
028 緑との交換プログラム(ブラジル連邦共和国)







ブラジルの環境都市として知られるクリチバは、1989年にジャイメ・レルネル氏が三期目の市長として当選してから、「環境都市」を施策目標として掲げる。そして、低所得者層が多く住んでいたフェベラ地区のごみ問題の解決策として「ゴミ買いプログラム」を導入し、見事、大きな成果をあげる。
緑との交換プログラムの基本情報
- 国/地域
- ブラジル連邦共和国
- 州/県
- パラナ州
- 市町村
- クリチバ市
- 事業主体
- クリチバ市
- 事業主体の分類
- 自治体
- デザイナー、プランナー
- 中村ひとし(当時、クリチバ市環境局長)
- 開業年
- 1991
ストーリー
地図
都市の鍼治療としてのポイント
クリチバの三大ごみプログラムは「ごみとごみでないごみ」、「ごみ買いプログラム」、そして「緑との交換プログラム」である。これらに共通するのは、それらが単にごみを処理するためだけの政策ではないことだ。ごみ収集やごみ分別も、単に政策のためだけにやるとあまり意味がない。どんなに貧乏なファベラの人々も環境的に正しい人でなければならない。だから、環境教育の一環としてやる。
ただ、ごみを収集するだけの政策ではない。貧しい人たちはどちらかと言えば、毎日の生活に追われている。そういう人たちに対して「緑は大事だよ」と言っても効果がない。直接的に訴えかけるのではなく、一つ間を置いて、「このごみは普通のゴミと違う、値打ちがあるんだ」ということを実際にバナナと交換して理解してもらう。そうすると「リサイクルごみは、普通のごみとは違うのだ」と理解し、結果、間接的に環境教育が行われる。
社会政策的な意味が強い「ごみ買いプログラム」に対して、ファベラではない地区においては、リサイクル教育という環境政策的な意味をもたらした。問題解決を多面的に捉えることに長けたクリチバらしい素晴らしい「都市の鍼治療」である。
ただ、ごみを収集するだけの政策ではない。貧しい人たちはどちらかと言えば、毎日の生活に追われている。そういう人たちに対して「緑は大事だよ」と言っても効果がない。直接的に訴えかけるのではなく、一つ間を置いて、「このごみは普通のゴミと違う、値打ちがあるんだ」ということを実際にバナナと交換して理解してもらう。そうすると「リサイクルごみは、普通のごみとは違うのだ」と理解し、結果、間接的に環境教育が行われる。
社会政策的な意味が強い「ごみ買いプログラム」に対して、ファベラではない地区においては、リサイクル教育という環境政策的な意味をもたらした。問題解決を多面的に捉えることに長けたクリチバらしい素晴らしい「都市の鍼治療」である。
類似事例
ごみとごみでないごみ、クリチバ(ブラジル)
水俣市の「ごみ分別事業」(水俣市、熊本県)
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