090 デッサウ「赤い糸」

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キーワード:

アイデンティティ ,ドイツ ,人口減少 ,減築 ,縮小都市 ,跡地利用

ストーリー:

 ドイツのザクセン・アンハルト州にあるデッサウ市。バウハウスで有名だが、ドイツ再統一以降、人口減少が著しい。そして、それに対抗するために、バウハウスを中心としてザクセン・アンハルト州そしてデッサウ市は様々な縮小政策を打ち出すこととなる。その中でも、デッサウの縮小政策の考え方を象徴的に表しているのが、「赤い糸」というプロジェクトである。
 これは、建物を撤去した後に生じる「ランドスケープ・ゾーン」というコンセプトを公共空間として導入するためのコミュニケーン戦略である。それは、「ランドスケープ・ゾーン」として新たに生じることが計画されているオープン・スペースを結ぶ約5キロメートルの歩道であり、この歩道沿いには「赤い旗」が掲げられている。このルートを歩くことで、建物や社会盤施設を撤去することによって生じたオープン・スペースをめぐることができ、将来のオープン・スペースのネットワークがどのようにつくられるかが体感的に理解できるようになっている。
 その目的は「都市開発を解説し、人々を動かすこと」。すなわち、抽象的なコンセプトを具体的なアクションへと繋げ、空間にコンセプトを付加させることである。デッサウの縮小政策は、撤去した跡地の空間をデザインすることに力を注いでいる。これは、「図」ではなく「地」をデザインするという考えなのだが、これまでの都市デザインとは違った発想、取り組み方が求められる。「図」のデザインは都市開発を促進する人々に大きなインセンティブを与えるが、「地」のデザインはそれを与えない。なぜなら、「図」と異なり、「地」は貨幣的な価値を生み出さず、企業にとってはまったく魅力がないからだ。そのため、「地」のデザインは必然的に市民が主体として取り組まなくては成功しない。ここで行政がデザインできるではないか、と考えるのはナイーブである。というのは、これら新たにつくり出された「地」が生命を孕み、成長していくためには、市民の愛着とコミットメントが不可欠であるからだ。そのためには、市民をデザイナーとして位置づけることが必要となる。
 「赤い糸」はアスファルトの歩道に赤い線が引かれただけのものである。しかし、それは人々の興味を喚起し、新たに生じつつあるランドスケープを認識させ、さらに、それに対しての帰属意識と責任感のようなものを醸成させる契機となるようなシステムである。その赤い線は、デッサウの市民達を現在から未来へと結ぶ重要な道標として機能しているように思えてくる。

(出所:服部圭郎 『ドイツ・縮小時代の都市デザイン』 学芸出版社 2016)

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 縮小している都市は寂しい。人が減ると、人に付随しているエネルギー、活力のようなものも失われていく。改めて、都市は「人」が集まることによって形作られていくことをデッサウの高層の建物から展望すると気づかされる。そこからの展望は、撤去された建物の跡地が虚しく広がり、まちを動かすエネルギーのようなものを感じることができない。
 しかし、このような厳しい社会的課題にデッサウは果敢に取り組んでいる。バウハウス・デッサウ基金を拠点として、この人類が直面している「縮小」という新しい課題にどのように対処すべきか、研究そして実験をしているのだ。
 都市レベルでは、住宅市場の供給過剰に対応するために不要な建物を撤去した跡地を、「図」ではなくむしろ「地」に注目した都市像として提示している。そして、この「地」を空間的にネットワーク化し、新しく創出されたランドスケープを人々に認識してもらうために、それらを「赤い糸」で繋ぐことにした。空間への理解を促すことで、人々は将来の都市像を認識し、またコミュニティがそのイメージを共有することで、初めて将来への対話が生まれる。
 そのような下地づくりをするうえで、この「赤い糸」は絶妙な効果を生み出すと考えられる。お金はかけないで、大きな効果が期待できる「都市の鍼治療」的なプログラムであると考えられる。

事業主体:

Bauhaus Dessau Foundation (バウハウス・デッサウ基金)

事業主体の分類:

民間

デザイナー、プランナー:

Bauhaus Dessau Foundation

開業年:

2007年

類似事例:

010 ゴー・ゴー・ゴリラス(Go Go Gorillas!)、ノーリッチ(イギリス)
・ヴェネチア・ビエンナーレ(ヴェネチア、イタリア)
・ミュンスター彫刻プロジェクト(ミュンスター、ドイツ)

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国:ドイツ
州・県:ザクセン・アンハルト州
市町村:デッサウ市