025 北浜テラス(日本)

025 北浜テラス

025 北浜テラス
025 北浜テラス
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025 北浜テラス
025 北浜テラス
025 北浜テラス

ストーリー:

 大阪は水の都である。しかし、戦後は多くの世界中の工業都市同様、その水に目を背けて都市はつくられていった。そして、しばらく経つと、住民にとって水は縁遠いものとなってしまった。一方で、水はその都市にとって貴重なアメニティ資源である。都市の魅力を向上させていくうえで、水を活用しない手はない。世界中の多くの都市がウォーターフロントを活かしたまちづくり、都市再開発を1980年代頃から積極的に展開するようになった。
 大阪市もその優れたウォーターフロントを活用するために、様々な施策を進めていく。特に北浜テラスの対岸にある中之島周辺では、中之島遊歩道の整備、中之島公会堂の改修など、親水性を高めた水辺空間の整備が行われてきた。数々のイベントや催しなども実施されてきた。
 この素晴らしい都市空間を楽しむための仕掛けとして、土佐堀川の堤防にまで伸びている川床テラスを設けているレストラン、喫茶店がある。冬はともかくとして、初夏の昼下がりにこのテラスでコーヒーを飲んだり、また熱帯夜にここでビールを飲んだりすると最高な気分になれる。日本の都市としてはめずらしく、しっかりとした都市デザインが為された中之島遊歩道とウォーターフロント、中之島公会堂といった美しい都市景観を対岸に眺めながら食事などができる。このようなテラスを川に出している店舗が、2014年5月には9つほどある。
 しかし、このような仕掛けは、これまで違法であった。河川法では河川敷地で飲食施設等の営利利用・常時占用を許可していないからだ(京都の鴨川の川床は常時占用ではない)。私有地に設置されたテラスが、公有地の堤防にまで延長されることは、許可されることはなかった。それが実現できたのは、それぞれが別なフィールドで街づくりに携わっていたNPO、店舗オーナー、地主が、「川と街の連続性をつくりたい」、「大阪ならではの風物詩をつくりたい」との想いを共有し、そのためにも土佐堀川にテラスを設置しようという目的を共有し、協働することで、その熱意で動いた地方行政が、積極的に法の拡大解釈を認めるように、中央政府に許可してもらうよう粘り強く交渉した結果である。このような、様々なプレイヤーが協働したことで、民間の任意団体としては全国で初めて、河川敷の包括的占用者として許可を受けることができたのである。

キーワード:

ウォーターフロント,コミュニティ・デザイン,景観デザイン

北浜テラスの基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:大阪府
  • 市町村:大阪市中央区
  • 事業主体:北浜水辺協議会
  • 事業主体の分類:市民団体
  • デザイナー、プランナー:泉英明、松本拓
  • 開業年:2009

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 責任を取るというプレッシャーは、良好なる「都市の鍼治療」の実現を妨げる大きなブレーキである。もちろん、責任をしっかりと取ることは、社会が円滑に展開していくうえでは極めて重要である。しかし、責任を取ることが嫌だ、責任を取ることを回避するという思考回路に陥ってしまうと、すべきことが出来なくなってしまう。
 北浜テラスを実現させるうえで大きな役割を果たしたコミュニティ・デザイナーである泉英明さんは、俺が責任を取るからやってみろ、と言った人が民間(水都大阪2009実行委員会)において出現した「奇跡」によって、これが可能になったという。河川の常時占拠をするうえで、大阪府は国と折衝し、河川法準則の拡大解釈を訴え、そして条例も変えた。この民間と行政の熱意、粘り強い交渉が、北浜テラスを実現させるうえでは不可欠であった。
 一方で、責任を取るからやれ、と言った人が出てきたことが「奇跡」というのは、ある意味で寂しい話である。もっと積極的に市民の熱意をくみ取る人が出てくることによって、多くの都市は現状を改善させることができるのではないだろうか。北浜テラスは、そういうことを考えさせる素晴らしい「都市の鍼治療」事例であると思われる。

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