【データベース】 都市の鍼治療 No.111~No.115

「都市の鍼治療」データベース

 クリチバのジャイメ・レルネル元市長は、都市が抱える問題を手っ取り早く解決するべき方法論として「都市の鍼治療」を提唱しています。

 多くの課題に直面する都市は、さながら病人のようです。そして、都市の鍼治療とは、その都市の病を根本的に治すことは難しいけれども、効果的に「鍼療法のように治す」ことは可能であるという考え方にもとづいた方法論です。

 本データベースは、このレルネル元市長の「都市の鍼治療」という考えにのっとり、内外の「都市の鍼治療」事例をシリーズで紹介していきます。

鍼アイコン111 ハッピー・リッツィ・ハウス
111 ハッピー・リッツィ・ハウス

ハッピー・リッツィ・ハウスはドイツの中堅都市ブランシュヴァイクの都心部にある漫画のようなイラストが描かれた家の集合体である。アメリカ人のイラストレーターであるジェームス・リッツィが2001年に放置されていた公爵の住居跡地に、人目に付くようなユニークな建物をつくることで、残された古い建物を保全することを意図したプロジェクトである。

鍼アイコン112 みつや交流亭
112 みつや交流亭

そこは昼には子育て支援、子供達のたまり場、夕方には落語会や音楽会、映画界、講演会、勉強会、バザーなどに使われる。そして、清潔なトイレと冷たい水とベンチが提供されていて、いつも賑わっているちょっと不思議な空間である。都市をつくるのは「人」というのはよく指摘されるが、まさに、それが分かりやすく展開したのが「みつや交流亭」であると思われる。

鍼アイコン113 クレーマー橋
113 クレーマー橋

クレーマー橋は、ドイツのチューリンゲン州の州都であるエアフルトにあるランドマークである。それはブライト川に架かる橋で、その両側に木造の建物が肩を寄せ合うように建っている。エアフルトは人口が20万人をちょっと越えるぐらいの都市であるが、世界に誇れるランドマークを二つ持っている。そして、それをしっかりと保全すると同時に、うまく活用している。

鍼アイコン114 ホロコースト記念碑
114 ホロコースト記念碑

正式な名称は「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」。ドイツにとっては暗く忌まわしい過去であり、多くのドイツ人にとっては思い出したくない歴史の恥部でもある。しかし、そのような歴史を直視し、その記憶を継承することを積極的に意思表示することで、初めて周辺諸国と和解することができる。真摯に謝罪をする人に対して、人は寛容となる。そして、そのような記憶装置は、都市というメディア的特性に長けているところほど、その周知効果が高くなる。そして、実は都市も、そのような発進力のあるコンテンツを有することで都市としての魅力を増していくのである。

鍼アイコン115 ミラノ・ガレリア
115 ミラノ・ガレリア

レルネル氏はその著書『都市の鍼治療』で、ミラノ・ガレリア(正式名称はビットリオ・エマヌエーレ2世のガレリア)は「ミラノで最も美しい出会いの場所である」と述べている。それは、ここが単なるショッピング・アーケードだけではなく、ミラノの人々が出会う場所としても重要であるからだ。また、ここは隣接している大聖堂とともにミラノの観光の目玉となっている。

 

取材・構成
服部圭郎 明治学院大学経済学部教授

制作・配信
公益財団法人ハイライフ研究所

■都市の鍼治療 データベース
http://www.hilife.or.jp/cities

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