103 魚らんラボラトリー(魚ラボ) (日本)

103 魚らんラボラトリー(魚ラボ)

103 魚らんラボラトリー(魚ラボ)
103 魚らんラボラトリー(魚ラボ)
103 魚らんラボラトリー(魚ラボ)

103 魚らんラボラトリー(魚ラボ)
103 魚らんラボラトリー(魚ラボ)
103 魚らんラボラトリー(魚ラボ)

ストーリー:

 魚らん商店会は港区の白金高輪駅そばにある商店街を主体とした組織である。その会議室を明治学院大学の経済学科の服部ゼミナールが2013年から週に2回ほど借りて、商店街を対象とした地域研究を行っている。そして、その縁で商店街のイベント等に学生を参画させてもらったり、地元のゆるキャラを作成したりする、地元のローカル・アイドルを結成させるなど、地域の情報発信に取り組んでいる。
 服部ゼミでは、ここをベースとして二週間に一度、『魚らぼ通信』という壁新聞を発行している。学生達が企画をして、取材をして、執筆をして、そして商店会の掲示板や地元の小学校、商店に配布している。そして、そのような活動を通じて構築されたネットワークを通じて、地域のお祭りとかイベントとかに参加したり、また、学生の多くは、これらの活動をベースとしたものを卒論の題材としたりしている。
 服部ゼミの学生は、商店街と協働したプロジェクトを実践している。その代表的な事例が、魚らん坂のゆるキャラ・コンテストである。このコンテストでは、地元のゆるキャラを地元中心に公募し、商店街の年末のイベントである「福引き大会」にて、応募作品から最優秀賞を決めてもらった。学生達はこのコンテストの周知を図るために、近隣の小学校に出向き、その内容の説明とアイデアを募ると同時に、応募を促す動画を製作し、ユーチューブでアップしたりした。これらの活動が功を奏し、90近くの応募があり、それらの中から選んでもらったゆるキャラが「ぎょらにゃン」である。これは、魚を食べようとしたら逆に魚に食べられてしまった猫という設定で、近隣に住むお母さんの作品であった。
 現在では、魚らん坂の知名度を向上させるためにも、このゆるキャラを有名にしようという活動を展開している。中国人の留学生がゼミ生にいたので、彼に頼んで、中国でぎょらにゃンの着ぐるみを製作してもらった。そして、2014年から3年間連続してゆるキャラグランプリに出場。2016年は全国で169位(総数1429体)の投票数であった。ぎょらにゃンは週に一度、近所をお散歩したり、周辺地域で活躍するゆるキャラとコラボレーションしたり、また地元のお祭りなどのイベントに出演したり、さらにはテーマソングを作曲し、そのプロモーション・ビデオも制作し、ユーチューブ等で発信もしている。これらの活動はSNSで情報発信をしており、全国放送のラジオから出演依頼も来たりして、徐々にぎょらにゃンの知名度は向上している。商店街も、このぎょらにゃンをデザインに用いた幟や団扇などをつくってくれたり、ぎょらにゃンの焼き印がついたどら焼き「ぎょら焼き」を販売してくれたりするなどして、その活動を支援してくれている。
 また、ユルドルSKMというローカル・アイドルも結成した。ただし、アイドルらしい営業活動は一切しない、自分達が楽しむことを優先させる「ユルイ」アイドル・グループとして位置づけた。周知を図るためにCDの製作もした。彼女たちは、お祭りなどのイベントでパフォーマンスをして来訪者を盛り上げると同時に、ローカル・アイドルの社会的意義、職業としての特性などを研究した。
 大学が地域に入り、様々な活動を展開するのはちょっとした流行になっているが、ゆるキャラをつくったりローカル・アイドルを結成したりするような事例は珍しいと考えられる。

キーワード:

コミュニティ再生,商店街活性化

魚らんラボラトリー(魚ラボ) の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:東京都
  • 市町村:港区
  • 事業主体:明治学院大学服部ゼミナール
  • 事業主体の分類:大学等教育機関
  • デザイナー、プランナー:服部圭郎、服部ゼミナール
  • 開業年:2013年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 自分(服部)が関与している事例をプロジェクトとして紹介するのは気が引ける。しかし、4年間ほど魚らんラボラトリーを運営してきて、それが学生の教育手段だけではなく、多少なりともまちづくりにも貢献できた点もあると捉えられるので紹介させていただいた。
 まちづくりに必要なものは「よそ者、馬鹿者、若者」とよく言われる。大学生はこの3つの条件をすべて満たしている街にとってはお宝のようなものである。しかし、商店街はどちらかというと消費者としては魅力のない貧乏な大学生には興味がない。そして、大学生は「よそ者」で「馬鹿者」で「若者」ではあるが、必ずしも商店街に興味を持っている訳ではない。したがって、その二つを化学反応させるには、学生を商店街に連れて行く必要があるし、そこで触媒のような働きをさせることが必要である。そのような仕掛けとして、魚らんラボラトリーは重要な役割を担うことができた。触媒は、私のような教員や地元のお寺の住職さん、若者に興味のある商店街以外のおじさんやおばさんがその役割を担うことになった。
 いろいろと紆余曲折はあったが、2016年末に行った商店街の人々へのアンケートでは、「ぎょらにゃン」、「お祭りやイベントの支援事業」については100%の回答者が「大変評価する」、「どちらかといえば評価する」と回答しており、「魚ラボ通信」については90%が「大変評価する」、「どちらかといえば評価する」と回答するなど、総じて肯定的に受けいれられていると理解できる。
 学生の教育目的を最優先に取り組んだ事業ではあるが、街の人達にも受け入れられ、多少のまちづくりにも貢献することができたウィン・ウィンの事例であると考えられる。

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